#and wander#shooting

ウラカタログ

and wanderのヴィジュアル作り、写し出す世界

VOLUME.15

普段目にすることのない側面にフォーカスして、
日々のなかで考えるきっかけをさがしていく裏方の記録「ウラカタログ」。
今回は、リアリティを追求し自然環境下で行われる
and wanderのカタログ撮影の裏側をレポート。
北海道・函館市にある恵山を舞台とした
2021年AWシーズンの撮影の様子を、
PRとして制作を担った甲斐裕季子さんがお送りします。

Photography & text by Yukiko Kai

and wanderでは、シーズン毎のコレクションのスタイリングやアウトドアウェアとしての機能性を表現するため、一貫して自然の中でヴィジュアル制作を行ってきました。現場での様子をご覧いただきながら、カタログ本誌やキャンペーンで使用されている写真が、どんな場所でどのように撮影されたか、楽しんでいただければ嬉しいです。

2021年AWシーズンのカタログ撮影の舞台となった「恵山(えさん・618m)は、北海道の道立自然公園に指定されている函館市、渡島半島(おしまはんとう)の南東端にそびえる活火山です。フォトグラファーやスタイリスト、モデル、アートディレクターなどの撮影クルーと、現地の恵山支所のガイドやドライバーを加えた全13名により、2泊3日の行程で行われました。

1日目

まずは撮影地のロケーションの確認からスタートです。事前に調べておいた予定地を次々と下見していくのですが、冬の日の入りは早く16時には暗くなってしまうので、函館空港に降り立つや否や、市街の候補地をいくつか急いで周り、メインとなる恵山へ。

到着した恵山は天候も良く、下見の行程も順調かと思われましたが、急きょ、山の安全を管理する恵山支所より「道路が凍結してしまったため、本日はもう閉山です」との知らせが入りました。しかたなく他に入山できる付近の山を探しかけていたところ、幸い条件付きで許可がでました。恵山支所の車が先導してくれ、ガイドも立ち合ってくださり、いざ入山です。

ダイナミックな稜線が広がる恵山

冬の澄んだ青空のもと、風もなく迎えてくれ入れてくれた恵山。目の前に広がる壮大な景色に、撮影クルーも興奮気味に。ところどころから火山ガスが立ち上り、硫黄の香りがします。岩肌の雪が美しく、山の左側にのびる山道からは尾根の向こうに海を眺めることも。

足元で雪間から顔をのぞかせているのは常緑小低木のガンコウラン。同行してくれたガイドは「噴火口に近づきすぎないで、足元の可愛い高山植物を傷つけないように歩きましょう」と、やさしい口調で教えてくれました。

無事に恵山の下見を終え、道の駅「なとわ・えさん」方面へ移動します。「なとわ」とは道南地方の方言で「な(あなた)」と「わ(わたし)」を意味し、人々が寄り合い、賑やかな場所になるように、と名付けられたそう。そのすぐ近くにある「日ノ浜海岸」がこの日最後の目的地です。在る砂はほとんどが砂鉄だという不思議な砂浜のロケーションを確認し、初日の行程が終了。

2日目

早朝にホテルのロビーに集合し、撮影するウェアや備品などをバスに乗せ、すぐに出発。恵山は前日と同じように青空に包まれていました。冷たい風に吹かれながら準備を済ませ、あらかじめ下見で決めておいた場所で次々とシャッターが切られていきます。時折強風が吹く中、スタイリストとヘアメイクがモデルの表情や仕草、ウェアに備わった機能的なデザインやディテールの見え方などを細やかに整えながら、みんな一体となってより魅力的な一枚を求めていきます。

しばしばこのような岩壁を背負って撮影が行われることがあります。自然環境の中で快適に過ごせるようにデザインされているウェアは、果てしなく長い月日をかけて溶岩が作り出した岩肌に馴染み、撮影クルーも納得の自然美を活かしたロケーションです。急な斜面の岩間を縫って歩き、撮影ポイントに。

夜間での行動時の視認性を確保するため、and wanderのプロダクトにはしばしばリフレクターがデザインされています。このカットは山の中間あたりにある丘で印象的なリフレクションを撮ろうと、夕焼けの空を待っていた時のひとコマ。

その撮影が終わると、急いで山のふもとにある駐車場まで戻り、コンクリートの地面と日の入り間際の夕焼け空と山の稜線を背に撮影。すっかり陽が落ちると今度は「日ノ浜海岸」へ移動し、満点の星空の下、海を背にして撮影。足元も見えないくらい真っ暗な中、ゆらゆらとフラッシュの光を反射するリフレクションは幻想的な雰囲気でした。みんなが最後の一枚を撮り終えてほっとしているなか、そっと静かに夜空に向かってカメラを向けていたフォトグラファー。その時の淡い夜空もカタログの中でご覧いただけます。

3日目

最終日は函館市街を中心に笹流ダム、未来大学、函館港の中央ふ頭を移動しながらの撮影。冊子としてのカタログの構成のなかでウェアのカラーリングや、自然を背景としたページとのバランスを考慮しながら、建造物や人工物が写る要素を加えていきます。and wanderにとって山と街はひとつながりなのです。

この風格漂う建造物は、日本で最古のバットレスダムとして知られる笹流ダム。コンクリートの格子状の柱の間の柔らかな光の空間で、肩の力を抜いた普段着としてのスタイリングの撮影が行われました。

広大な函館港の中央ふ頭に突如として現れた、太陽に照らされる人工漁礁。まるでアスレチックジムのような不思議な姿をしています。カタログの中では、背景の一部としてレイアウトされており、このように縦と横の直線が複雑に織りなすグラフィカルな建造物が、ページネーションに奥行きをもたせてくれます。

港に吹き付ける海風がつくりあげた、倉庫の壁の美しい錆の前で。カラーリングに特徴があるand wanderのウェアを、こうした人工建造物の「錆」やコンクリートの「肌理」などを背景に撮影することでトーンやテクスチャーにコントラストを生み出すことができます。自然と人工を問わず、長い時間を擁してそこに在り続けているロケーションもまた、私たちの撮影に欠かせない大事な表現要素です。

ラストショットは函館港の中央ふ頭に停泊中の船の前で。私たちが撮影し終わるまで出港を待ってくださったかのように、すがすがしく鳴り渡る出港の合図とともに、全行程を終了。空港へ向かうバスからは、この3日間たくさん駆け回った函館にかかる虹を見ることもでき、感動で胸が一杯でした。

北海道・函館は、豊かな自然と歴史に包まれた土地でした。恵山に入山できない可能性があった時に、不安に陥る私の背中を押してくれたアートディレクターのあたたかい言葉や、帰路の函館空港で感じた充実感と安堵など、この撮影の旅を通じて、たくさんの物語を体験しました。こうして裏側からの視点をお伝えすることで、完成したカタログやウェブサイトなどに載っているand wanderのヴィジュアルを、また違った角度から楽しんでいただけたらと思います。

山や自然と街の日常とをつなぐand wanderならではのカタログ撮影の裏側を、今回はお届しました。本格的な冬の到来に、私たちのアイテムがお役に立てれば幸いです。

完成したカタログのヴィジュアルはこちらでご覧いただけます。コレクションを表現したイメージムービーも併せてお楽しみください。

https://youtu.be/WcGPqmfgd1s

  • and wander

    「山や自然の中でも街と同じようにファッションを楽しみたい」と考えた2人のデザイナー、池内啓太と森美穂子によって2011年に設立され、感性を刺激するモード感とアウトドアウェアとしての実践的な機能性を追求したものづくりを展開しています。

  • 甲斐裕季子

    2019年入社。むかし母が教えてくれた、サルスベリが生い茂る森のような静かな場所と、コーヒーを入れて過ごす朝の時間が好き。気になる場所は旅先で見つけるスーパー。いつでも小学生に戻れる、同級生が営むとこやさんが大切な場所。