スタイリスト井伊百合子さんが選ぶ、 「いつも」に寄り添う春の白。
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スタイリスト井伊百合子さんが選ぶ、 「いつも」に寄り添う春の白。

春は、もう何度目だろう?
桜の花が散って、街路樹は緑を輝かせる。
この季節がくると、夏に向けて衣替えをして気持ちも新しくしたくなる。
でもどこかで、季節がめぐっても変わらない、
ニュートラルなものを求めるのも、春なのかもしれない。
気持ちをリセットしてくれるような白のウェアの紹介をはじめ、
記事の後半のインタビューでは、白のケア方法や、
日常に寄り添う白のプロダクトについて、
スタイリストの井伊百合子さんに聞きました。

Photography by Ayumu Yoshida
Styling by Yuriko E
Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

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YLÈVEのTシャツ ¥16,500 (イレーヴ|03-5467-7875) / オンラインストア

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MHL.のシューズ¥15,400 (エムエイチエル|03-5467-7874) / オンラインストア

ウタマロ石けん ¥176(東邦|06-6754-3181

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上から順に、SUNSPELのブラレット ¥6,600 / オンラインストア

SUNSPEL のフレンチニッカー ¥5,500

(ともにサンスペル 表参道店|03-3406-7377

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STUDIO PREPAのブローグラス・ウォータージャグ ¥13,200

(マーガレット・ハウエル|03-5467-7864

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MARGARET HOWELL HOUSEHOLD GOODSのパジャマシャツ ¥30,800

MARGARET HOWELL HOUSEHOLD GOODSのパジャマトラウザーズ ¥28,600

(ともにマーガレット・ハウエル|03-5467-7864

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Craneのレターセット ¥4,290 (銀座 伊東屋 本店|03-3561-8311

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貝がらや珊瑚、石や偽卵など|スタイリスト私物

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ANGLEPOISEのタイプ75 ミニ ¥33,000

(マーガレット・ハウエル|03-5467-7864) / オンラインストア

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左から順に、ベンド・カリフォルニア・シャルドネ ¥1,100/アモロ・ブランコ ¥2,750/セ・ビアン・コムサ ブラン ¥1,595 (ともにダイブトゥワイン 神宮前|03-6319-1915

DENBYのサラダプレート¥2,200/テーブルフォーク¥880

(マーガレット・ハウエル|03-5467-7864

*価格はすべて税込です。

「オンラインストア」の表記のあるものはウェブサイトからもご購入いただけます。

ここからは、白についてお聞きしたいと思います。シンプルな白のTシャツは定番的なものですが、自分にぴったりのものがこの時期に見つけられたら嬉しいです。井伊さんの、白いTシャツのチェックポイントを聞かせてください。

シルエット、生地の厚みや手ざわり、ステッチのあしらい。それらのバランスです。

〈イレーブ〉のTシャツはいかがでしたか?

ゆったりとしたシルエットで透けない肉厚な生地。でも、ごわつきはなく、しなやかなのでいわゆるヘビーウェイトのTシャツなどとはまた違い女性が着やすいだろうと思いました。

白のTシャツをエレガントに着こなしたいとき、アクセサリーをひとつ選ぶとしたら?

パールのピアスでしょうか。

この春に、白と組み合わせたい色は?

マンダリンオレンジ。

白の服や小物のお手入れのポイントを聞かせてください。

お湯で洗うこと。なるべく置きっぱなしにしないようにしてその日のうちに、白いものだけで洗うこと。洗濯機でも手洗いでも同じです。

漂白剤は使いますか?

部分的に使います。どさっと洗濯機に入れるような使い方はしないので、真っ白だったものが色褪せるようにくすんでゆくようなことはあります。ケミカルなものを日常のなかでたくさん使うのは避けたいので、こうした変化はある程度受け入れています。別の色に染めるという方法もありますし。

食事中に「あっ」とか、子どもが泥んこになって……というのは、白い服あるあるですよね。

気をつけていても食べることに夢中になると、うっかり食べこぼしをしてしまいますし、夏場は、汗や日焼け止めで襟元が汚れてしまったりもしますよね。

となると、白の日常使いは大変?

いえ、私は逆だと思っています。汚れを落としやすいのが白の服なんです。がしがし洗えて、ポイントで漂白できる。染めてある服から、生地を退色させずにシミだけを抜くのはとても繊細な技術が必要で、クリーニング屋さんにとっても難しいと聞いたことがあります。

汚れてもオフしやすいのが白だと。

そうです。だから、バスタオルやベッドシーツなどの寝具、肌にふれて繰り返し使うものは、ほとんど白で揃えています。私にとっては気持ちをリセットしてくれる色でもあります。

「まっさらな白」の気持ちよさがある一方で、くすんでいたり黄みがかったり、日常のなかの白は経年変化をしていくとも思います。そのことについてはどう考えていますか?

着物の世界に触れるうちに「白汚し」という色があることを知りました。白に限りなく近いグレーといったところでしょうか。古くから日本では真っ白は穢れのない無垢な色とされていて、喪服や花嫁衣装の白無垢、神事を行う際の装束としても使われてきました。対して「白汚し」は日常に着る色です。はじめて私がこの言葉を知ったとき、これほど美しい色を「汚し」と表現することに感動しました。日本の色の考え方には、ぴかぴかで無垢で明るい白だけをよしとするのではない価値観があったんだなあと思いました。

生活のなかでは、どうしようもないほどの汚れや、白に限らず、愛用しているものが修復できないほど壊れてしまうこともあると思います。スタイリストとして、ものを選び、提案し、さまざまなアプローチで作り手と使う人の間にいる井伊さんは、そうした日常のなかで起きてしまう「愛用品との別れ」にどう折り合いをつけていますか?

アシスタント時代に出会ったアンティークショップの店主の方から聞いた言葉が、今でも自分のなかに残っています。稀少なグラスなどを自宅でも使っているという店主に「私は割れてしまうのが怖くて、家で使えそうにありません」と正直に言ったことがありました。でも彼は「いやあ、でも、割れちゃうときは割れちゃうものだよ」とあっけらかんとしていたんです。「妻はいくつも割っています」と言うので、落ち込みませんか、怒ってしまいませんか、と聞いたのですが「怒るなんてとんでもない」と。ものは壊れるし、あるとき割れてしまったらそれは運命だとおっしゃるんですね。

アンティークは、値段としても高価だったり、現行品ではもう作られていなかったりするものですよね……。

そうですよね。でも、割るのが怖くて使えない、というほうが道具にとっては望まれていない状況なんだと聞いたとき、すっと心に落ちたというか。たとえばグラスは、持ち主の日常のなかで飲みものが注がれて完成されるプロダクトです。キャンドルの火でグラスが照らされる時、その中の液体を通してテーブルに落ちる影の様子であるとか、そうした状況を含めて考え、作られたものなんだと教わったんですね。日常のなかにあるものはときに壊れるし、割れるし、汚れる。もちろんだからといって雑に扱うことはしないけれど、それは避けて通れないと思うんです。

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〈サンスペル〉のアンダーウェアは、かたちが特徴的ですね。

からだをホールドしないつくりだと思いますね。まとっていてリラックスできる下着だから、ルームウェアとしてつかうのもいいと思いました。

カラフルな花で部屋にアクセントをつくるのも楽しいと思いますが、白の花は、すっきりとした、凛とした気持ちになれそうです。井伊さんは、自宅にどんな花を活けることが多いですか?

和の花が好きです。活ける器は必ずしも「花を活けるためにつくられた器」でなくてもいいと思っています。陶器の一輪挿しもいいけれど、ガラスの水差しにばさっと活けるくらいが私の好きなバランスです。

では、白いパジャマから思い浮かぶ生活のシーンは?

もう、着替えたらベッドに直行ですよ。お風呂からあがって、だらだらしないですぐに寝る(笑)。着古したTシャツを部屋着にすることもありますが、セットアップのパジャマも持っています。上下揃った白のパジャマを着るとスッと「私は、今から、眠らせていただきます」という気持ちになりますね。

手紙はよく書きますか?

ときどき書きます。お礼の手紙や、友だちにも。

〈クレイン〉のレターセットから受ける印象をひとことで言うなら?

自由。

その理由は?

この便箋は無地です。だからこう書かねばならない、という決まった使い方がない。縦でも横でも書けるし、文字の大きさや言葉の数も自由。相手や形式を選びません。ひとことだけ書くのでもいいし、絵を描いたりしてもいい。おおらかな便箋だと思います。

今回、企画にあわせて、井伊さんが個人的に集めているという白の小さきものたちを撮影しました。

こうして日の目を見るとは思っていませんでしたね。

いつ頃から集めていたんですか?

小さいときから、出かけた先で自然のものを拾っていたと思います。

拾い、あつめることには、どんな面白さがあるのですか?

浜辺に貝殻が落ちているのは、ある意味、とても普通のことじゃないですか。でも、持ち帰って別の空間で見てみると、その見え方が変わる。かたちそのものや色が際立ってきて、「もの」として見る目線で見られるというか……。私は、そうした見え方の変化に興味があったり面白さを感じていると思います。集まったそれらから「自分とはなにか」が見えたりもして、私はこういうものが好きなんだ、という発見もあります。ひとつとして同じものはない自然の形象に琴線がふれたら、それを取っておきたいと思う気持ちもあります。

他に、井伊さんにとっての白に影響をあたえたものはありますか?

デンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの画集がそうかもしれません。絵のなかにある白が、とても印象的で。落ち着いた灰色がかったトーンで描かれた画家の日常。そこにあるドアや窓枠、カーテン、登場する女性たちのエプロンやドレスの襟などが白く際立って見えます。ひとことに「白」と言ってもさまざまあり、また、見慣れたように思われる日常にこそ奥行きがあるのを再発見できる絵画だと思います。

白ワインはお好きなんですか。

はい、とても。

赤ワインは?

日々飲むのは白ですね。寒い季節になると赤が飲みたくなります。

好みの味わいは?

個性的な白が好きです。夕方くらいになると、いつも白ワインのことを考えています。

  • 井伊百合子

    スタイリスト。ファッションブランドのルックブックや、雑誌でのスタイリングをはじめ、着物ブランド〈THE YARD〉ではアドバイザーを務める。児童擁護施設を巣立ったかたのアフターケアを支援するプラットフォーム「+IPPO PROJECT」で2021年夏頃第二弾のバザーを開催予定。