#RAIN#GIRLS TALK

今日も雨だし、恋について話してみよう。

恋バナ収集ユニット・桃山商事

どこからともなく、雨の音がする朝。
また雨か、と、がっかりする人もいれば、ホッとする人もいる。
空から降りしきる水滴で、微妙に変化する服装、持ち物、コミュニケーション。
日常にささいなズレをもたらす、予想外の天気への対応策を振り返ると、
ひとりひとりが持つ価値観が、じわじわと滲んでくるかもしれない。
恋バナ収集ユニット・桃山商事の3人が、
モヤモヤしてキュンとする
雨の日の恋のエピソードを語り合います。

Illustration by Kayo Yamaguchi
Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

 恋バナ収集ユニットの桃山商事は、2001年の結成以来、1200人以上の恋愛相談を聞き、自らの恋愛エピソードをも赤裸々に語ってきた。清田隆之さん、森田雄飛さん、ワッコさんの3人は、あちこちに話題が飛ぶ雑多で楽しい恋バナをしながら、人と人の間にある細やかな機微を、キャッチーなキーワードとリズミカルな会話で浮き彫りにする。

 すると、とりとめがないように思えた出来事が、あれよあれよと人間の本質に通じていく発見があるというのが、桃山商事が続けてきた「NEO恋バナ」だ。

 梅雨の時期。たとえば、デートの予定がある日に雨が降ると、ふたりのあいだには、繊細で、ちょっとややこしいコミュニケーションが発生する。普段はあまり表現されてこなかったこだわりがぽろっと出てきてしまったり。ということで今回は、日常のなかで最も身近な「予想外」である雨をテーマに、恋について話してもらった。

 うーん、あのとき、どうすればよかっただろう? 

雨とデートの微妙な関係。

森田 友人に、「雨の時に外出するのがとにかく嫌い」という女性がいてね。デートの約束をしている日でも、雨が降っていると外に出るのが面倒くさくなって、延期・中止を申し出るらしい。

清田 あー、なんかちょっとわかるかも。

森田 ただ、付き合いたての時期だと「雨ダルいからデートやめよう」とは切り出しづらくて、いつも葛藤すると言ってた。

清田 なるほど。付き合いが長ければリスケも打診しやすいだろうけど、付き合いたてだとなかなかハードルが高そうだね……。

森田 「雨ごときを面倒くさがる人だと思われたくない」とか、「デートが楽しみじゃなかったのかな」って相手に誤解されたらどうしようとか、ぐるぐる考えてしまうらしい。何をどれぐらい面倒だと思うかって価値観が出るところだから、それで「合わない」とジャッジされるのは避けたいという気持ちもあるみたい。

ワッコ 中止にしたら「本当は他に会いたくない理由があるんじゃないか」と疑心暗鬼になってしまう人もいるかも。

清田 付き合いたてって価値観の探り合いをしてる時期だもんね。

森田 相手は、雨だろうと「会いたい会いたい!」って思ってるかもしれないし。

ワッコ 西野カナの歌詞ばりに震えてるかもしれない。徐々に「この人、本当に雨が嫌いなんだな」ってことを知らしめていけたらいいですけどね。

清田 そこをすっきりさせたら、楽になりそうだよね。

ワッコ 雨だ。じゃあ今日は家でゲームにしよ。みたいな。

目に見えない低気圧、どう受け止める?

清田 最近、SNSで「低気圧がメンタルに影響する」という話題を見かける機会が増えて、今までそれがどういうものかすら理解していなかったけど、言われてみれば自分もすこしダウン気味になることがあるなって感じていて。みんなはそのあたりどう? 気候条件で精神が上下するのはおかしいことじゃなくて、むしろ生理現象なのではないかという。

ワッコ わたしは最近になって頭痛などの症状が出るようになったんです。2年くらい前までは「それ、仕事したくない人の言い訳じゃない?」くらいに思っていたのですが、考えを改めました。

森田 俺は全然わからないんだよなあ。でも、妻にはあるみたいで、 低気圧だと体がダルくなって眠気に襲われるらしい。とはいえ、割といつも眠そうにしている人ではあるから、その変化が外からだとちょっとわかりづらいんだけど(笑)。

清田 たぶん、程度が重くなるんだろうね。

森田 自分には実感がないから、そのつらさを心の底からは理解はできないんだけど、雨とか曇りの日は妻の体調を気にするようにはなった。雨の日に「低気圧っぽいけど体調悪くない?」って聞くと、ちょっと嬉しそうな反応が返ってくる。「そうなの!」みたいな。

ワッコ 低気圧エンパシーだ。

清田 まさにエンパシー(笑)。体感ではわからないけど、知識として知っているから相手の状態を想像できる。その気遣いで、仲が深まる。それって大事かもね。理由はどうであれ、相手は実際ダルいわけなんだし 。

森田 確かに。

清田 低気圧は目に見えないし相手の気持ちの変化も目に見えない。でも、なんとなくギスギスするより、低気圧を認識して優しいつながり合いができるほうがいい。

町中華の行列で起こった悲劇。

ワッコ そもそも、付き合う前や付き合って間もない頃のデートって、何か具体的なプランありきで集まることが多いですよね。あのお店にご飯を食べに行こうとか、あの映画を見に行こうとか、目的がないと誘いづらい。

清田 一緒に何かを「する」デートだよね。だから雨の影響を受けやすく、外でがっつり楽しむつもりだった予定が台無しになってガッカリ、という展開もあれば 、無理して出かけてテンションだだ下がり、ってこともあったりで……

ワッコ そこまで仲良くない人と出かけた時に天気が崩れてグダると、謎の時空が広がっちゃいません? そういえば、最近アプリでマッチした人と、初対面で町中華に行く流れになったんですけど。

清田 話題の町中華!

ワッコ 最近、マッチした相手から町中華を提案されることが増えてますね(笑)。

森田 なんか程よい感じがするのかな……。

ワッコ  話を戻すと、その時に行ったのは人気店だったからかなり長い行列ができてたんですけど、並んでいる途中で突然豪雨にあってしまって。お互いテンションが下がって、「どうする?」「いつまで並ぶ?」みたいな変な空気になりましたね……

森田 初対面でその探り合いはなかなか厳しい。

ワッコ しかも、わたしは折りたたみ傘を持っていたのですが、相手は持ってなくて。期せずして仲良くない人と相合傘をしなくちゃいけなくなったんです。無駄に距離が接近したせいで、さらに変な空気が流れ……! そこでモヤったのが、相手の男性が私の傘をサッと奪って傘をさす側になったことで。

清田 えっ、なんで?

ワッコ 「車道側は男性が歩くべき」みたいな過去の遺物的な言説を聞いたことがあるけど、「傘は男がさすべき」っていうのもあるのかなぁと。町中華の列でずぶ濡れになりながら、考えさせられました。

森田 女性がさしてる傘に入るのはなんか違うって思ったのかな……。彼的にはよかれと思ってやったのかもしれないけど、ワッコからしたら「それ、わたしの傘ですけど」ってなるよね。あと、そもそも普段から折りたたみ傘を持ち歩くかどうか問題っていうのもある。

清田 あー。自分も傘を持ち歩きたくない勢で、いざ雨に降られると一緒にいる人の傘に入れてもらいがちなところがあるので、わりとモヤつかせている方かも……。天気予報で降るって聞いても、「今降ってなければ大丈夫じゃね?」ってウィッシュフルな考え方をついしてしまいがちで

ワッコ まさか降らないでしょって朝、ありますよね。わかります。

清田 降る気満々の空模様でもそう考えちゃったりね(笑)。でも実際にデートで雨が降ったら、相手にとっては「自分だけが傘をさすは申し訳ない」と思ってしまうだろうし、「そっちが傘を持っていれば、お互い濡れずに済むのに……」なんて思わせてしまったことも多々あったと思う。あ、でも逆に、雨の日の持ち物とか服装で、トキメキが発生するって経験も多いかもしれない。

ワッコ どういうことですか?

雨の日の服装に出る、生活感。

清田 昔、ほのかに恋愛感情を持っていた女友達がいて、一緒に映画を観に行った日に長靴を履いてきたことがあって。雨の予報だったけど、結局、雨は全然降らなかった。いい天気のなかで長靴を履いている姿を見て、なんかキュンとしてしまったんだよね(笑)。

ワッコ それ、どういうキュン?

清田 自分からすると、彼女は「一見何を考えているかわからない人」だったのね。陳腐な言い方をすれば、ミステリアスな人、というか。そういう人物像と、長靴が醸し出す日常性というか、生活感とのギャップがあったのかも。

森田 そういう時って、相手の思考が垣間見える感じもない? 「あ、この人は今日の朝、雨が降ると思って長靴を履いたんだな」とか、もちろん合ってるかどうかはわからないけど、前後の時間を想像できるというか。

ワッコ そこまで読み取られるんだと思うと、ちょっと恥ずかしい(笑)。

休日の雨に、逆に救われる。

清田 大学生とか社会人になりたてくらいの頃、土日がすごい苦手だった時期があったんだけどさ。

ワッコ ん? どういうことですか?

森田 どこに行っても人が多いから、とか?

清田 いや、なんというか、恋人はいないし、土日なのに予定もなくて一緒に過ごす人もいない。焦りというか寂しさというか、周りはきっとすごい充実した時を過ごしているのに……と暗い気持ちになることが多くて。それで土曜日の夜が苦手だったの。でも、日曜日に雨が降ると、なんか妙にホッとする感じがあったんだよね。

ワッコ それちょっとわかります。雨だと、「今日は何もしなくていい日だ」って思えるから安心してダラダラできる。少し似ているかもしれないのですが、コロナ禍で自粛期間に突入した時、「誰にも会えないし、婚活しなくても当然なんだ」って安心できたんですよね。それまではマッチングアプリに常時ログインしていて「スワイプする手を止めたら終わる!」と毎日頑張っていたけど、世界が止まったら急にメンタルが楽になった。

清田 確かにその気持ちと似てるかもね。日曜日の朝から雨が降ってると、ずっと家にいてもいいと思える。堂々と家にいられるというか。雨はそんなに好きじゃないけど、その安心感は覚えてるんだよね。何かをやらねばならない、みたいな感覚が一旦緩和されるのかな。

天気次第でいいじゃない、というおおらかな社会。

森田 雨まかせ、ってなんかちょっといいよね。おおらかな感じがする。

清田 そうだね。

森田 昔、神戸で港湾関係の仕事をしていたことがあるんだけど、港って雨で荷役作業が止まることがよくあるんだよね 。船はそこまで着いているのに、数日間何もできない……みたいなこともある。全然予定通り進まなくて大変になることも多いんだけど、最終的にはみんな「雨だから仕方ないよね」みたいな感じになる。全体に、ちょっとゆるくておおらかな空気が流れている気がした。海相手の仕事っていう要素も大きいとは思うんだけど。

清田 現代社会は間を詰めて無駄を無くして、効率化を進めてどんどん生産性を上げていきましょうって、全体的にそういう空気が蔓延している気がするんだけど、そういうなかにあって「天気次第」というのは、資本主義に対するカウンター的な発想なのかもね。

森田 最初の話に戻るけど「雨だから、デート来週にしよう」っていうのは、とても豊かなような気がしてきた。さっきは話しながら「勝手だな〜」とか思ってたんだけど(笑)。待てるというのはいいよね。

ワッコ 「晴耕雨読」的な。

清田 その言葉、そういう意味だったのか(笑)。なにかとネガティブな要素になっちゃうことも多いけど、それだけでもないんだね、雨って。

今の時代の「晴耕雨読」と、その逆。

森田 逆にさ、晴れているのを嫌がる人もいるでしょ。日差しが強すぎて無理、とか。雨だから外出が嫌っていうのはある意味共感されやすいけど、晴れが苦手な人は理解されづらくて大変かもしれない。「雨的なもの」は人によって違うよね。

ワッコ 晴れ過ぎるとメンタルにくるときってあるなー。みんな一緒に遊ぶ友達とかいるんだろうなー(涙)。みたいな気持ちになっちゃう。

清田 自分自身も紫外線をめっちゃ警戒してるし、友達には日光アレルギーの人もいた。となると、高気圧エンパシーも必要になってくるのかも……! そういえば、日傘の相合傘ってあんまりないよね。ちょっと日陰が羨ましいときってない?

ワッコ 日傘のシェアはあんまり見たことがないですよね。でも、日傘のおこぼれを頂戴しようとしてくる人いません? 混んでる信号待ちとかで。

清田  見ず知らずの人なのに、後ろからしれっと半身くらい傘に入ってきたりね(笑)。ワッコは背が高いから、 パブリック傘になってしまう瞬間も多いのか。

ワッコ そうなんですよ。公共に貢献しています(笑)。

  • 桃山商事

    清田隆之、森田雄飛、ワッコの3を中心メンバーとする恋バナ収集ユニット。2001年に結成され、「失恋ホスト」としてこれまでに1200人以上の恋愛相談に耳を傾けてきた。 著書に 『生き抜くための恋愛相談』『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』 『どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか』(ともにイースト・プレス)など。映画メディア「PINTSCOPE」で連載のほか、Podcast番組「桃山商事の恋愛よももやまばなし」 が不定期更新中。