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ショップのチカラ

MHL.代官山店 | わたしの気持ちが整う理由

VOLUME.2

作り手の思いを預かり、お客様につなげるための出会いをしつらえるショップ。
両者の間に立つスタッフは、そんな空間づくりのスペシャリストです。
商品を販売するだけの場ではなく、
街に息づき、人々と関わり交わり、暮らしを豊かにしてくれる特異な空間。
この連載では、ショップに宿るさまざまな「チカラ」を、
日々「立つ」スタッフならではの視点で紹介していきたいと思います。
第2回は、MHL.代官山店の栗村枝里子さんです。

Photography by Daisaku Kikuchi
Text by Eriko Kurimura (TSI)
Edit by Soya Oikawa (TSI)

“代官山”と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?

個性的なカフェやショップが並び、メディアの露出も多く、おしなべて"おしゃれな街"と思われがちですが、実は750円で食べられる「塩サバ定食」に行列ができたり、神輿が出るお祭りや、なんと小さな古墳まであったり、昔ながらの“のどかさ”を感じることのできる街でもあるのです。

 

渋谷、中目黒、恵比寿という賑やかなエリアに囲まれたこのエリアにオープンして12年目になるMHL.代官山店。八幡通りという大きな通りに沿いに立地していながら、歩行者の視点からは少し隠れるようにショップの入り口があるので、よく場所についてのお問い合わせもいただきます。赤いポストが目印の代官山郵便局まで辿り着けたら、もう近くです。

ビルの外壁はホワイトですが、そこにブラックの鉄格子で覆ってしまうという大胆なアイデアでMHL.代官山店は存在感を放ちます。店内に足を踏み込んで見ると、奥にまっすぐ細長い空間は暖かい光に照らされ、落ち着いた雰囲気の心地よいBGMが流れています。

 

奥にある西向きの通路口の扉からは風がよく通り、天気のいい日の夕方には陽が沈んでいく様を眺めることも。日中はというと、採光用のすりガラスから柔らかい自然光が差し込んで、一日を通して、なんとなく「いらっしゃいませ」よりも「こんにちは」がしっくりとくる雰囲気なのです。

自然光がやわらかく注がれる窓際

そんな代官山に通い続けてそろそろ9年になる私ですが、しばしば、ショップの外に出ては、街の人の様子や空模様を観察することが習慣に。高い建物があまりなく見晴らしが良いので、日々、移り変わる季節を肌で実感することができるのです。気のせいかもしれないのですが、ほかの街に比べてリラックスした表情をしている方が多い気がして、それぞれの幸せを想像しては、癒しを感じることができる大切な時間です。

 

この代官山店は、世界で初めてのMHL.のSHOPとして、 毎シーズンのコレクションをフルラインナップで扱っています。内装デザインは、ロンドンのフラッグシップショップやマーガレット・ハウエル神南店なども手がけた、イギリス人建築家のウィリアム・ラッセル。「ファクトリーの機能性」「インダストリアルな倉庫管理」「実用的な保管システム」という3つのショップコンセプトがあり、ショップ空間のいたるところから感じ取ることができます。

縦と横の仕切りの色を変えることで立体的な印象に

ひと目で在庫状況を把握できる壁一面のストック、滑りにくいラバーの床、そしてぜひ注目していただきたいのは、店内中央に鎮座するブラックの天板の棚です。薄くスライスした木材を重ねたプライウッドに、天然素材を原料に製造されるリノリウム塗装をしたこの棚は、この代官山店のために特別に作られたものです。

 

リノリウム塗装は抗菌性が極めて高く丈夫なので、学校や医療機関などでよく使われています。店内に3つあるこれらの棚のうち2つは一昨年のリニューアル時のもの、1つはオープンした12年前から使用しているものですが、すぐには判別がつかないほど劣化がありません。ご来店の際はぜひ、どちらがどの時代のものか当ててみてくださいね。

さらに製造工程の際に出る残布でフィッティングルームのカーテンが作られていたり、ハンガーラックや梯子などの金属はすべてヘアライン加工でツヤ消しにしていたりと、ショップの隅々にデザイナーらしい“リアルさ”へのこだわりが込められているほか、セメント袋の形をしたショッパーや包装用の茶紙、ロゴテープやギフト用の麻ひもといった備品にも、実用性を重視するMHL.のコンセプトを感じることができます。

また、商品の新しい入荷がある度にアップデートされるディスプレイやレイアウトも、ショップの見どころです。デザイナーの“いま”の感覚が込められたシーズンカラーを、どう見せるのがもっとも素敵なのか。その相性やコーディネートの組合せを考えることは、私の大切な楽しみでもあります。

 

ベースとなるカラーとシーズンカラーが考えて配列され、見た方がコーディネートをイメージし易いようになっているハンガーラックも、ぜひ参考になれば嬉しいです。壁面のストックも同様に、カラー、アイテム、素材など、バランスを考えて収納しています。

そしてMHL.代官山店には、個性的でおしゃべりが楽しいスタッフが揃っています。ここだけの話ですが、実はスタッフの休憩室がとても快適で、各々お気に入りのマグカップとお茶を持ち込んでは、至福の時間を過ごしています(笑)。

 

私の大好きな街とショップとスタッフ。お散歩をするような気持ちで、気軽にショップに入ってみてください。きっと、足を伸ばしてよかったと思ってもらえる居心地の良い空間だと思います。そしてマーガレット・ハウエルがMHL.のプロダクトと同じようにショップに込めた細やかなこだわりや、私たちの楽しそうな様子も、一緒に感じてみてください。そのあとでほんの少し、あたたかい思いをお持ち帰りいただけたら、とても嬉しく思います。

  • MHL.代官山店

    2009年に世界初のMHL.のオンリーショップとして東京代官山にオープン。10周年を迎えた2019年には拡張リニューアルを行うとともに、近接するT-SITE内のGARDEN GALLERYにてMHL.のものづくりを紹介するエキシビションが開催された。

  • 栗村枝里子

    2013年入社。MHL.代官山店スタッフ。東北の山奥で生まれ育ったためか、静かで目に優しい場所が好き。大学で夏目漱石にのめり込み、現在も文学に心酔する日々。眠る前にウイスキーを味わうのが至福のとき。最近、金継ぎを始め、マイペースに勉強中。