#STORY#quitan

はじめまして、quitanです。

得意なものを、得意な場所で

VOLUME.5

この夏、アングローバルに誕生した新ブランド「quitan(キタン)」。
本連載ではそのデビューまでの道のりをお届けしています。
今回は【quitanを示す7つのルール】の中から、ものづくりを続けていくために大切な「適材適所」というテーマについて、
デザイナーの宮田紗枝さんにお話を伺いました。

Interview by Juli Yashima
Photography by Yu Inohara (look) / Hiroyuki Matsubara (scene)

前回は「quitan」の大切なテーマのひとつであるエコサイクルや持続可能性について伺いました。今回は「quitan」のものづくりが生まれる場所についてお話を聞かせてください。

宮田 服作りは最初に生地を用意して縫製を行い、製品によってはそのあと染色をします。ですので作る場所というのは「どんな生地を使いたいか」から始まる事が多いです。

たとえば今回、デニムは広島県の福山市で、高密度のしっかりした生地を兵庫県の西脇市で縫ってもらい、空気をたっぷりと含んだ柔らかい生地を作りたくて愛知県の尾州産地を選んだりしました。

産地ごとに得意な織りや手法があるので、私は自分が作りたい生地にはどの産地が良いのか考え、そのつど作り手に相談しながら決めています。

―同じ工場で生産をしているわけではないんですね。

宮田 効率よく服を作るためには、いろいろなアイテムをひとつの工場に頼んでものづくりをするという形もあると思うのですが、「quitan」では、作りたい商品1つ1つに合った最適な場所を探すようにしています。結果、その工場が得意とする技術をお願いすることになるので、みなさんにとっても無理がないのかなと思います。

―デビューコレクションでは、フランスでパステル染めを行った商品あると伺いました。

宮田 そうなんです。パステル染めはフランスで古くから行われていて、植物を使った草木染めという手法の1つです。アブラナ科の植物から抽出できるとても希少な天然染料で、手でジャブジャブと染めるんですが、とても美しい青に染まります。その昔では高貴な色として着用されていたようです。

またこのパステル染めは一度衰退した産業なのですが、クラフトとしてもう一度復刻させてビジネス展開しようという動きがあることを知って、そこに共感をもちました。時代に合った形で、「quitan」もその活動に参加できたら面白いように思い、最初のコレクションで取り入れたいと思いました。

縫製も含めてフランスで作られたそうですね。

宮田 パステル染めをフランスの工場にお願いする際、日本で縫製をしたものをわざわざ送るのは輸送コストも往復で掛かってしまってエコじゃないですよね。フランスにも縫製の技術がありますし、現地で縫われたものを染めていただくほうが空気感も出ます。なのでパステル染めをする商品の生産は、同じ場所で完結するようにしました。

パステル染めを用いたワンピース。2021SS コレクション。LOOKより。

「適材適所」というルールの中にも、以前に伺ったエコシステムやサスティナブルの要素が入っているのですね。

宮田 そうですね。そのときに最善の方法でものづくりをするというのは、誰しもに優しい気がします。それが結果的にサスティナブルにつながりますよね。

そして私が考える「適材適所」というのは、「この技法を昔からやってるからここに頼むべき」という縛りをつくることではないんです。さきほどのパステル染めはフランスで生産しましたが、状況によっては日本で縫製を行うほうがよい場合もあるかもしれませんし、「今まではここでしか作れないと思っていたけど、違うところで作ってみたらどうなるんだろう?」と、まったく新しいことも考えてみたいんです。より効率が上がるかもしれないですし、回数を重ねると気付くこともあるかもしれない。技法を残していくことと、そこに縛られることは別のこと。可能性を開放するような「適材適所」の考え方って、案外広いんじゃないかと思っています。

そうして作られた服の展示会は、今回オンラインでも行われたそうですね。

宮田 はい。今回は通常の展示会と並走して、オンラインによる展示会も実施しました。オンラインは場所を選ばず誰とでも繋がれますので、このような形が実施できたことはとても嬉しく思っています。

一方で、服の1番の魅力は袖を通した時に感じるものだと思うのですが、オンラインでは素材に触れることができません。この状況下で足を運べない方にもどうにか素材に触れていただきたいと思い、LOOKの写真と一緒に、モデルが着用している服の素材を添えた「BOOK」を作り、オンラインで商談をしたお客様にお送りして素材に触れていただきました。

1点1点、手作りしたLOOK BOOK。

LOOKの写真に合わせて、商品の説明やモデルが着用している服の素材が添えられている。

素材は人が持つ多くの感覚に触れるものだと思うので、少しでもその感覚に届いたら嬉しいなという気持ちを込めています。

1点1点、手作業で作ったのであまり多くはないのですが、お客様からは「このブックのおかげで素材の特徴がよくわかりました」というお声をいただくことができ、手をかけるとその分ちゃんと伝わるんだなと、私自身も感じました。

「quitan」のコレクションは商品数にもこだわりがあると伺いました。

宮田 実は「quitan」の商品の型数は、アングローバルが展開しているブランドの中ではとても少ない方なんです。ただ、私自身の目が行き届く範囲のものづくりにしたかったので、あえてその数にしました。

お客さまの手元に届くのはブランド全体ではなく商品1つ1つなので、その1点1点がさまざまな人のワードローブに入り込んでいけるように、全てのアイテムに私の「好き」を詰め込める量になっています。

「quitan」らしい無理のないものづくりですね。

宮田 はい、私自身にとっての最適な形です。これも適材適所の考え方の1つかなと思っています。

つくり手と一緒に長くものづくりを続けていくためにも、これからも大切にしたいこだわりです。

【 quitanを示す7つのルール】

1. As universal as possible - 可能な限りユニバーサルであること

2. As ecological as possible - 可能な限り環境に、地球に、配慮されていること

3. There is always "something" inspired by tradition - 伝統から学ぶ「何か」があること

4. Well-placed production - 適材適所であること

5. Only the fabrics that I loved are chosen/woven - 私の愛した素材だけが使われている/作られていること

6. There is always "a color" for the season - 迎える季節には、いつも大切にしている一つの「色」がある

7. Supporting developments sustainably - 持続可能な支援を

次回は、「quitan」のロゴデザインを担当した「紙事(カミゴト)」の渡邊絢さんもご一緒に、ロゴデザインが作られるまでや「quitan」の世界についてお話を伺います。

  • 宮田・ヴィクトリア・紗枝

    アメリカ・シアトル生まれ。quitanデザイナー。幼少の頃より多国籍な環境で遊牧民のように転々と暮らしの場を変えつつのびのびと育つ。大学を卒業後はファッションの現場でものづくりの経験を積み、2020年にアングローバル入社。2021年春夏よりユニセックスブランド「quitan」を展開する。