吉田雄一さん(Dice&Dice ディレクター) 音楽にはじまり。
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音楽にはじまり。

吉田雄一さん(Dice&Dice ディレクター)

VOLUME.2

「あなたの好きな音楽を教えてください」。
詳しい人も、またそれが人並みの関心だったとしても、
ふと思い起こせば、音楽は人生のさまざまなことと結びついているものだと思います。
音楽と失恋。音楽と洋服。音楽と―。
第2回は、福岡で30年の歴史を持つセレクトショップDice&Diceで名物ディレクターとして活躍する吉田雄一さん。

Interview by Soya Oikawa (ANGLOBAL)
Photographs by Shota Kono, Dice&Dice (shop)

―今日は音楽にまつわる愛用品をお持ちいただきましたね。

吉田 あ、はい。音楽はBOSEのノイズキャンセリングイヤフォンで聴いています。これで2代目かな。出張で飛行機に乗ることが多いので重宝しているんです。

―普段はどんな音楽を聴くことが多いですか?

吉田 音楽はMixcloudを使って聴くことが多いので色々ですが、古い音楽が多いですね。

―聴き方としては?

吉田 仕事中が多いです。Mixcloudで好きなジャンルを選んでかけたりとか、フレンドになっている人が聴いているものが表示されるので、気になるジャケットのものを視聴してみたり。Brooklyn RadioのOonops Dropsがお気に入りです。あと、一人で仕事中に聴くものだと、Brian Enoが作ったBloomというアプリを使っています。無作為に画面をタップすると音の連なりがリピートされて音楽になる。本気で集中したいとき、これを環境音楽的に聴きます。ノイズキャンセリングとの相性も良くて、すごく気持ちいいんですよ(笑)。

―おぉ。良いですね。

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出張で海外に行くことが多いとのことですが、音楽にまつわる印象的な経験はありますか?

吉田 うーん、ずっと昔、NYでストリートウェアのショップに入ったら、ヒップホップの曲の合間にビートルズやジミヘンが流れていて。オーバーサイズな着こなしのいわゆるストリートっぽい店員さんとブラックスキニーにバンドTeeみたいな店員さんが混在しているその意外性にグッときました。そのジャンルレスな感じは、僕がディレクターをしているDice&Diceでは今でも心がけています。

そうですか。吉田さんは長い間ファッションに携わってきたと思います。その間、音楽はどういう存在だったんでしょう。

吉田 基本的には洋服屋なので、ファッションのこと、服のことをずっと考えてきました。ただ、音楽に詳しい人たちやプロのミュージシャン、DJの方と一緒に仕事をする機会もあって、最近だとMONGOL800のキヨサクさんや、バスキアと一緒にバンドを組んでいたフォトグラファーのニックさん(ニコラス・テイラー)ですね。服と音楽を繋げようと意識してやってきたわけじゃないですが、気づくと繋がっていることが沢山あります。

―具体的なお名前が出ましたが、彼らから受けた影響についてお聞きしたいです。

吉田 物事の進め方は〈ALOHA BLOSSOM / アロハブロッサム〉のキヨサクさん、小野崎さんに色々と影響を受けましたね。キヨサクさんはMONGOL800ボーカル、小野崎さんはシューズブランド〈TOMO&CO〉のデザイナーとしても活躍しています。お二人はファッション業界のルールに染まっていません。僕たちって、自由にやっているつもりでも「ファッション業界」を生きてるじゃないですか。当たり前のように展示会に行って、当たり前のように仕入れてきて。でも、そういう「当たり前」がキヨサクさん達とのお仕事を通して変わっていきました。

―どのようなきっかけで出会ったのですか?

吉田 キヨサクさんに初めて会ったのは7年前ですね。お店に立っていたとき、たまたま僕が接客につかせていただきました。あまりに魅力的な方だったので、商品の説明をした流れで翌週に予定していた店舗でのシークレットライブにお呼びしたいと思い、今思えば失礼な話なのですが、「音楽はお好きですか?」と聞いたり(笑)。インストアライブがあるのでよかったら、と誘いしたんですけど、全国を転々としているから行けないんですと言われて。そのときは、福岡に来たときはまたぜひ遊びにきてください、と話して終わったんですけど、そしたら一週間ぐらいして、知人からMONGOL800というバンドをやっている人がアロハシャツのブランドをやっていて、商品を見て欲しいと言っていると。ピンときて画像検索をしたら「あ、この人だ」と。

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―そこでやっと気づいたわけですか。

吉田 はい。でも、僕も洋服屋としてプライドを持っていますし、人気のあるミュージシャンの人がやっているのを理由に、ハイやりましょうというセレクトではない。ひとまず物を見せていただけますか? と知人を通して伝えました。すると、一着送られてきたんです。実際に着てみたら、素材はいい、縫製もいい、プリントもいい、これはいいものだ……と直感して。

―なるほど。

吉田 ポップアップのオープニングイベントではご本人がシークレットライブで歌ってくださいました。残った在庫は全部持って帰るというお話から始まってはいたんですけど、結果、ほぼ全部売れたんです。多分100枚くらいかな。それから毎年、〈ALOHA BLOSSOM 〉さんとイベントを行っています。キヨサクさんはいわゆる洋服屋のレールを良い意味で歩いていない、自分が「こうしたほうがいいんじゃないか」と思った判断をもとに仕事されています。僕もそれに感化されて、もっと柔軟に考えられるところや、お客さんに喜んでもらえるような方法を考えられるんじゃないか、と思うようになりました。ダイスは30年もやっていると、レールが敷かれているのも事実。良いレールもありますし、古いものもあります。そのことをもう一回考えさせられたという意味で、とても影響を受けました。あ、あとお酒の飲み方も。(笑)。

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―今年も何かやっているのですか。

吉田 はい、今年は7年目です。「沖縄展」というかたちでちょっとパワーアップさせています。沖縄のブランドなので、アロハブロッサムのポップアップを中心に、民芸セレクターとして世界中を飛び回っている奥村さん(みんげい おくむら)にご協力いただき、やちむんや琉球ガラスなども置かせていただいています。あと今年は冬に、サイコロ柄のネルシャツを特別に制作していただきました。僕が「冬にも着たいですね」と言っていたら小野崎さんからこんなのどうですか? と連絡があったんです。職人的なプリントのネルシャツなんですよ。デジタルのインクジェットじゃなくて、手捺染という技法で刷っていて。10年くらい着ていると良い感じに色あせてくるんですよ。服も、音楽と一緒で使い捨てじゃなくて、これを続けて10年後に着たとき、今話しているようなことを思い出せたら最高ですね。

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他に、音楽に関係する印象的な出会いってありますか。

吉田 あとはイノウエブラザーズに紹介してもらったニックさん(ニコラス・テイラー)ですかね。イノウエブラザーズは、デンマーク生まれの兄サトルさん弟キヨシさんの2人組で、ボリビアやペルーのアルパカ農家さんを活性化させるプロジェクトをやってるんですが、ずっと前から付き合いがあります。そのお兄ちゃんに、ある日、ニューヨークにニックさんという写真家がいて、昔バスキアとバンド組んでいた人なんだけど、日本に呼んで写真展ができないかと相談されて。僕は彼らのバンドが好きだったので、あ、Grayの人でしょ。僕にとってザ・ニューヨークでノーウェーブのど真ん中、好きだよと言ったら、それなら話が早いと(笑)。そうしてニックさんの写真展がお店で実現しました。

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―いつ頃の話なんですか。

吉田 3年くらい前ですかね。ニックさんには、お店でDJもしてもらったんです。まさか、自分が働いているお店でこんなことができるなんて微塵も思っていませんでした。洋服屋を一生懸命やっていると、素敵なお客さん、なかにはミュージシャンやアーティストと出会ったり、本当に好きだった人と仕事ができたり、そういう喜びはあります。

―いろんな出会いがあるんですね。

吉田 そうです。あと、11月にYONAWO(ヨナヲ)っていうバンドがメジャーデビューしたんです。彼らは21歳くらいで福岡出身。弟がやっている喫茶店の高校の頃からのお客さんで、ある日弟に「にいちゃん、オレが一押しのバンドがるから聞いてみてよ」と紹介されました。こいつら絶対有名になるよな、なんて兄弟で言っていたら本当にメジャーデビューしちゃった。あと、出張先でこういうのも買っちゃう。これはシアトルに行ったとき、漁港のようなところでウクレレを弾いて歌っている、すごいかっこいいおっちゃんがいて。

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―本当にジャンルレスですね。

吉田 よかったらどうぞ、プレゼントします。

―え、良いんですか?

吉田 僕はなぜかもう一枚もっているので(笑)。朝に聴くと元気が出ます。

―ありがとうございます。では最後に、音楽自体はMixcloudやアプリなどで聴くことが多いとのことでしたが、一方で、お店という場所で行うライブも大事にされているように思いました。インストアライブは昔からやってきたんでしょうか。

吉田 ずっとやっています。なにか面白いことをやりたいっていう中で、ご一緒する相手がデザイナーさんだったら服だし、ミュージシャンだったら音楽、DJだったらDJプレイだし、飲食の方だったらフードやドリンクだし、いろんなことがミックスして、結果につながっています。

―なるほど。

吉田 ディレクターとして店舗にアイテムを仕入れてくるのもそうですが、その場でしか味わえないようなイベントも仕入れてくる、という感じですかね。

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物事の進め方など本質的な部分で影響を受けたと吉田さんが語る、キヨサクさんによる〈ALOHA BLOSSOM〉とDice&Diceのコラボレーションアイテムは、こちらからもお買い求めいただけます。

  
  • 吉田雄一

    Dice & Dice ディレクター。岡山県生まれ。青春時代に1960年代後半のロックにはまり、オーディオショップの店主の洗礼を経て福岡に。類稀な人を惹きつけるキャラクターで勤続20年を超えるDice&Diceではスタッフからの信頼も厚い。最近は、ゲーム「フォートナイト」に夢中。