#TOWNGUIDE#ROUTE#KICHIJOJI

より道のススメ | 東京・吉祥寺編

こだわりのテイクアウトを井の頭公園で

VOLUME.7

MARGARET HOWELL SHOP & CAFE吉祥寺で
店長を務める鈴木範子さんは、吉祥寺で働きはじめて早5年目。
お店での仕事に手応えを感じて「やったー!」と喜んだ日もあれば、
失敗してとぼとぼと帰った夜もあった。
いろいろな感情の自分を受け入れてくれたのは、同じ街で暮らす人やお店。
けれど、知っているようで知らないこの街に出会い直すような、素敵なより道を。
VOLUME.07では、鈴木さんが休憩がてら立ち寄るお店をご紹介。
こだわりと温もりのこもったテイクアウトで、すっきり気分転換しつつ、
午後への活力に繋がる吉祥寺のブレイクタイムを提案します。

Select by Noriko Suzuki (ANGLOBAL)
Photography by Natsuki Kuroda
Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

東京に住む人をはじめ、観光客の方など老若男女に愛されてきた「井の頭公園」。吉祥寺で働く私が休憩時間にリフレッシュできるお気に入りのスポットは、この公園のなかにある。広々とした敷地には動物園があったり、スワンボートの浮かぶピースフルな池があったり、たくさんの人が憩いのひと時を過ごす

池を取り囲むようにして桜の木もたくさん生えているから、満開になる季節は、お花見を楽しもうと、たくさんの人が集まってくる。東京にいくつかある公園のなかでも、井の頭公園はレジャースポットとしてのイメージが強い公園かもしれない。

けれど、私にとっては日常的に接する公園である。この街にあるMARGARET HOWELL SHOP & CAFEで働きはじめて5年が経ち、どうやってお昼休憩を過ごすか、というときにやっぱりこの公園の存在が気になった。勤務歴とともに、ここが身近な公園になっていき、自分なりに落ち着くスポットを見つけたのはとても自然な流れであった気がする。

吉祥寺の南口から公園に向かう道には、古着屋、雑貨屋、パン屋、眼鏡屋やカフェなど、さまざまなお店が軒を連ねる。より道の誘惑にかられ、ときどき立ち止まりながらも歩みを進めていけば、公園の木がもうすぐそこ、といったところに「ケーニッヒ吉祥寺店」はある。ドイツでソーセージ作りを学んだオーナーさんが営む、本格的なホットドッグが看板メニューのお店だ。 

パンを選んで、ソーセージを選ぶ。ブレッツェルの生地で作ったしっとりもちもちのラウゲンパンに、プレーンのソーセージ。この日はスタンダードなチョイスをしたい気分だった。ところで、このプチカスタマイズというか、いろんな組み合わせを試せるお店のシステムは嬉しい。次の休憩に立ち寄ったとき、違う組み合わせにすることができるから。

池にかかる橋を渡らずに、右のほうへ曲がり、木漏れ日がゆらゆらと気持ちいい道を通り過ぎる。あったかいうちにホットドッグを頬張りたい気持ちと、お気に入りのベンチに座ってまったり食べたい気持ちがせめぎ合いながらも、なんとか我慢に成功して、目の前に池が広がるベンチに腰かける。ここから見える池は、とても静かで穏やかだ。スワンポートが浮かんで水に波紋をつくっている池とはまた違った雰囲気がある。

からっと晴れた日のブレイクタイム。頬張るまえからすでに香ばしいパンの表面はサクサクとしていて、ソーセージはパリッと弾け、パンは肉厚で噛みごたえがある。きらきらと輝く葉っぱ、揺れる水面を見ながらもぐもぐしているうちに、ソーセージの旨味が重なってくると、充電開始! ケチャップ、マスタード、そしてピクルスのハーモニー。まだ飲み込んでないのに、次の一口が待ちきれない。でも焦らないように、完食。充電完了だ。

すこし時間がある日には、小学生のときからずっと大好きなさくらももこ先生のエッセイ集『ももこの詩』をひらいたり。繰り返し読んできた一冊だけど、いつ読んでもくすっと笑えて、読み終えたとき、自分も肩肘はらずに頑張ろうと思える。

さくらももこ先生が書くものには、しっかりとした芯があると常々思う。自分にとって大切なものを、自分でしっかり大切にする。どのエッセイにも、ブレないマイペースさがあるのだ。読むたびに笑顔になれて、自分が何を大切にしていけばいいかを思い出させてくれる。

そんなさくら先生のサインが飾られているお店が、吉祥寺にはある。「花見せんべい」は昭和33年(1958年)から続く煎餅屋さんで、さくら先生が煎餅屋をモチーフにしたホームドラマの脚本を書くにあたって取材に訪れたとき、このイラスト付きのサインを送ったのだそう。

もちろん、このサインだけがお煎餅を買いに来る理由ではない。おせんべいの硬い食感は気分転換にぴったりなのだ。夕方、お店での短い休憩時間にちょっとつまんで小腹を満たすこともできるし、家に持ち帰って食べてもいい。ざくざくと食べているうちに、無心になれる。お店に立つ店長の安部川さんとの会話も、楽しい。

今日は公園まで行ってまったりとできたけれど、休憩時間は、いつでもゆとりをもって過ごせるわけではない。きっと、そんな短い時間だからこその楽しみ方がある。吉祥寺にある素敵なお店でのお持ち帰りは、マイペースで食べられるのが魅力なのだ。それはたしかに、ゆっくりと、まったり食べられたらもちろんいいけれど、忙しいなかでクイックに食べることでも、幸せになれると思う。

「ケーニッヒ」のホットドッグ、「花見せんべい」のお煎餅。「味わう」には、時間がなければならないかといえば、そんなこともない気がする。時間がゆったりとれなくて、コンパクトな時間のなかで食べる休憩中の一口であっても、吉祥寺ならではのこだわりのこもった食べ物なら、いろんなものがチャージされていくだろう。実感をこめて、私はそう思うのであった。

  • ケーニッヒ 吉祥寺店

    東京都武蔵野市吉祥寺南町1−17−10

    月~木/11:0015:00
    /11:0015:00 17:0021:00
    土・日/11:0021:00

    TEL 0422-49-4186

  • 花見せんべい

    東京都武蔵野市吉祥寺南町1-1-5

    9:00〜21:00

    年中無休

    TEL 0422-43-5281

  • 鈴木範子

    アングローバル入社後からお店に立ち続けて早12年。柔らかなコミュニケーションとサービス精神旺盛な性格もあって、多くのお客様から慕われる存在に。現在は「街に愛されるお店」を目指して日々奮闘中。