#MAKE-UP#LIFE

メイクと暮らしのつながりを語ろう。

ヘアメイクアップアーティスト・草場妙子 ビューティライター・AYANA 対談

ビューティライターとして多様な「美」のあり方について執筆をするかたわら、
メイクアップブランドのディレクターとして企画・開発も務めるAYANAさん。
草場さんは、ヘアメイクアップアーティストとしてモデルや俳優のヘアメイクを手掛けながら、
独自の視点でピックアップしたコスメをインスタグラムで発信。
「好き」を考察し研究し、外見だけでなく気持ちまでいたわるメイクが好きなAYANAさんと、
職人が道具について語るようにコスメと向き合う草場さんが、
暮らしに細やかな変化をもたらすメイクについて、とまらないおしゃべり。

Photography by Yuri Manabe
Edit by Megumi Koyama (kontakt)

シートマスクは365日楽しめるアトラクション。

AYANA 草場さんはシートマスクはしますか?

草場 しますよ。でも、塗るタイプのマスクを使うほうが多いかなあ。シートマスクは旅行に行くときには必ず持っていきます。ホテルや旅館は乾燥しやすいので、しっかり保湿したい。眠る前や時間があったら朝に使ったりしています。

AYANA やっぱりマスクは「保湿力が高いもの」?

草場 うーん、保湿感だけでなくてスペシャルなものですよね。

AYANA そうなの、イベントですよね。気合が入るし贅沢をしている気分になる。使い切りだというのもあるし、袋を開けて、シートを広げて、顔に乗せて……とプロセスが多いのも非日常を演出する効果があるのかもしれません。特別な日、たとえばデートがある日の前日にパックをする、という使い方が一般的かもしれませんが、私は毎日欠かせなくて。家にあるマスクを数えたら、絶対に365枚以上あります。

AYANAさんのお気に入り。画面左下から時計回りに、シートマスク、クレンジング、アイシャドウ。肌をいたわり、目元を彩り、さらにメイクを落とすプロセスは暮らしの中のちょっとしたふるまいに気づく瞬間。自分自身の満足感も高まっていくのがAYANAさんの好むポイント。

草場さんが日常で愛用しているものたち。画面左から、リップローション、下地、ネイル。唇の状態を整えるローションや、隠蔽力ではなく肌の凹凸をフラットにしてくれる下地、ベースコートやトップコートなど「ベース」を整えることを大切にする草場さんのスタイルが垣間見える。

草場 AYANAさんは、たくさんのマスクのなかから、今日使うひとつをどのように選んでいるんですか?

AYANA やっぱり気分ですよね。映画を選ぶのと似ているかもしれません。今日はNetflixで何を見ようかなあ、というのと同じように選ぶんですよね。

草場 最近はこの監督に凝ってるから、この系列で攻めてみようとか?

AYANA  まさにそう。もちろん、その日の肌の状態にとって、いい効果・効能で選ぶこともあります。シートの素材やフィット感、浸された美容液もクリアでみずみずしいものから、とろみのある乳液があったり、質感にバリエーションがある。使い心地をあれこれ体験するのが楽しいんですよね。アトラクションみたいなものです。

色を楽しむアイシャドウの「似合わせ方」。

AYANA 私はアイシャドウがとても好き。たとえば、リップとかチークは血色感を補うパーツでもあるので、ブルー系はあまりないですよね。唇は、ものも食べるし、つけている人の感覚としても日常の行為に関わってくるから選び方がシビア。大粒のラメが入っているとジャリジャリしてしまって、日常には向かないかもしれない。

だけど、目元はどんな色をつかってもオーケー。質感も自由に楽しめる。私は貪欲なのか、いろいろな色を試してみたいタイプです。似合いにくい色だって、使ってみたい。たとえば、カーキは苦手だったけど試してみたかった。そのとき、好きな色と組み合わせてみたら、馴染んだことがあって。

草場 そのお話、すごく素敵。似合わないから、と決めつけてしまわずに、「似合わせ方」を探すのが楽しいし、大事なんですよね。

AYANA  私が頼りにしているのは、「osaji(オサジ)」の〈Kakushin(核心)〉。なかなか濃い色に見えますが、ブラシで伸ばしたり、指でのせるとふんわり色づいてくれる。こういうアイテムがひとつあると、それと組み合わせることで、いろんな色を自分にフィットさせられる。あと、プロダクトとしてもアイシャドウはすごく好き。並んでいる色の組み合わせやケースのデザインが可愛くて。

草場 すごくわかります。ビューティのプロダクトは、見た目も使い心地も「微差」が楽しい。小さな差異にくすぐられます。似たような色相に思えても、やっぱり違うし、自分との相性もある。私はベージュのリップをものすごくたくさん持っています(笑)。

アイシャドウは、ブランドによって「この色はぜひこういうふうに使ってください」という提案があって、使う順番や部位も細かく教えてくれます。それは決して唯一の正解ではないし似合わせは自分なりに見つけていくことになるけれど、作り手側の提案を紐解く楽しさがありますよね。

AYANA そうそう。集めれば集めるほど、「微差」が分かるようになるのも収集欲を刺激する。パレットの色合わせは、なぜこの4色にしたのか? という狙いや世界観の提案がブランドごとにあるはずで、それを読み解いたり、想像するのが面白いですよね。もちろん、見た目だけではわからないんですよ。使ってみることによって、なるほど、だからこの色なんだ! この組み合わせなのか! と気づきがある。

ネイルは雰囲気をつくる、小さなキャンバス。

草場 私はネイルが好きです。仕事柄、足にしか塗らないのですがosajiの洞窟という色が特に気に入っています。カジュアルなサンダルがちょっと大人っぽく仕上がるんです。顔ほど、似合う似合わないというジャッジをしなくてもいいから、面白い色でもトライしやすいのもネイルの気軽さだと感じています。

AYANA たしかにそうですね。

草場 あと、私はネイルを塗る所作が好きなんですよね。どうしても毎日を過ごしていると、剥げてしまったり落ちてしまうけれど、それが自分自身の所作を気にするきっかけになったり。それもいいなと思っています。

1日の終わりに達成感をもたらすクレンジング。

AYANA 俯瞰して考えてみると、私は「選ぶ」「組み合わせる」ってこと自体を楽しんでいるのかも。気分や肌の状態に耳を澄ませて、アレンジをしていくのが好きなんでしょうね。メイクをオフするクレンジングにも、いろんなテクスチャーがあります。落とす力や、肌が受ける感覚、香りも全然違うので、気分やその日のメイクの濃さによって選んでいます。

草場 クレンジングは私もたくさん常備しています。私の場合、自分がメイクを濃いめにすることはあまりないので、どちらかというとクレンジング力はマイルドなものが多い。なので、肌の状態を見て、肌にあまり負担かけたくないときはミルク。日焼け止めをしっかり落としたいときはジェルオイルとか。

AYANA 肌には着いてしまった汚れを自ら落とす力はないから、こちらから落としてあげないと綺麗にならない。それは飼い主の責任です(笑)。ゴシゴシやっちゃうと摩擦になるし、でも、しっかりメイクをしているのに肌をいたわって洗浄力が優しいものにしてしまうと、落ちきれないまま汚れが酸化してよくない。

今私が気に入っているのはセラリーのクリームタイプですね。顔に伸ばして馴染ませていると、「転相」と言うのですが、だんだんテクスチャーが軽くなってきてオイル化する。この転相が起きたら洗い流していいというサインなんですけど、指先で変わっていく感覚が面白い。メイク落としは面倒なことではあるんですけど、軽くなったときの快感がクセになる。落としてあげている、肌をいたわっている感覚を得られるんですよね。

AYANAさんが転相にハマった、クリームタイプのクレンジング。

草場 メイクは大好きだけど、落としたときの爽快感ってたまらないですよね。あの「ハーっ! 落とした!」みたいな清々しい気持ちになる。クレンジングをした後の気持ちってすごく好きです。何度もやっているのに、毎日ハッ! ってなります(笑)。

AYANA お皿洗いと一緒で、手間な作業ではあるけれど、達成感がありますよね。何かを脱ぎ捨てるというか。一日の終わりっていうのがポイントなのかな。疲れも一緒に落としてくれている。

飾るだけではなく、整えるアプローチ。

草場 リップケアでも、私は落とすというかゼロにする、清潔にする、という一手間を大事にしているかもしれません。メイクやスキンケアって、その人を「綺麗」にしていくことだと思いますが、「綺麗」には「清潔にする」という意味も含まれていると思うんです。

そういう意味で、唇は、食事をしたり唾液がつくところでもあるから、一回綺麗にして、口紅やリップクリームを塗るっていう過程を大切にしています。リップローションをティッシュに取って、まず唇をくるくると拭き取ると、剥がれかけている薄い角質などが自然にスッと取れる。唇そのものを保湿して整えてあげることで、リップの質感が綺麗に出るんですよね。がさっとしたまま油分の高いリップクリームを塗ると、馴染ませるのに時間かかるので。

AYANA スキンケアと一緒ですね。いきなりクリームは塗りませんよね。まず清潔に、素材を整えてあげる。草場さんらしいお話だと思います。

草場 日常のメイクは、クリーンにする、チューニングするっていうのを心がけているかもしれません。着飾っていくのではなく、前提のところにひと工夫をかけてあげるというか。

トレンドではなくマイブームに寄り添うメイク。

AYANA メイクは、結果だけでなくて、組み合わせを研究しているときに新しい発見があるから楽しいんですよね。アイシャドウなら、アイラインやマスカラとの組み合わせとか。昔はアイライナーやマスカラは黒だけだったけれど、今では色々なカラーがある。アイライナーひとつとっても、リキッドタイプやペンシルタイプとか。それをどう組み合わせていくのか、意外な組み合わせを見つけた時にテンションが上がるんです。

草場 私も夜な夜な、メイクを試しています。AYANAさんは「選ぶ」ということがとても好きなんですね。私も、多様な選択肢に喜びを感じるのにはすごく共感します。

AYANA 私はメイクに限らずですが、いつも、自分のなかの流行の最先端を探している気がします。ある時期はすごく盛り上がっていたのに、急に気分が落ち着いちゃうことがある。そうしたら、次のマイブームに移り変わっていくんですよね。

草場 わかります! この仕事をしていると「トレンドは何か」とよく聞かれるのですが、実は、そこはあまり意識していない。私は化粧品が好きだから毎シーズンチェックしているし、そのシーズンに出ているものを選べば自然とトレンドに重なることもありますが、自分視点のマイブームで、惹かれるものを選んでいます。仕事で、いろんな方々にメイクをしているときに、最近このメイクをよくやっているなあ、と気づくこともありますね。私、今これ気になっているんだ、と自己分析したり。

AYANA 私はアートブックや海外誌など、作り込まれたビジュアルに刺激されることが多いかな。こういう顔がいい、こういうメイクがいい、と感じたら、なぜそれが気になっているのかを考える。メイクだけでなく、ファッションやアティチュードも含んだ全体像だったりもします。

草場 そうなんですね。私は実は、こういうムード、こういうビジュアルの世界観、というよりは、プロダクトありきで発想するタイプなんです。メイクアップアーティストでは珍しいかもしれません(笑)。アイシャドウであれば、どのくらいの面積で使うと映えるのか、濃さはどれくらいが良いのかを研究する。その微調整で、どうこの人に似合わせていくのか、という意識が強い。

AYANA  草場さんはつくづく職人気質ですよね。

  • AYANA

    ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業に携わるかたわら、スキンケアブランド「osaji(オサジ)」のメイクアップコレクションのディレクターを務める。初の著書である『「美しい」のものさし』では、人、外見、趣味、時間、コンプレックスという5つの章を通して多角的に「美」を綴る。

  • 草場妙子

    ヘアメイクアップアーティスト。熊本出身。サロンワークに携わりながらヘアメイクを目指すように。上京後アシスタントを経て、2006年に独立。雑誌や広告、CMなどでモデルや俳優のヘアメイクを手がける。著書に『TODAY'S MAKE-UP 今日のメイクは?』を刊行。ルーティーンになりがちな毎日のメイクを、ファッションや気分に合わせて自分で選ぶためのアイデアを提案している。