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ウラカタログ

100年を旅するデザイナーと、木の葉に包む「こころざし」

VOLUME.12

普段目にすることのない側面にフォーカスして日々のなかで考えるきっかけを探していく「ウラカタログ」。
今回はセレクトショップTHE LIBRARY表参道店で店長をつとめる雪田真弓さんが、
同自由が丘店で行われた新ブランド「quitan(キタン)」のローンチの様子をご紹介します。

Text by Mayumi Yukita (TSI)
Photography by Soya Oikawa (TSI)

しとしとと、窓のそとに聴こえる雨の音で目が覚めた。

今日は待ちにまったインタビューのお仕事の日。いつものように身支度を整え、トーストを焼いて、カフェオレを飲む。この日のために新調した白いリネンのワンピースは、雨でぬれてしまわぬようバッグに入れて、お店についてから着替えよう。

お話を聞くのは、この春に誕生したブランド「quitan(キタン)」デザイナーの宮田紗枝さん。ちゃんとお会いするのは初めてだけど、さほど緊張はなく、むしろあいにくの雨とは裏腹に、あたらしい出会いに心が躍るような朝だった。

お店に到着すると、quitanの洋服が入り口の近くのコーナーに集められていて、旅が始まる期待感のような、そんな空気が漂っていた。

さて、いよいよ取材の始まりです。

どんなお話が聞けるのかな。

雪田 この度は、ローンチおめでとうございます。記念すべきファースト・シーズンをTHE LIBRARYで一緒に携わることができて嬉しいです。

宮田 ありがとうございます。

雪田 まずはあらためて、quitanがどんなブランドなのか教えていただけますか。

宮田 世界にはたくさんの国や文化や民族がありますよね。山岳地帯や海辺、また気候によってもそれぞれ違った暮らし方があると思うのですが、わたしはお互いに異なることを受け入れ合う中から、新しいものが生まれるということに魅力を感じています。quitanではその“文化の交歓”を合言葉に、世界中の民族とその暮らしの工夫から、ものづくりを考えてみたいと思っています。

雪田 たしかにquitanの服からは世界のいろんな文化や民族の気配を感じます。デザインのルーツやディテールに秘められた物語などを知ると、まるで時代を超えて世界中を旅行している気分です。

それに効率重視ではなく、土地土地の文化や暮らしを重んじながら、適材適所で作られているということにも、とても共感しました。宮田さんは、quitanの商品がこうしてTHE LIBRARYに並んでみてどういった印象をお持ちですか。

宮田 THE LIBRARYは、取り扱うブランド同士がお互いに引き立つように丁寧にセレクトされている印象でした。上質で、ほどよく今の気分も漂っていて。きっとお客様にとっても信頼が持てるショップなんだろうな、って思っていました。今回はそんな空間にどう仲間入りできるかなって楽しみにしていたのですが、うまく溶け込んでくれてよかったです。

雪田 わたしも自分たちのお店に合うだろうなって思っていたので、今日が待ち遠しかったです。まさに宮田さんが『はじめまして、quitanです。』の連載で話していた、人種のるつぼを表す、“サラダボウル”のように、THE LIBRARYで取り扱っているいろんなブランドやアイテムと混ぜ合わせてコーディネートのイメージを楽しんでいました。

宮田 人種や民族の多様性を“サラダボウル”に例えた人はすごいですよね。quitanもコーディネートに決まりはないので、本当に自由に取り入れて、みなさんそれぞれオリジナルのサラダをつくってみてほしいと思っています。

雪田 一方で、こうしてコレクションを見渡してみると、“ナチュラル”や“オーガニック”といったキーワードも思い浮かぶのですが、実際にはどのくらい意識されているのでしょうか。

宮田 もちろん環境に配慮するということは必要だと考えていますが、それだけではなく、全体のバランスも大切にしています。私自身はウーバーイーツも利用しますし、ハンバーガーも食べますよ。

雪田 そうなんですね! じつは宮田さんのインスタグラム(@smiyata)を拝見していると、いい意味で本当に変な人で可愛らしいな、と。誉め言葉ですよ。

宮田  はずかしい(笑)。でもとても嬉しいです!

雪田 ところで、わたしが今日着ているこのリネンのワンピース。本当に着心地が良くてデザインもお気に入りです。

宮田 そのワンピースは約100年前のエジプトで撮られた写真に写っていた、ひとりの少年が着ていたワンピースに着想を得てデザインしています。可愛いですよね。リネンの生地はフランスのバスク地方のほど近くにあるカットソーメーカーさんに作ってもらっているんですよ。

雪田 100年前のエジプトって聞くだけでワクワクしてくるなぁ。お気に入りのアクセサリーや靴と合わせて、この夏、大活躍の予感です。

宮田 その彼は外国人向けにガイドをしていたのですが、暑く乾燥した天候のもとを歩き回るので、袖丈や着丈の長い、涼しい服装で働いていたんでしょうね。

雪田 それがこんな素敵なワンピースになるなんて。彼にぜひ「ありがとう」と言いたい気持ちです。

宮田 少年もまさか自分が着ていた服が・・・と驚くと思います(笑)。

雪田 今日は、THE LIBRARY自由が丘店に終日在店してくださいましたが、お客様の反響はどうでしたか。

宮田 たまたま別の目的で来店されていた、ひと組のご夫妻とお話させていただいたのが印象的でした。フランスや日本でつくる生地のことや、quitanのルーツとなる文化や民族への視点のことを一生懸命に聞いてくださって。THE LIBRARYにいらっしゃる方は、ご自身が身につける衣服の文脈を、とても大切にしているのだなあと感じました。

雪田 そうですね。普段のお客さまとの会話でも、素材や作りの背景について、とても深いところまで掘り下げたお話になることがあります。しばしば私たちの方が教えていただくこともあり、刺激的でとても楽しい会話です。シンプルですが、「いい服ですね」って言葉をもらえると、とても嬉しいですよね。

宮田 本当にそう思います。

雪田 そういえば今回、包装にもquitanらしい志向があると伺いました。

宮田 そうなんです。「志は木の葉に包む」ということわざがあるんですけど、真心がこもっているならば、贈るものは木の葉に包むようなわずかなものでもいい。という意味でして、quitanのつつみは紐一本にまで、その志を込めて一緒に包みたい。という気持ちを込めているんです。ずっと続けられるように、古紙回収に出せるリサイクル紙を使って、包み方の工程も本当にシンプルにしています。

雪田 飾らないリサイクル紙の素朴さと紐の相性がとても合っていますね。志は木の葉に包むー素敵な言葉です。再利用できるリサイクル紙に甘えて失敗し過ぎないように、紐一本まで心を込めてお包みしたいと思います。

宮田 ありがとうございます。

雪田 それから下げ札は、本を読むときの「しおり」になると知って、さっそく使っています。プライスシールを剥がすとなんとフランス語の“oui”の文字が隠れていました。英語で“yes”、日本語で“はい”。同じようでちょっとずつ違う言葉。こんなところにも遊びがあって、とてもおもしろいなと思いました。みなさんもぜひ見つけてみてください。

今日は長い時間、ありがとうございました。まだ話足りないくらい楽しかったです。

宮田 こちらこそありがとうございました。状況が落ち着いたら、続きはおいしい韓国料理を食べながらにしましょう。ソルロンタンがいいですね。

雪田 楽しみにしています!

  • quitan

    読み方は「キタン」。アメリカ・シアトル生まれの宮田・ヴィクトリア・紗枝さんによる2021年デビューのブランド。世界各地を巡り育った体験をもとに、異なる生活様式から生まれる文化の交流、暮らしの工夫、伝統の継承などから影響を受けたものづくりを行う。

  • THE LIBRARY

    純粋なファッションの楽しさや好奇心の感触がある場所として、グローバルな視点から衣服、ライフスタイルグッズ、書籍などが並ぶセレクトショップ。全国に表参道店、自由が丘店、神戸バル店、京都バル店、福岡天神店を展開。

  • 雪田真弓

    近所のキツネはだいたい友達。という北海道の大自然で育つ。2013年アングローバル(現株式会社TSI)入社。THE LIBRARY表参道店長。セレクトアイテムたちの新しい化学反応を提供すべく、日々楽しく奮闘中。愛猫家。