魂を揺さぶる太古の音
#MUSIC#STYLE

音楽にはじまり。

魂を揺さぶる太古の音

VOLUME.15

「あなたの好きな音楽を教えてください。」
詳しい人も、またそれが人並みな関心だったとしても、
ふと思い起こせば、音楽は人生のさまざまなことと結びついているものだと思います。
音楽と失恋、音楽と洋服、音楽と―。
第15回は、MHL福岡パルコ店でスタッフを務める吉浦文也さん。
心の赴くままにジャンルをまたいで世界中の音楽を聴き漁っていた日々に、
ふと出会ったオーストラリアのオーガニックなバンドについてのお話です。

Illustration by Miso Okada
Interview by Soya Oikawa (Anglobal)
Edit by Runa Anzai (kontakt)

かつて東京・神保町にあった「Janis(ジャニス)」というレンタルCDショップをよく利用していました。店内には8万枚ものCDが細かくジャンルごとに並べられていて、普通のショップには無いような輸入盤や希少盤も借りることができるのが大きな魅力でした。

その頃の僕はとにかくいろいろな音楽に触れたくて、詳しい友達に聞いたり、専門雑誌を読んで気になったバンドやアーティストのCDJanisで探し、まとめて借りてくるということをよくしていました。当時は横浜に住んでいたということもあり多い時には一度に50枚以上借りていたと思います(笑)。そんな広大な音楽の海で遊んでいたころに出会ったのが「Wild Marmalade(ワイルド・マーマレード)」というオーストラリアのジャム・バンドでした。

WildMarmalade.jpg

Wild Marmaladeは「Didgeridoo(ディジュリドゥ)」というユーカリの木から作られた楽器にドラムとパーカッションというシンプルな編成なのですが、初めて聴いた時はその太い音圧とタイトなリズムのグルーヴ感に衝撃を受けたのを覚えています。オーストラリアの先住民が使っていたとされるDidgeridooは約1000年以上も前に誕生した世界最古の管楽器とも言われていて、筒状になった端から吹く息の強弱だけで音階をつけていき、息継ぎの間も音を出し続ける「循環呼吸」という技の達人ともなると1時間以上もずっと吹き続けられるそうです。

https://youtu.be/31z_CP5nA2c

僕はそのオーガニックで力強いサウンドにすっかり魅了されてしまい、彼らの活動やその周辺の音楽を調べてはJanisで探して借りてくるということを繰り返していました。そしてある日、ついにWild Marmaladeの来日決定の知らせを聞きつけます。すぐに横浜公演のチケットを確保して迎えた当日、ようやく直接聴くことができた彼らの繰り出す生の音は、それまでに体験したことのない驚愕的なものでした。

フロアに響き渡る圧倒的な音圧が唸るようなグルーヴ感となって身体を突き抜けていくのです。はじめ僕はゆっくり観賞しようと思って端っこの方に居たのですが、気が付いたらフロアの中央で知らない人と笑顔でハグしあっていました(笑)。1時間半の演奏はあっという間に終わり、興奮が収まらない僕は帰りのコンビニエンスストアに立ち寄って次の公演のチケットを手配し、結局その時の来日ツアーの都心近郊のライブは全て行きました。

僕にとっては青春そのものだったといえるくらい、たくさんのライブや音楽イベントを体験してきましたが、あの時のWild Marmaladeのライブツアーは群を抜いて最高でした。Janisの膨大なレンタルCDの中から選んでいた1枚が、のちにこれほど大きな感動体験になるなんて。音楽との出会いって本当におもしろいなと思います。

  
  • 吉浦文也

    神奈川県出身、福岡在住。アングローバル入社と同時に福岡県に移住し、挽きたてのコーヒーを飲みながら読書をしたり、季節に合わせた花々を育てたりとスローな毎日を送る。

    休みの日には夕日が沈む時間帯に人気の少ない海岸沿いを、音楽を聴きながらドライブするのが最近の楽しみ。