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ショップのチカラ

and wander 宮下公園店 | ぼくがトライアル・アンド・エラーを楽しむ理由

VOLUME.3

作り手の思いを預かり、お客様につなげるための出会いをしつらえるショップ。
両者の間に立つスタッフは、そんな空間づくりのスペシャリストです。
商品を販売するだけの場ではなく、
街に息づき、人々と関わり交わり、暮らしを豊かにしてくれる特異な空間。
この連載では、ショップに宿るさまざまな「チカラ」を、
日々「立つ」スタッフならではの視点で紹介していきたいと思います。
第3回は、and wander 宮下公園店につとめる多田健人さんです。

Photography by Daisaku Kikuchi
Text by Kento Tada(and wander)
Edit by Soya Oikawa (TSI)

「試行錯誤を重ねる」という意味の「トライアル・アンド・エラー」。日本では「トライ・アンド・エラー」という和製英語のほうが定着していますが、実はこの言葉、とてもand wanderの活動に合う言葉なんです。日々の仕事だけでなく、登山やキャンプをはじめとしたアウトドアでのいろんなアクティビティにも通じる大切なヒントがあることに気付かされました。

新しいチャレンジをするのが大好きなand wander。僕自身もその姿勢のファンの一人です。しかしすべてのチャレンジがスマートに実を結ぶわけではありません。そこにはさまざまな「トライアル・アンド・エラー」が潜んでいます。

僕が務める「and wander 宮下公園店」は国内3店舗目としてオープンし、間もなく1年が経とうとしています。開放的な天井とミニマルな空間が特徴のショップデザインは、アトリエ系建築設計事務所「スキーマ建築計画」の長坂常さんによるもの。来店されるお客様のなかには、什器のディテールを凝視される方や、天井を見上げながら、機能的な構造に感嘆される方も多くいらっしゃいます。

グリッドの調整する店長の水島さん

カスタマイズというアクティビティ

ショップでは新しいシーズンが立ち上がると毎週のようにフレッシュな製品がたくさん入荷します。僕たちはそれらに宿る作り手たちの「思い」をお客様にしっかり伝えるべく、季節や人々の気持ちの変化などを敏感に汲み取り、レイアウトの変更やディスプレイを行い、ショップ空間をカスタマイズします。

仮に一般的なショップ空間で什器の配置を変更したいと思っても、壁に設置されたハンガーバーや天井に埋め込まれた照明など、調整には一定の制限があることが多いと思いますが、それを自由にしているのがこの「and wander 宮下公園店」の最大の特徴といっても過言ではありません。天井部分にしつらえられたグリッドに沿ってハンガーバーの位置を変えることができるだけでなく、各グリッドには照明も備え付けられていることで、ショップ内の好きな場所に空間をゼロから作っていくことができます。

脚立に上ったり、モンキーレンチやペンチといった工具を用いたり、ロープを吊るすための金具をテコの原理でひとつひとつ外したり。頭と体を十二分に動かすレイアウトの変更は、まるで自然のなかでのアクティビティのようでもあります。そんな作業を通じて得られる見せ方の発見や、ギアのコツを掴む気付きの感覚はまさに「トライアル・アンド・エラー」の連続。

タグのチカラ

発見や気付きといえば、and wanderでは製品についている「タグ」も見逃せないポイントです。カラー、サイズ、マテリアル、プライスといった基本的なフォーマットに加え、「山のマーク」を用いてフィールドのレベルを3段階で表現しています。例えば3つなら「山の冷たい雨や、体温を奪っていく風など、あらゆる状況からあなたを守ります」という特性を表し、購入する際のひとつの指針となってくれるのです。

またひとつひとつに製品の説明が書かれているので、タグを読むだけでも「なるほど!」という具合に一層の興味が掻き立てられます。使い手に必要であろう豊富な情報を載せたタグは、品質向上を目指して日々取り組んでいる「トライアル・アンド・エラー」の蓄積でもあるのです。ぜひ着目してみてください。

まるでパズルのような

ショップ空間の可変性が高く、工夫できることが多い一方で、レイアウト変更やディスプレイが必ずしも思い描いたとおりにいかないこともあります。また完成後であっても、お客様の感覚との間に「ズレ」が生じた際に速やかに気付くことも必要です。

できる限りその精度を高められるように「ショップの見え方や製品たちは、どのようにお客様に伝わるのがいいのか」と常に自分たちに問い、全体の空間をぼんやりと頭の中に浮かべてイメージを膨らませ、什器の配置やシーズンイメージを伝えるタペストリー、マネキンで見せるコーディネートなどといった各構成要素の役割を把握しておきます。それらはまるでパズルピースのように次々とはまり、すぐに整うときもあれば、完成間近のパズルをひっくり返したかのように見事に「振り出し」に戻ってしまうときもあります。

ショップと自然との間に

オープン当初にはなかったものもたくさんあります。植物や木天板、ショップサインや薪などは、より魅力的な空間をつくるために行ってきた「トライアル・アンド・エラー」の副産物です。それらはアウトドアブランドとして自然界にあるものを通してお客様に伝えていくことで、商品がもっと魅力的に伝えられるのではないか?という視点から取り入れてきました。

そのようにショップで感じたことをダイレクトに反映させていく感覚はどこかアウトドアでの活動に似ている気がします。山へ行く際のウェアや荷物などは、天候や体の状態の変化を想定しておく必要があり、実際に摂取する水の量や、ギアの選別、ウェアのレイヤリングを通じて体感した満足や後悔などは、まさに「トライアル・アンド・エラー」そのものです。その繰り返しによって「精度」を高めていくのがとても楽しいです。

こうしてショップ空間をカスタマイズする技術力と遊びの表現力を育みながら、どんどん進化する「and wander 宮下公園店」。ぜひ、実際にその痕跡を感じてとっていただけると嬉しいです。

  • and wander 宮下公園店

    国内第3店舗目として2020年にオープン。and wander直営店の中でも最大規模を誇る。可変性が非常に高い空間デザインとなっており、スタッフによる日々の「トライアル・アンド・エラー」が表現されている。

  • 多田健人

    2020年3月よりand wanderに参加。幼少期はボーイスカウトに所属し、大人になってからはバックパッカーとして東南アジアを旅した経験も。無類のコーヒー好きでハンドドリップコーヒーをアウトドアの環境で飲むのが至福の時。好きなアーティストは「Radiohead」「Boards of Canada」「Carl Craig」など。熱狂的なベイスターズファン。