古き良き「天然モノ」のたいやき より道のススメ | 東京・吉祥寺編
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より道のススメ | 東京・吉祥寺編

古き良き「天然モノ」のたいやき

VOLUME.6

MARGARET HOWELL SHOP & CAFE 吉祥寺で店長を務める鈴木範子さんがセレクトする、
吉祥寺の心安らぐお店たち。そのお店でしか買えないものや味わえない雰囲気の裏側には、
オーナーさんのこだわりや人柄があるような気がします。
「より道のススメ」で立ち寄った「たいやきそら」を営む森洋二さんに、
オープンまでのご経歴をはじめ、温もりあるお店づくりについて鈴木さんが聞きました。

Interview by Noriko Suzuki (ANGLOBAL)
Photography by Natsuki Kuroda
Edit by Yoshikatsu Yamato(kontakt)

テイクアウトはもちろんのこと、お店のカウンターでも、お茶と一緒にまったりとたいやきが食べられる「たいやきそら」。5年前に、ここ吉祥寺にお店を開いて以来、夏にはかき氷でお客さんを潤し、冬の時期は伝統的な技法でつくるたいやきで、人気のお店となっています。

鈴木さんは、オープン当初から、お仕事の休憩時間や休日のおやつタイムに、「たいやきそら」に足繁く通ってきました。お店に流れる和やかな雰囲気をつくり出す店主の森さんに、鈴木さんがインタビュー。

鈴木 たいやき屋さんをはじめたのはどうしてだったんですか?

 それはよく聞かれるんだけど(笑)。

鈴木 そうですよね。どうしたら人が「たいやき屋さん」になるのか、気になりますもん(笑)。私は職場が近いこともあって、休憩中にたいやきをよく買っていますが、この質問、まだ聞いたことがありませんでしたよね。

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 最初は屋台で売っていたんです。

鈴木 幅の広い飲食という分野で、どうしてたいやきだったんですか?

 うちで売っているのは「天然モノ」のたいやきでして。

鈴木 「天然モノ」というと?

 「一丁焼き」といって、100年以上も前から続く技法で一匹ずつ作るたいやきです。反対は「養殖モノ」。駅前にあるたいやき屋さんで見られるような、ずらっと並んだたいやきの型に生地を流し込んで一度に何匹も作られるたいやきです。

鈴木 なるほど。

 技術だったり、重たい焼型からくる負担も大きいのもあって、今は養殖が主流になってきていますが、この「一丁焼き」という伝統や、この技法だからこそ出来るたいやきの味を引き継いでいけたらな、という思いがまずありましたね。単純ですよ、ただそれだけのことです。

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鈴木 森さんにとって、たいやきの忘れられない味があったり?

 そうですね。昔は一丁焼きがメジャーだったんです。小さい頃に親しんでいた街のたいやき屋さんはほとんど、一丁焼きでした。だから、自分にとっては馴染みのある、懐かしい味です。

鈴木 私の小さな頃にはもう、養殖が主流だったなあ。重たそうな道具でたいやきを焼くおっちゃんは、私にとっては森さんただ一人です。

 そうなってしまいましたね。あと、うちの特徴としては材料に卵、乳製品を使っていません。卵アレルギーだったり、乳製品が食べられないという人たちにも、甘くておいしいたいやきを食べてほしい。実際、そういうお客さんは多いんですよ。

鈴木 ニーズがあるんですね。あと、私がお店でたいやきを食べていて思ったのは、お土産で買っていくお客さんが多いなあと。手土産や差し入れにも、もってこいですよね。

 おすすめですね。

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鈴木 今日、どうしても聞きたいことがあって。私がショップの店長として日々接客をする立場であることに、関係があるんですけど。

 どうしたんですか。

鈴木 私がはじめて「たいやきそら」さんに来たのはオープンしたての5年前くらいでしたが、当初から、なんといってもこのお店の居心地のよさに魅了されていて。

 そうでしたか、ありがとうございます。

鈴木 森さんがお客さんとコミュニケーションをとるとき、大事にしていることってありますか?

 そうですね、なるべく、昔あった「ご近所関係」っていうのかな、そういう雰囲気のあるお店づくりをしたいですね。やりとりは、他愛のないちょっとしたものでいいんです。他人同士でも、挨拶をすれば自然と返事が来る、というかね。「ただいま」って言えば、「おかえり」という一言が返ってくる。

鈴木 私が居心地のよさを感じるのは、まさにそういう安心感かもしれません。

 自分がしてもらえたら嬉しいことをお店で心がける、単純なことですよ。たとえば、一回会っただけの人が名前を覚えてくれていると嬉しいですよね。

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鈴木 このお店で、何度か素敵な出会いにも恵まれました。お互い一人で来ているとき、カウンターで隣に座った男性に「おいしそうですねえ」と話かけてみたんです。そうしてみたい気持ちになるんですよね。そこに森さんは、自然と、お互いの紹介だったりを一言添えてくれて、仲をとりもってくれる。

 そういう人と人のつながりって面白いじゃない。

鈴木 そうですね。

 飲食店で提供できるものって、食べ物だけではないですよね。お客さんが求めるのも、食べることだけじゃない。お店で出される食べ物は大事だけれど、居心地のよさだったり、あたたかいつながりだったり、そういう総合的なところでお客さんは判断しているんじゃないかな。

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鈴木 接客業をしている者として、すごくしみます。私も、売っている洋服に誇りを持ちながらも、さりげないコミュニケーションによってお客さんが通ってくださるようになった喜びを経験したことがあるので。

 そういうものですよね。

鈴木 私にとって「たいやきそら」さんは、美味しいたいやきやかき氷にありつける場所でありつつ、心休まる場所でもあります。森さんのお客さんとのやりとりは勉強にもなるし。

 観察はやめてよ(笑)。恥ずかしいから。

鈴木 すみません(笑)。では、今日はありがとうございました。

 こちらこそありがとうございました。またいつでも。

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