SUNSPEL 表参道店 | ぼくが一番乗りをする理由
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ショップのチカラ

SUNSPEL 表参道店 | ぼくが一番乗りをする理由

VOLUME.1

作り手の思いを預かり、お客様につなげるための出会いをしつらえる場、ショップ。
日々、両者の間に立つスタッフたちは、そんな空間づくりのスペシャリストです。
商品を販売するだけの場所ではなく、
街に息づき、人々と関わり、暮らしを豊かにしてくれる特異な空間。
この連載では、ショップに宿るさまざまな「チカラ」を、
スタッフならではの視点で紹介していきたいと思います。
第1回は、SUNSPEL表参道店の塩入大輔さんです。

Photography by Daisaku Kikuchi
Text by Daisuke Shioiri (TSI)
Edit by Soya Oikawa (TSI)

身を清めるように

朝、まだ誰もいないショップに一番乗りするのが好きです。ウィンドウ越しに聞こえてくる都会の鳥の声、踏むと「ギィ」と鳴る床の音。オープン前の、そのさらに前の静かな時間に出勤し、僕は身支度を整えます。ウィンドウから差し込む優しい光の中で、服にスチームを当てながら、徐々に仕事モードへと気持ちを切り替えてゆくのが日課です。

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「やっぱり、実際に見たり触れたりできるのはいいもんだね、ありがとう」

先日ご来店されたお客様は、久しぶりの外出でのショッピングをとても楽しんでいたようで、マスク越しにも伝わってくるほどの満面の笑みと、嬉しいお言葉を残してショップを後にしていきました。

僕たち、ショップに立つスタッフにとってこのような瞬間は、心身が内側からじんわりと温まり、妙なくすぐったさを覚えます。去ってゆくお客様を呼び止めて、「どうですか。お茶でも一杯、飲んでいきませんか?」とつい言いたくなる気持ちは、きっと僕だけの経験ではないでしょう。接客できるということは、さまざまな準備の大変さを吹き飛ばしてくれる豪快な喜びがある仕事で、ここしばらくの間、それを叶えてくれる「ショップ」の大切さを痛感させられる日々です。

いつでも同じものが買える

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白いTシャツだけでもたくさんの種類。

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定番のQ82シリーズはカラーでシーズンが更新される。

SUNSPEL表参道店」は、イギリスで160年の伝統を誇るクロージングブランドの、日本で初のフラッグシップショップです。ロンドンにあるショップで使われているものと同じデザインの、壁に配したインタラクティブな什器にたくさんの製品たちが並びます。

アンダーウェアとして世界的に有名なブランドですが、それ以外にもシーズンごとのカジュアルウェアやソックスやバッグなどの小物も充実しています。定番と言えるベーシックで上質なQ82という超長綿のシリーズのTシャツは、まるで画家が愛用する「パレット」思わせる豊富なカラーバリエーションが自慢です。

いつ来ても定番品が置いてあるということは、「同じものをずっと使い続けていきたい」というお客様にはもちろん、シーズンごとの新鮮さと定番品とを織り交ぜて提案する僕たちスタッフにとっても、大きな安心感をもたらしてくれるし、それがこの「SUNSPEL表参道店」のアイデンティティになっていると思います。

愛用品に宿るもの

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塩入さんがいつも見ている店内奥からの風景。

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お客様に送るサンキューレター。

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店内奥の什器の間に立つのがお気に入り。

運命の一品がお客様に出会い、ここから巣立っていくとき、さまざまな余韻も一緒に付いていきます。スタッフと交わした会話や、その日の天気や街の様子、流れていたBGM(がもたらすムード)など、ショップを訪れることで体験する細かな一つひとつが、いつの間にか情緒的な耐久性となって、長く愛用していただける一助になれれば嬉しいです。それは服がどれくらいの洗濯回数に耐えられるかというような物理的な耐久性とは異なり、もっと身体に近い、温度のある愛着としてです。

積み重ねていく仕事

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また製品を作ってくれた工場の人々の「想い」や、創業から160年にわたってものづくりを続けて来た「誇り」といったことも、僕たちが大切に伝えていきたい「ショップのチカラ」です。

SUNSPEL表参道店はオープンから5年という歳月が流れ、木の床は傷が付き日焼けして、少しは歴史のようなものを刻んできたように感じます。V字のリズミカルなヘリンボーン柄だと思っていたのですが、眺める角度を変えればL字のパズルのように見えると気が付いたのはつい最近でした。まだまだ僕の知らないことがこのショップには宿っているようです。

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オープン前にウィンドゥを磨くショップメイトの中山さん。

このショップは晴れの日も雨の日も、朝も夜も、暑い日も寒い日も、たくさんのお客様をお迎えし、お見送りして来ました。その間、ほんの數十分の間に、僕たちスタッフが見せる「ショップのチカラ」があります。

“あたりまえ”が“あたりまえ”でなくなった今でも、窓から差し込む陽のあたたかさはいつもと変わりません。そんなショップで今日も僕は一番乗りをして、みなさんとの出会いを待ちわびています。

もう少し気軽に外出できるようなったら、表参道への用事のついでに、ぜひ僕たちのショップに立ち寄ってみてください。

  
  • SUNSPEL表参道店

    英国で1860年創業の歴史ある世界的ウェアメーカーの日本初の路面店として2016年にオープン。表参道のメイン通りから一本路地に入った、静かな通りに佇む。ブランド名の「SUNSPEL」とは、最高級のコットンを育てる「太陽の魔法」という意味から。

  • 塩入大輔

    2016年アングローバル(現TSI)入社。以来SUNSPEL一筋で現在は表参道店に勤務。坊主歴7年のアート好き。コロナ禍を機に環境問題に目覚め、ヴィーガンにシフト中の愛妻家。玄関にはなかなか上達せずに眠ったままのスケートボードがある。