種をまくように
消費から、身近な「種」を探す
VOLUME.3
食材や衣服の産地のことだけではなく、
環境について、見聞きすることが増えてきました。
気づいていたけれど、何となくむずかしそうで、
いつもどこか他人ごとのようにしてしまっていた環境問題。
この連載では、僕がSUNSPEL表参道店につとめる傍ら見つけた、
身近にある環境を思う「種」を紹介していきます。
第3回は、SUNSPELでディストリビューターをつとめる伊藤綾さんを招き、
消費の中にある「種」について、お話しました。

きっかけは、ささいな「もったいない」から
塩入 以前、ショップで一緒に働いていたころの伊藤さんは、要らなくなった紙を「裏紙」として積極的に利用する一方で、上等なバッグやアクセサリーなどもいろいろと持っていたりして、節約しつつ大胆というか、その二面性がとても印象的でした。僕としてはその広い振れ幅の間に、環境意識への「種」があるんじゃないかと思っているのです。
伊藤 裏紙を使っていたことについては、学生のころから再生紙のレジュメに慣れ親しんでいたのと、社会人になって配属された先でも「裏紙を使う」というのが当たり前だったので、自然とやっていました。さらに今は仕事上でデータを使えばペーパーレスにもなるし、なるべく減らせるものは減らしていきたいと思っています。

塩入 環境を意識して―というよりも、仕事として習慣化していたのですね。普段の生活で似たようなことはありますか?
伊藤 今日持ってきているエコバッグも、きっかけはレジ袋をゴミとして捨てるのが好きじゃなかったということから使い始めました。今のようにビニール袋が有料化するずっと前から使っているのですが、そもそもエコバッグとして購入したものではなく、品々の保護用としてついてきたものがほとんど。「これ使えるな」と思ったら捨てられなくて(笑)。
塩入 裏紙もエコバッグも、きっかけは自体は環境意識ではなかったんですね。

塩入 伊藤さんは料理も好きで、自宅では大豆から豆乳を作っていると聞きました。
伊藤 一人暮らしではなかなか牛乳1パックを使いきれず、期限切れで捨ててしてしまうことが結構あって。大豆から作る豆乳なら、自分で消費できる分だけ作れていいなと思って家電屋さんで「豆乳メーカー」を買ってみたんです。そしたら、おからも使えるし、豆乳料理を積極的に作るようにもなりましたよ。
塩入 食品や野菜を選ぶときに気を付けていることはありますか?
伊藤 消費できる量しか買わないことです。大きい野菜は漬物にしたりして最後まで使い切るようにしたり、皮むきに手間がかかる人参や大根は千切りにして気にならないようにしたり (笑)。
塩入 伊藤さんなりに効率やムダについて考え、実践していることが、結果として環境に負荷の少ない暮らしに繋がっているという。
伊藤 特に意識しているわけではないけれど、そう考えてみると結果的にそうなのかも。基本的にモノを捨てる事に対して心に負担みたいなものを感じることはあります。
塩入 もったいないような消費をなるべく減らそうという節約の精神なのだと思います。それは同時に「環境に配慮した」消費行動とも言い換えられますしね。

ずっと使っていくために
塩入 「いいものを買って、長く使いたい」というお話もありましたが、今日持ってきてくれた腕時計はどのようものですか?
伊藤 SUNSPELへ配属になった節目で購入したヴィンテージの時計です。仲の良い先輩に薦められたのですが、それなりの値段だったのを地道に節約して資金を貯めました。苦労した分、購入が叶ってからは長く使っていこうと思えましたし、店頭ではお客様から「ヴィンテージですか?」と声をかけられてお話が広がったこともあります。
塩入 長く使いたいと思わせてくれるようなモノは、どのように選ぶのでしょうか。
伊藤 一生ものだと思えるようなアイテムは、年齢を越えていくつになっても楽しめます。「たとえ壊れても直しながら使いたいベーシックなもの」というのが私にとっての大事な基準で、すぐに買い替えたりはしたくないので、カラーも長く使うことを見越して選ぶようにしています。
塩入 ほかにも、ケアしながら長く使っているものはあるのですか?
伊藤 バッグは形が崩れないように、使った後は必ず中に詰め物をして付属の袋に入れて保管したり、毎日使わずに適度に休ませたりと、長く使うことを意識して丁寧に扱っています。シューズもそうですね。以前店頭で上質なレザーシューズを履いていたら、その革に合った磨き方を詳しく教えてくれたお客様が居て、その方に見せたくってこまめにケアをしていたこともありましたね。
塩入 たしかに伊藤さんの身に着けていたアイテムは状態が良いものばかりだった気がします。

必要な「無駄」
塩入 「無駄」についてもお話を聞きたいです。
伊藤 私の中で無駄というのは、ゴミになる。ただ捨ててしまう。というイメージがある一方で、一見、無駄に見えるようなものの中にも、それがあることで気分がよくなって、活力になるというものもありますね。生きていくために真っ先に必要なものでなかったとしても。
塩入 無駄にも良い悪いがあるということでしょうか。伊藤さんにはそういった無駄かどうかの問いを飛び越えて、条件反射的についやってしまうことってあるのでしょうか?
伊藤 ガチャガチャがそうですね(笑)。もともと収集グセがあるのと、子供のころと違って今は欲しいものが手に入るまで何度もやれてしまうので、どうしても欲しい「UNO」があって、一度に4,000円ぐらい使っちゃったことも。さらにその時はレアなガチャガチャだったので、上野や秋葉原などいろいろなお店へ探し回って、時間も交通費もかなりかかりました……。
塩入 これまでの話とは違う (笑)。

伊藤 塩入さんには、そういう面はないんですか?
塩入 僕は普段、ヴィーガンとしての食生活を心がけているのですが、とにかく甘いものが好きで、おやつの菓子パンだけはやめられないです。添加物の少ない自然なものをと思って、りんごとかバナナとか、蒸しパン作りもしたけれど、何だか物足りなくて……。
伊藤 塩入さんなりにバランスとっているのですね。
塩入 無理してストイックにやるのではなく、どこか気を抜くようなところも残しつつ環境問題を意識するようにしています。

「循環」する「種」のサイクル
「種」を育てていくことは、遠回りや手間になることもあるけれど、それもひっくるめて楽しむ緩い視点や、頑張りすぎないことでポジティブに続けていけるのだと思います。
時間はかかるかもしれないけれど、持続という「水」によって「種」は育ち、芽が出て花が咲けば、他者を喜ばせる「実」を結ぶ。そして最終的に自分にも還ってきます。
この連載をきっかけに「私も環境に興味があるんです」と声をかけてもらえることがあり、とてもうれしく思いました。
こうして種は循環し、また次の未来へつながっていくのでしょう。みなさんもぜひ、日々の暮らしの中にある「種」を探してみてくださいね。

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