#FOOD#LIFESTYLE

からだの奥まで染み込む、かぼちゃのポタージュ。

料理家・フードコーディネーター 冷水希三子さん

食卓にゆったりとした時間が流れて、気持ちをほっと温めてくれる。
そんな、おおらかなかぼちゃのポタージュに、思いがけない奥行きをもたらすトッピング。
甘さを引き出すシナモン。柑橘の爽やかなリズムを加える青柚子のピール。
オリーブの風味をまとったレンズ豆を添えて、歯ごたえを楽しんでみたり。
季節の味わいに変化をもたらす3つのアイデアを、料理家の冷水希三子さんに聞きました。

Photography by Ayumu Yoshida
Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

滋味をたくわえる秋の色。

寒くなってくる10月の初旬に食べ頃を迎えるかぼちゃ。おいしい野菜は「採れたて」が多いですが、かぼちゃは夏から初秋にかけて収穫されて、ゆっくりと甘みをたくわえます。皮から艶がなくなり、ヘタがコルクのように乾いてヒビが出てくるのが完熟のしるし。包丁を入れて、まな板の上でころんと転がり、ぱっと橙色が見えるのは、山の木々が黄色やオレンジに染まる紅葉の景色のようです

かぼちゃのポタージュは、こんなふうに。

材料

かぼちゃ(正味)……350g

玉ねぎ……1/3個

EXVオリーブオイル……大さじ1

塩……適量

水……400ml 

作り方

1. かぼちゃは種を取って好みで皮をむいて2~3㎝大に切る。玉ねぎはスライスしてざく切り。

2. 鍋にEXVオリーブオイルと玉ねぎと塩少々加え混ぜ蓋をして、弱火でときどきかき混ぜながら10分ほど蒸らし炒める。

3. 2にかぼちゃと塩少々を加え混ぜ、水100mlを入れ蓋をしてさらに20~30分かぼちゃが柔らかくなるまで蒸らし煮る。

4. 3に残りの水を加え、10分ほど煮てミキサーにかけ鍋に戻し入れたら塩味を調え器に盛る。

5. 好みのトッピングをする。

かぼちゃと玉ねぎを鍋で煮るとき、はじめから400mlの水で煮るのではなく100mlで蒸らすように煮るのがコツだと話す冷水さん。「最初にたぷたぷの水で煮ると、野菜の味が薄まってしまう気がするんです。一度、少なめの水分と熱でぎゅっと味を凝縮させてから、そのあとで、水を加えて馴染ませていくようなイメージです」

3種類のトッピングで、ポタージュに奥行きを。

青柚子をゼスターグレーター(おろし器)で削ると、きりっとした香りが曇り空の秋の日のキッチンに漂います。「かぼちゃは柑橘の香りと相性がいい。さっぱりとした柑橘のピールは、それ自体で完成されているかぼちゃの甘さを切り、意外な風味を加えてくれます」

レンズ豆は、茹でたら塩とEXVオリーブオイルでシンプルに味を調えるだけ。手を使うとオイルがまんべんなく豆を包むのが感覚的にわかるそう。「レンズ豆は歯ごたえを加えるだけでなく、噛むほどに豆の風味が広がるのも美味しいです。おかずらしさのある一皿になる気がします」

山胡桃とカカオニブのグラノーラは、朝や、遅く帰った夜にお腹を満たすポタージュにぴったり。「市販のものを活用して、シナモンのパウダーをさっとふれば、かぼちゃの甘みをより引き立たせてくれます。青柚子は甘みをカットしましたが、こちらはそこをさらに際立たせるイメージです」

シーンや気分によって、器を変えてみる。

青柚子のピールをランダムに散らして、生クリームをたらり。ポタージュをかき回さずに口に運んでいくと、ダイレクトにかぼちゃを感じるひとくちや、青柚子が効いたひとくち、生クリームと馴染んだ濃厚なひとくちなど、さまざまな味わいが織りあわさっていきます。

マグカップなら、気楽な面持ちに。両手で持つと感じられる温もりも、味わいのひとつなのかもしれません。「ひとりのときは、スープだけでいいかなという日もある。マグカップだと、スプーンの洗いものが減りますね。ちょっとしたことだけれど、家での食事はそれくらいリラックスした考え方で食器を選ぶのが素直だし、しんどくならないと思います」

「お友だちと一緒に話をしながら食べるのか、ひとりで食べるのか。どんなシーンのスープであるかによってお皿を変えています。どんな雰囲気で、どんな器に盛つけて食べるのか、その風景によって味わいも変化すると感じます。今回紹介したトッピングを、大きなお皿のなかで島をつくるように3種類加えて食べ比べをするのも楽しそう。家だからこそできることですね」

もうちょっと聞きたい、冷水さんとスープの話。

―冷水さんにとって、スープはどんな存在ですか?

ほっとして、落ち着けますよね。友人を招いて食事をするとき、必ずひとつはスープをつくります。ワインを飲んで賑やかにしていても、スープを飲むときはみんながまったりとした気持ちになる。じわーっと胸の奥まで沁みていくスープが、リセットになるのだと思います。

―口にはこぶ動きも自然とゆっくりになりますし、それほど噛まずに味わえるので、気分が切り替わるのかもしれません。

スープは、食べるときに体力を使わない気がしませんか? ステーキをナイフで切り分けてかぶかぶっと食べるのとは対照的ですね。ひたすら吸収というか。

―忙しいとき、スープの滋味深さに助けられた経験があります。朝はすっと食べられるし、お昼はほっと一息つける。夜遅くなってしまったときも身体に優しくて満足感のあるスープはとても頼りになります。

かぼちゃのポタージュは、私にとって大切な思い出がある料理でもあります。数年前に親しい友人が入院したとき、病院の食事は食べられないけれど、冷ちゃんのかぼちゃポタージュが食べたいと言ってくれました。ポタージュが好きでよく食べてくれていましたが、弱っているときにも思い出してくれた。彼女に会うことは叶わなかったけれど渡してもらえました。かぼちゃのポタージュは、どんなときでも優しくて、気持ちもあたたまるのだと思います。

「フードロス」との向き合い方。

―ポタージュに使わなかった部分を活かすアイデアがあれば、ぜひ教えてください。

種は、洗ってざるにあげ、風通しのよい場所で乾燥させます。余裕があったらフライパンで炒ると香りが出ますよ。殻をむいてサラダに加えたり、そのままでもおいしい。皮は乾かして素揚げにするのもありかな、お酒のおつまみとして。

―世界中で、食べられるのに食品が廃棄されてしまう「フードロス」の問題があります。日々の料理で、食材を上手に使い切るためにはどうすればいいでしょうか?

材料の使い道を知るだけでなく、食材の保存方法を知るのもよいと思います。葉物の野菜は、パッケージに入れたまま冷蔵庫にしまっていると2〜3日で傷んでしまいますよね。でも、買ってきたら水に放して水揚げをしてからキッチンペーパーで包み、タッパーなどの保存容器かビニール袋で包んで冷蔵庫に入れておくと1週間ほど持つこともある。使わなきゃ、と焦って対処するのではなく、最初のお手入れを身につけておくと自宅でのロスが減らせるのではないでしょうか。

―食材を最大限長持ちさせてあげることから、工夫ははじめられるんですね。

もったいないから、と頑張っていると、心がしんどくなってしまうときもあると思うんです。使い切らなければいけないという義務感より、長持ちするようにお世話をしつつ、農家さんが育ててくださる食べ物をおいしくする工夫として取り組みたい、というのがフードロスに対する私の気持ちです。

  • 冷水希三子

    料理家、フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を活かしたレシピを書籍や雑誌で提案するほか、広告や映画などで料理のコーディネートを行う。器選びや美しい盛りつけが人気で、日々のインスタグラムの投稿にも注目があつまる。著書にONE PLATE OF SEASONS 四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(グラフィック社)、など。