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ロードを走る | 皇居ラン

VOLUME.3

太宰治の小説『はしれメロス』では身代わりになってくれた友のために、
映画『フォレスト・ガンプ / 一期一会』では自分自身を解き放つために、主人公たちはひたすらに走りました。
古来、人はなぜ「走る」のでしょうか。
それぞれのゴールに向かって今日も世界中の道という道をランナーが走っています。
この連載ではand wander新宿伊勢丹メンズ館店で店長を務める小山健太郎さんとともに、
走ることに秘められた魅力を考察してみたいと思います。

Photography by Shota Matsumoto
Edit by Soya Oikawa (ANGLOBAL)

フルマラソンを走るランナーのたった3%しか達成できないといわれる3時間切り。小山さんはいま、そのサブ3(サブスリー)という大きな目標にむかって挑戦を続けています。昨年11月に参加したマラソン大会では、自己ベストの3時間629秒を記録し、悲願達成まであと6分半。その短いようで長い数分間を削るため練習を重ねる毎日です。

42.195キロを完走するだけでも大変なことなのに、いったいなにが小山さんをそこまで駆り立てるのでしょう。前回までのトレイルランから一転、今回はロード編と題し、マラソンランナーたちに人気の東京丸の内にある皇居外苑周回コースを舞台に、その秘密に迫ってみたいと思います。

魅力満載の名コース

東京駅をはじめ、日比谷や桜田門など東京メトロ各線からのアクセスも良く、反時計回りでどこからでも走り始めることができる皇居外周は、一週が約5キロの周回コース。途中に信号も道路の横断もなく、外苑の美しい景観を眺めながら自分のペースで淡々とランニングに集中できるのも人気の理由です。

そんな皇居外周を走るランナーは、1964年の東京オリンピック以降にだんだんと現れ始め、2007年の第1回東京マラソンをきっかけにランニングをライフスタイルに取り入れる人が増加。現在、コース周辺にはロッカーやシャワーを備えシューズのレンタルなどさまざまにサポートしてくれるランニングステーションも充実し、ますます手軽に楽しめる環境が整えられています。

小山さんは皇居ランの魅力についてこう語ります。

「都会の真ん中を思い切り走れる爽快感と、丸の内のオフィスビル群の夜景が最高です。ランニングに対してストイックな人達が集まってくる場所でもあるので、自分も影響されて自然と脚が速く動き出す気がします。」

毎日の生活の延長線上にあるランニングは、ちょっとした時間があれば走り出すことができ、適度な運動が日常の習慣になることで健康にも良い影響が期待できる。小山さんは出勤前の時間や、仕事の帰りに日常の一部としてのロードランと、休日を利用して山を走るトレイルランとをバランスよく楽しんでいるように思えました。

走ることをより楽しくしてくれる相棒たち

この日小山さんが着用していたのは地元の長野県で開催された軽井沢ハーフマラソンに初めて参加した時の思い出のTシャツ。シューズはNIKEZOOMFLY3を。前傾したソールで反発性が高く、小山さんの得意なフォアフット走法(つま先から着地)に向いているモデルなのだとか。

「始めて履いた時の“勝手に前に進む”感覚には本当に驚きました。このシューズでかなりタイムが伸びたはずです」。

時計は全天候対応でトレイルにもロードにも両方使えて便利なG-SHOCKDW-5750Eを愛用中だが、次は走行距離や速度、心拍数などさまざまなデータを計測できる多機能なランニングウォッチを狙っている。

走る時に考えていること

テレビでマラソン観戦をしているときや、街でランニングしている人の姿を見るとふと思うことがある。「走っている時は何を考えているんだろう?」と。小山さんからはこんな答えが返ってきました。

「何も考えずに走ることもあるのですが、サブ3に挑んでいる今はとにかくフォームのことを考えていることが多いです。スピードがあがったときに、上半身が後ろに反らないようにしたり、お腹とお尻に力を入れて走るとか、足の着地をつま先から着地するフォアフット気味にするなど、1回の練習でなにかひとつフォーム改善のテーマをもって走るようにしています。それだけでだいぶ楽に進める気がします」。

「フルマラソン」の目的

健康やダイエット、ストレス発散や気分転換など走る目的は人によってさまざま。走る場所や頻度や距離やペースはまったくの自由なのに、なぜ小山さんは「フルマラソンでのサブ3」という目標に向かうのでしょう。

42.195キロという長い距離を走り切ることで得られる大きな達成感が忘れられないんです。走る前と後とでは、まるで自分が別人になったような気がします。もちろん走り切っただけでも感動は大きいのですが、少しずつタイムが縮まってくると成長が実感できてまた嬉しいんです。今はサブ3を達成した時にどんな世界が広がるのだろうとワクワクしています」。

野山を走るトレイルランが原初的な遊びの感覚を呼び覚ますスポーツだとしたら、フルマラソンは自己実現という大きな達成感を得るための挑戦なのかもしれません。 3キロから10キロへ、ハーフからフルへ、そして完走からサブスリーへとひとつずつ自分の立てた目標を実現し続ける小山さんは、この日の練習を終えて満足そうに語ってくれました。

ランの後には

練習後は東京ミッドタウン日比谷の地下にあるランステーション「Raffine Running Style Neo」店へ。預けていた荷物を受け取り着替えを済ませます。もちろんシャワーを浴びたりウェアやシューズをレンタルすることも可能。施設がとてもきれいでアクセスも良く、小山さんも良く利用しているのだそう。

この日の最後は仲良しの同僚に会いにand wander丸の内店へ。小山さんはこうした他愛のないコミュニケーションも大切なのだといいます。「このウェアはトレイルランで着用しても全然蒸れなくてとても快適だったよ」などと情報共有していました。仕事の中に遊びを、遊びの中に仕事を。というのが小山流のようです。

遥かなる目標

2021年129日現在の男子フルマラソンの日本記録は大迫傑選手による2時間529秒。サブ3のはるか先を走る先頭集団はまさに超人的な世界ですが、そんな超人たちもひとつずつ自分を超えてきたはず。朝目が覚めたら30分速く走れるようになっていたなんてことはありません。一歩ずつ自分を超えてゆく。そんな成長と達成感の積み重ねがマラソンを走る魅力なのだと思いました。小山さんの挑戦はまだまだ続きます。

  • 小山健太郎

    1986年、長野県生まれ。and wander新宿伊勢丹メンズ館店にて店長を務める傍ら、アングローバル・スポーツ部の部長として活動。フルマラソンでのサブ3達成とトレイルラン・レースへの参加を目指し、自慢の脚力で出勤前に10kmを走る日々。