Wondrous Winter Market inspired by Kenji Miyazawa
#OUTDOOR GALLERY#宮沢賢治

NEWS ANCM

Wondrous Winter Market inspired by Kenji Miyazawa

VOLUME.49

Photography & Text by Soya Oikawa (TSI)

ARCHIVE

―ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか―

ケンタウル際の日の、午後の授業風景から始まる、宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』。賢治は生涯を通じて、森羅万象と向き合い、学ぶことに幸福を感じていました。

鉄道が開通し、小学校や図書館が建ち、郵便制度が整い、夜の闇に電灯が灯る。産業革命が進んだヨーロッパから新しい生活様式がつぎつぎと持ち込まれた明治時代に生まれ、大正、昭和と激動の時代を生きた宮沢賢治。

道端の石ころ、山谷の風や川の流れ、森の昆虫や空の鳥、宇宙の星々、レコードの音楽、詩や文学など、賢治は、この世のあらゆるものに関心を示し「ほんとうのまこと」を求めて化学から芸術まで幅広く研究をつづけ、やがて郷土の岩手を機縁とした理想郷「イーハトーブ」を描きます。

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今回、そんな宮沢賢治を特集した「PAPERSKY」の最新号に呼応する形で、元代々木町にある「and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY」にて「Wondrous Winter Market inspired by Kenji Miyazawa」展がはじまりました。

3Fと4Fのふたつのフロアで構成された同展では、ともに宮沢賢治作品とゆかりの深いイラストレーターの塩川いづみさんと、ミュージシャンのケイタニーラブさんが、賢治生誕の地である岩手県・花巻から早池峰山(はやちねさん)、遠野エリアから盛岡を経て三陸海岸を巡る旅で得たインスピレーションをもとに、さまざまなな作品を楽しむことができます。

まず3Fのギャラリーで来場者を迎えてくれるのはPAPERSKY本誌と連動した6枚の作品。どこまでもどこまでもつづく「夜空」やキャンディのように甘そうな「結晶」、仲むつまじく身を寄せ合う「キノコ」や幽玄の海に浮かぶ「船」など、旅に同行した写真家の砺波周平さんが写した岩手各地の風景に、塩川いづみさんが一筆、一筆、物語の息吹を描き込んでいます。

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「ほんにょ」と呼ばれる稲の天日干しの風景。無数に立つほんにょの上を、ひゅるりと何かが飛んでいます。

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スクラッチという独特な技法で描かれ、少ない色数を一色ずつ丁寧に重ねて印刷されているユニークな画本はデザイナー・イラストレーターの小林敏也さんによるもの。まるでひらがなのような柔らかい印象のトーンと、物語の場面を想起させるダイナミックな構図が見る者を飽きさせません。

PAPERSKY本誌では、下記のように旅のゲストが訪れた各地が「TRAVELER’S GUIDE」として小林さんの画本とともに紹介されており、過去とも今とも未来とも違う「まことの」イーハトーブへの扉の役割を担っています。

IWATE Chuckling with Kenji Miyazawa ‘cultivating a quiet joy’ TRAVELER’S GUIDE

くすくす笑う宮沢賢治と“静かな喜びを育んでいく”トラベラーズガイド

早池峰山とタイマグラの森 | 『かしわばやしの夜』

遠野物語 | 『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』

盛岡の文化の香り | 『セロ弾きのゴーシュ』

三陸沿岸と石 | 『銀河鉄道の夜』

花巻 | 宮沢賢治記念館

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4Fの壁一面には『雨ニモマケズ』の絵葉書セットの展示も。それ自体が生きているような、文字の配置がとても独創的です。さらには「きぎ工房」による自然の木目や色を活かしたミニ額も並んでいます。ちょこんと手のひらに乗る、かわいらしいサイズ。お部屋のあらゆるところに気持ちが安らぐような視点を置くことができそう。

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盛岡の書店「BOOKNERD」からは、民俗学の第一人者である柳田國男の名著『遠野物語』や、学者としての賢治が色濃く表れている『農民芸術概論』など、店主の早坂大輔さんに選ばれた岩手に由来するさまざまな書籍が集められています。中には、賢治と同時代を生きた詩人・建築家の「立原道造」が岩手を訪れた印象をつづった随筆集『盛岡ノート(復刻版)』というめずらしい一冊も(絶版・古書)。

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またPAPERSKY本誌で<現代に継がれる賢治的スピリット―Kenji Boys―>のひとりとしても紹介されている早坂さんは、書店を営む傍ら、積極的に出版にも取り組まれており、今回ANCMエッセイを寄稿くださった盛岡の歌人・作家の「くどうれいん」さんの初となるエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』を手掛けたのも、早坂さんでした。本エキシビションではご自身の著書『いつも本ばかり読んでいるわけではないけれど』などとともに紹介されています。

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さらに4Fでは“Fine Minerals(良質な鉱物)”を探して世界中を旅する鉱物セレクターの「USK MINERALS(ユーエスケー・ミネラルズ)」さんが、宮沢賢治の物語にちりばめられた言葉をヒントに採集した鉱物たちによる「Kenji’s Cosmic Minerals exhibition」が同時開催。幾億年ものながいながい地球の活動を感じさせる、不思議な色や形をしためずらしい石が並びます。ちなみに「鉱物」とは結晶のことで、「岩石」とはいろんな鉱物がくっついたもののことだそう。

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もしも今、賢治が生きていたなら、この時代をどう思うのでしょう。インターネットの普及や、人工知能によって加速する便利な暮らしに、人々はどう向き合うべきか。賢治が残してくれた「ほんとうのまこと」への道筋は、100年もの時を超えてなお輝きを増し、現代のイーハトーブへと誘ってくれているようだと、このエキシビションを見て思いました。僕自身がそうであったように、宮沢賢治という人物をより身近に感じることができると思います。ぜひ、ご来訪ください。

Wondrous Winter Market inspired by Kenji Miyazawa

開催中~2022130日(日)まで

12:00-19:00(最終日は17:00までとなります)

木曜定休

東京都渋谷区元代々木町22-8 3-4F and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY

03-6407-8179

こちらも併せてお楽しみください

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  • and wander OUTDOOR GALLERY with PAPERSKY

    2020年にand wander創業の地である東京・元代々木町に誕生した、旅するメディア『PAPERSKY』と共同で運営されるオープンスペース。自然に魅せられ、旅を楽しむすべての人々へむけて、企画展を開催している。