#and wander#HIKING CLUB

街を発ち、野山を越えて

青森・八甲田山で学んだ、繋がることの大切さ

VOLUME.2

山や自然を楽しむきっかけ作りを続ける「and wander HIKING CLUB」。
その活動はいつのどのようにして始まり、どんな道を歩き、どこに向かうのでしょうか。
この連載では、四季の山々で開催される活動の様子を、ご紹介していきたいと思います。
第2回は、アウトドア雑誌『ランドネ』と合同で開催された青森・八甲田山でのハイキングイベントの様子をレポートします。

Text by Kento Tada (and wander)
Photography by and wander

名峰の景色を堪能した一日目

東北地方の背骨・奥羽山脈の北端、青森県のほぼ真ん中にある「八甲田山」は、複数の山々からなる火山群の総称を指します。僕はand wander HIKING CLUBの担当として、参加してくださる方々と円滑にコミュニケーションするための事前学習をしっかり積みつつ、自身、初めて立つ東北、初めて歩く青森・八甲田山に期待一杯でハイキングイベント当日の朝を迎えました。

集合場所は青森空港から車で30分ほどにある「八甲田山荘」。指折りのウィンタースポーツリゾートでもある八甲田国際スキー場のふもとにあります。参加者のみなさんが到着し、まずは一息ついてからプチハイキングとして予定していた「ブナの森散策」に向かいたいところでしたが、この後徐々に崩れる予報の天候を考慮して、急遽二日目に予定していた「八甲田山ハイキング」にプランを変更。荷物を置くやいなや、隣接する八甲田ロープウェーに乗り込みました。

山頂にある「山頂公園駅」まではほんの10分ほど。到着すると、涼しい風が僕たちを待っていました。一変したふもととの気温差が標高の高さを感じさせ、一気にハイキングムードも上がります。

出発前に今回、僕たちのガイドをつとめてくださる尚平さんと宙平さんとご挨拶。笑顔が素敵でお話好きな尚平さんは僕と同世代で、青森の雪質とテレマークスキーの魅力をたっぷり教えてくれました。宙平さんは学生時代に短期アルバイトで八甲田を訪れて以来、四季折々の自然とアットホームな八甲田山荘にすっかり魅了されてしまい、「気がつけば20年以上も経ってしまった」という大ベテラン。そんな頼もしいお二人に率いられた総勢20名余りが2班に分かれ、「よし歩き出すぞ!」と標高1,548mの赤倉岳へ向かって一歩いっぽ、進み始めました。

まずは「八甲田ゴードライン」と呼ばれる整備された遊歩道を、「ブナ」や「アオモリトドマツ」といった植物を横目に歩きます。いたるところに湿原が点在し、普段見慣れない景色に思わず左右をキョロキョロ。さらに行くと、本州北端の気象条件だからこそ、この高さでも見ることができる「ナナカマド」や「チングルマ」、そして可愛らしい姿で見つけるたびにみんな喜ぶ「コケモモ」といった高山植物の数々に目を奪われます。

しばらく続いていた緩やかな道の先に突如現れた急登を登ります。最初は元気いっぱいだった面々も徐々に疲れの色が見え始めましたが、「もう少し!」「がんばって!」などお互いを励ます声が飛び交ったり、先頭を引っ張る尚平さんが「後ろが追いかけて来るぞー!」と茶目っ気たっぷりに僕らを元気付けてくれたりと、登山ならではの一体感を感じさせてくれるコミュニケーションも面白かったです。

やがて急登を終えると、そこには1,500m級の山々からなる綺麗な稜線の眺望が待っていました。そしてこの赤倉岳の頂上に広がる360度の大パノラマからは、日本百名山のひとつでもある名峰「岩木山(1,625m)」や、遠くには雲の隙間をぬって「岩手山(2,038m)」も見え隠れ。ひょっこりと山が顔を出した瞬間のみんなの笑顔が印象的でした。

たっぷり絶景を楽しんで下山する頃、予報通りポツポツと雨が。みんなはザックからレインジャケットを一斉に取り出し、これぐらいの雨はハイキングでは当たり前、と言わんばかりに、心地よく雨に打たれながら歩き出します。

幸い、ふもとの山荘に戻る頃にはすっかり雨も止み、雨露に濡れた植物たちが太陽に照らされているのを横目にゴール。全員の疲労感が達成感に変わった瞬間です。

壮大な大自然をゆっくりと歩くなか、天候の変化を全身で感じ、あらためてand wanderが大切にしているこのメッセージを思い出しました。

雨にふられるのも

風にふかれるのも

歩くのも

山は楽しい

自然と一体化した二日目

翌日は朝から、弘前市にお店を構える洋菓子店「スミス」さんが登山中のおやつに、と用意してくれた自家製のクッキーと八甲田山荘特製のボリューム満点の大きいおにぎりを手にとり、「ブナの森ハイキング」へ。

スラリとした樹々が生い茂る森の中を歩くこと数時間。時には道なき道を歩き、草木をかき分けるようなシーンもしばしば。これも土地勘のあるガイドさんがいるからこそできる本格的な散策です。僕は安心して森の中をワクワクしながら歩き、まるで童心に戻った気持ちになりました。

やがて行き着いた先には、霧がかかった幻想的な沼や大木が待っていました。森の中で粛々と成長し続ける草木はとてもたくましく、生命の強さや雄大な自然に身を包まれると、人と自然は共同体なのだ、ということにあらためて気づかされます。

“繋がり”続けること

初日の夜に、八甲田山荘の相馬さん、ランドネの佐藤さん、and wanderの森さんが登壇者となって行われたトークショーでの、自然や人との繋がりを感じる話が心に残っています。

相馬さんは八甲田山荘の経営に携わりながら、八甲田山ガイドクラブの隊長も務める大ベテラン。津軽弁が素敵なハートフルなお方です。山小屋の近況などを交えて青森という土地、八甲田山のことなどを色々お話してくださり、この八甲田山荘に来てくれる人が大好きだといいます。今回、僕たちのガイドをしてくださった尚平さん、宙平さんの、青森の雄大な自然や、この八甲田山荘と、相馬さんの人柄に魅せられて今に至る、というお話も頷けました。

「今回、この企画でみなさんが訪れてくれたことが嬉しい。みなさんが来てくれることで生活ができている。」

山荘を訪れる人々との繋がりに感謝する相馬さんのこの言葉がとても印象深く、そもそも僕がこの地に来ることができたのも「人の繋がり」によるもので、登山時のコミュニケーションだけでなく、あらゆる瞬間でその大切さを感じた二日間でした。

普段は人見知りがちな僕も、このハイキングイベントを通じて感じた八甲田山荘のウェルカムな空気にすっかり虜になりました。そして見送られるときの「また冬に遊びにきてね!」という淀みのない言葉と屈託のない笑顔が心にジーンと沁みわたり、青森・八甲田山の大自然を目に焼き付け、冬にまた、この地に来ようと、胸に誓いました。

この体験で得た人と人との繋がりの大切さや、自然を愛する純粋な気持ちを、今後のand wander HIKIING CLUBの活動に繋げていこうと思います。

  • 八甲田山荘

    四季折々の雄大な景色が楽しめる登山やハイキングはもちろん、冬期にはバックカントリースキーやスノーボードといったウィンタースポーツ客でにぎわう、八甲田山の玄関口にある名物山荘。ボリューム満点の食事と昔懐かしい絶品プリンがオススメ。

  • 多田健人

    2020年3月よりand wanderに参加。MIYASHITA PARK店に勤務しながら、HIKING CLUBの運営を担当。幼少期はボーイスカウトに所属し、大人になってからはバックパッカーとして東南アジアを旅した経験も。無類のコーヒー好きでハンドドリップコーヒーをアウトドアの環境で飲むのが至福のとき。熱狂的なベイスターズファン。