冷やし焼き芋|写真家・平野太呂さん
#EAT&DRINK

こばらが空いたら

冷やし焼き芋|写真家・平野太呂さん

VOLUME.2

とっておきのおやつは何ですか?
連載「こばらが空いたら」は、さまざまなフィールドで活躍する方々に、
買い求めやすいおかしをピックアップしていただき、
自分にとっての特別なおやつと、そのおやつにまつわるエピソードを聞いていきます。
ひとくち食べれば満足できたり、ポジティブな感情はもちろん、
ときにはネガティブな思い出などとも繋がっているかもしれない「おやつ」。
連載で語られるエピソードとともに味わってみてください。

Text and Photography by Taro Hirano
Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

「imop(イモップ)」とは仕事を通して出会いました。僕が信頼しているアートディレクターさんからお仕事の依頼を受け、話を聞いてみると「焼き芋を撮りませんか?」という少し変わった依頼でした。なんだか面白そうだとすぐに快諾したのです。

  思い返してみると、僕の一番古い記憶の中に焼き芋があります。住んでいたアパートの前に石焼き芋屋さんが来ると、母が小銭を持たせてくれて姉と買いに行きました。芋をパカっと割った時に、冬の冷たい空気のなかに蒸気が放たれるビジュアルを今でも覚えているんです。たぶん3歳くらいの記憶。最近は石焼き芋屋さんを街で見かけることも少なくなりました。軽トラックの荷台が熱々に燃えてるなんてよく考えると面白いですよね。

  ところがimopは焼き芋の冷凍だったんです。頭の中が?になりましたが、しかし一度口に含んでみると、これがなんともしっとりとしていて、甘味が上品な感じなのです。冷凍することで旨味を閉じ込めて、しかも少し上品になった気がするんです。

 40代後半の私たちはいわゆるベビーブーム世代です。私たちが子どもの頃には、子ども向けの商品が今より溢れていたような気がします。きっと商売として成り立っていたんだと思います。だからいろんなおやつが新発売されていました。なかには身体に悪そうなものもありましたけど。そんなものを食べてきた私たちだから、大人になった今は、罪滅ぼしのように良いものが食べたいんです。良いものとは高級ということではなくて、材料が分かるとか、どうやって自分の手元まで来ているか分かるとかです。imopは宮崎県の串間市にあるアオイファームからやってきます。そうやって生産者の顔がわかって直接届くというのも安心で嬉しいのです。

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  焼き芋史上最高にカッコ良くクールな(冷凍なので)写真にすることを合言葉に撮影は進みました。アオイファームから大量のimopを取り寄せて、何本もオーディションしました。そして見事難関をくぐり抜けた精鋭たちと最高にホットでクールな写真撮影に成功したのです。撮影終了後、取り寄せたimop達は僕ら撮影スタッフが美味しくいただきました。異変が起きたのはその数時間後です。そうです。気持ちの良いほど出るんです。プーっと。どうしてなんでしょう、罪悪感がありません。不思議なもんです。どうしてコレが出ているのか、すごく理由がハッキリしているから納得できるのです。そして翌朝、スルッと快調なんです。これ本当です。

 家の前に石焼き芋屋さんが来なくなってしまったけど、冷凍庫にはimopがある。うっかり常温に戻すことを忘れてしまうと、こばらが空いた時、お預け状態に悶絶するので気をつけなくてはいけません。

  
  • 平野太呂

    1973年生まれ。武蔵野美術大学で現代美術としての写真を学び、卒業後、講談社での撮影アシスタントを経て、フリーランスに。主な写真集は『POOL』(リトルモア)。さらに、自身によるインタビューと写真をまとめた『ボクと先輩』(晶文社)、星野源との共著『ばらばら』(リトルモア)など。広告やカルチャー、ファッション誌でも活躍している。