僕が憧れる唯一の人
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ウラカタログ

僕が憧れる唯一の人

VOLUME.13

普段目にすることのない側面にフォーカスして、日々のなかで考えるきっかけを探していく「ウラカタログ」。
今回は、Dice&Diceで店長をつとめる藤雄紀さんが、
ニューヨークを舞台に活躍する気鋭の日本人デザイナー大丸隆平さんとそのブランド「OVERCOAT」についてをご紹介。
衝撃的な「違和感」がやがて確信的な「憧れ」になって行く様子を語ってくれました。

Photography by Dice&Dice
Text by To Yuki (TSI)
Edit by Soya Oikawa (TSI)

Dice&Diceで働き始めてからおよそ10年、僕がこれまで沢山の服と出会ってきた中で、最も衝撃を受けたブランドが「OVERCOAT」だ。

デザイナーの大丸隆平さんは福岡県の出身。文化服装学園を卒業後、国内の某メゾンで若くして中心的パタンナーとして活躍。その後、単身渡米し、2008年にニューヨークのマンハッタンにデザイン企画会社「oomaru seisakusho 2」を設立する。程なくして日本で培われた確かな技術力が認められ、様々なブランドから仕事が集まるようになり、現在では「Alexander Wang」や「Thom Browne」など名だたるブランドのパターン製作を手掛けている。OVERCOATはそんな大丸さんが2015年にスタートさせた、自身のブランドなのだ。

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僕がつとめる「Dice&Dice」 に初めてOVERCOATが入荷してきたときのことを、今でもはっきりと覚えている。冒頭に書いたような事前情報から、大きな期待を持っていた僕は、商品が到着するなり急いで荷をほどき、その中から一着のコートを選んで、鏡の前で袖を通した。

その時に感じたのは “強烈な違和感” だった。

普段、着慣れている服の着用感とは異なり、いつもなら窮屈に感じるところに「空間」ができていたり、反対に、いつもなら生地が沿わない開放的な部分に、なぜか生地が沿ってくる。普段は緊張を感じていた箇所が程よく緩み、逆に緩んでいたところは正されるような、不思議な感覚だ。どことなく凛とさせられるのだけれど、まったく辛くない。そんな感覚は生まれて初めてだった。

結果的にそれは“着心地が良い”ということになるのだが、それだとありきたり過ぎて言葉が足らず、むしろ反対に「普段の洋服からは感じたことのない着心地の良さ」という逆説的な意味で 「違和感」と言ってしまいたい程だ。

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Wearing New York」をコンセプトに掲げるOVERCOATの服は、性別や体型に関係なく着られるようにデザインされている。例えばそれは着る人によって可変するショルダーポイント(肩位置)や、自由に袖を折り返して着るような設計だったり。もともと不規則なカーブで形作られている僕たちの身体を心地よく包み込む大丸さんのパターンの包容力は、どんな人にも寄り添い楽しませることができる「優しい」服であり、日常にあるさまざまな「差異」を、服の持つ力で越えようとする「尖った」服でもある。

僕は、こんなにも社会にインパクトを与える服なんて、世界中どこを探しても無いと思う。だから大丸さんが、アメリカのカマラ・ハリス副大統領のスーツを手掛けていたという知らせを聞いても、それは本当に凄いことなのだが、妙に納得してしまうのだ。

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先日、ニューヨークと福岡とを結んでオンライン座談会が開かれた(*)。その時に語ってくれた大丸さんの半生は、ヒーローのよくある逸話でもなければ、成り上がりの派手なサクセスストーリーでもない。言ってしまえば、社会の中心から逸れた者が、もとの中心に戻ろうとするのではなく、逸れたままの場所で自分の力で輝いているといった印象だった。

そんな大丸さんの素朴な人間性と、OVERCOATの服に心を奪われ、

「いつか大丸さんのように輝いてみたい」

と、僕にしてはめずらしく憧れを抱いてしまっているのだ。

Dice&DiceOVERCOATと出逢う」という書き起こし記事にてお読みいただけます。

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INFORMATION

4/23~5/3の間、Dice&Diceでは「OVERCOAT」のポップアップストアを開催します。初日から3日間はデザイナーである大丸さんも在店する予定です。ぜひお立ち寄りください。

■OVERCOAT POP UP STORES FUKUOKA AT DICE&DICE
開催日:4/23[]- 5/2[]
火曜定休
デザイナー在店日:4/23~4/25
時間:13:00 ~ 18:00
場所:DICE&DICE
住所:福岡市中央区今泉 2-1-43 DXD bldg.

■トークイベント : 4/24[] 18:00 ~ 19:00
大丸隆平 (OVERCOAT) 後藤麻与 (T.READ) 吉田雄一 (Dice&Dice Director)

イベント詳細はこちら

  
  • OVERCOAT

    NewYorkを拠点とするパターンメーカー「oomaru seisakusho 2」を率いる大丸隆平により、2015AWシーズンにスタート。「Wearing New York」をコンセプトとし、技巧的なパターンカッティングによるサイズ、ジェンダー、エイジを問わないボーダレスなデザインを特徴としている。

  • 藤雄紀

    22歳でダイスアンドダイスに入社。個性的な先輩たちに揉まれて20代を過ごし、現在は頼れる店長としてスタッフから慕われる存在に。趣味はサーフィンと読書で、友達と文芸同人誌を自費出版し、福岡の文学系イベントで販売も行う。また最近キャンプを始め、多方面に手を伸ばしながら才能花咲くフィールドを模索している。