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RUN RUN RUN

自然を走る | トレイルラン練習 後編

VOLUME.2

太宰治の小説『はしれメロス』では身代わりになってくれた友のために、
映画『フォレスト・ガンプ / 一期一会』では自分自身を解き放つために、主人公たちはひたすらに走りました。
古来、人はなぜ「走る」のでしょうか。
それぞれのゴールに向かって今日も世界中の道という道をランナーが走っています。
この連載ではand wander新宿伊勢丹メンズ館店で店長を務める小山健太郎さんとともに、
走ることに秘められた魅力を考察してみたいと思います。

Photography by Shota Matsumoto
Edit by Soya Oikawa (ANGLOBAL)

フルマラソンでのサブスリー(3時間切り)達成と、トレイルランのレース参加という2つの大きな目標を掲げる小山健太郎さんとともに、「走ること」の魅力を考えてゆく企画「RUN RUN RUN」。前回は、東京八王子市の高尾山を訪れ、朝の稲荷山コースを気持ちよく走ってきました。後編では、トレイルランの装備品に着目しながら、下山のようすをお送りします。

携帯品を収納するためのパックは、トレイルラン仲間の知人に教わったというベストタイプを愛用。走行時に荷物が揺れてストレスにならないよう、身体にしっかりフィットするものを選ぶのがポイントだといいます。補給水を入れるナルゲンボトルはand wanderデザイナー森美穂子さんによる「山」のイラストが描かれたお気に入り。タフで使い勝手が良く、色違いで持っているとか。

また、こばらが空いたときのエネルギー補給にぴったりな「PROTEIN BAR」と、ひとつぶ食べれば気分転換にもなる干し梅も大切です。そして、持っていると何かと便利な手ぬぐいとバンドエイド。休憩や歩行時に身体を冷やさないための長袖のシャツを一枚というのが、この日の装備品でした。

しかし、あらためてこうして並べてみることで反省点も発見できました。

「グローブとテーピング、ホイッスルなどのエマージェンシーグッズをしっかり揃えないと、本格的なトレイルランニングの練習は危険だろうなと思いました」と小山さん。低山での練習とはいえ、山での行動には「もしも」の備えが必要。自分のレベルに応じたリスクマネージメントをすることで、心配をすることなく、アクティビティに集中できます。

さて、身体が冷えてしまわないうちに装備品をパックに戻して下山をはじめます。頂上付近の段差の大きい丸太階段を降り、細いカーブをいくつか過ぎると、やがて緩い斜面に。初冬とはいえ20分も走り続けていると、体がポカポカ温まってきます。運動を止めたときに汗冷えしないよう、ウェアは吸水速乾タイプがよいでしょう。小山さんが着用していたのはand wanderのポリエステルシームレスTシャツ。

「着心地の良さはもちろん、通気性と速乾性があって、気分が上がるカラーリングとレイヤードしやすい着丈の長さが気に入っています。街で普段使いするときもありますが、今ではマラソン大会やトレイルランなど、気合を入れたいときに着ることが多いです」。

この時季の山は、落ち葉も多く、フカフカと枯れ葉が積もった道を気持ち良く走ることができます。変化に富む山の路面で、しっかりとグリップを発揮してくれるシューズは最も重要な装備と言えるでしょう。小山さんが履いていたのはSalomonand wanderによるコラボレーションモデル。

「ロングハイクやスピードハイカーにも対応するSalomonOUT PATH(アウトパス)というモデルは、今日みたいなトレイルランニングはもちろん、友達と登山する時もいつも履いているお気に入りです。岩場や、ぬかるんだ悪路でも滑りにくく、山中の下り坂を走ってもグリップが効きやすい気がします」。

スギやヒノキの影が降り注ぐ稲荷山コースで、野鳥たちの声援を受けながらのランはとても気持ちよさそうでした。膝への負担や転倒の危険が増す下り斜面では、歩幅を狭くして走るのがコツです。

ハイカーの方々とすれ違いそうになったら、走るのは控えてあいさつを交わし、40分ほどで元の登山口に到着。今回は練習ということでゆっくりしたペースで計100分ほどのトレイルランでしたが、山中での小山さんのこんな言葉が印象的でした。「自然の中で、思いっきり身体を動かせて、まるで子供の頃に戻ったかのようですごく楽しいです」。

高尾山の周辺には蕎麦屋がたくさんあります。
練習のたびに新しいお店を訪れて、名物のとろろそばを食べ比べるのも楽しそう。

取材を行ったあとも、しばしば高尾山を訪れては練習を重ねているという小山さん。山を走るトレイルランニングの魅力は、その「子供の頃のように」という言葉に尽きるのかもしれません。

山のなかに身を置いて、木々や動植物たちの世界に自分を溶け込ませていくかのように無心で前に進む。さまざまな路面状況に瞬時に対応していく身体の技巧的な感覚。そういった感覚は僕たちが子供の頃に獲得するとても大切な「遊び」のひとつであり、その原初的な感覚に還るために、人々はトレイルランというスポーツに惹かれるのではないでしょうか。長いあいだ自分の中に眠っていたわんぱく小僧が目を覚ますように。

次回は、ロード編と題して、ランナーたちの聖地ともいわれる丸の内・皇居外苑でのロードランについてお送りします。

  • 小山健太郎

    1986年、長野県生まれ。and wander新宿伊勢丹メンズ館店にて店長を務める傍ら、アングローバル・スポーツ部の部長として活動。フルマラソンでのサブ3達成とトレイルラン・レースへの参加を目指し、自慢の脚力で出勤前に10kmを走る日々。