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THE WORKING−仕事

音楽を作る オノ セイゲン(音楽家・レコーディング・ミキシング・マスタリングエンジニア)PART.2

VOLUME.3

ほぼ全ての人が仕事をする。
理由やその形はさまざまだけれど、それは生きる上でとても大切なことのひとつ。
時代とともに変化する仕事について知ることは、
今とその先のいろいろなことを“考える”きっかけになるかもしれない。
何か特別なことではなくて、さまざまな人たちの生業について見聞きしたいと思う。
知らない土地を旅するように。全2回のインタビュー、PART2。

Interview & Edit by Moe Nishiyama(kontakt)
Photo by Victor Leclercq (kontakt)

作曲家、レコーディング・ミキシング・マスタリングエンジニアとして音楽にまつわるあらゆる仕事をこなすオノ セイゲンにとって“音”はどんな存在なのだろう。料理やスイミングといった習慣然り、日常の記憶や体験が強く楽曲作りに影響しているという彼の休日の“音”との付き合い方について伺ってみた。

―――お仕事以外の時間では音楽とは距離を置いているのでしょうか。たとえば音楽家の方の中には沈黙を好まれる人もいるかと思うのですが。

オノ その日のスタジオでの音楽から離れるためにも近所に出かけます。プライベートではYouTubeやSNSをスマホやパソコンで見ていますね。あとは映画館やBlu-rayで映画を観たり、沈黙の部屋にはいないですね(笑)

―――YouTubeなども見られているのですね!ちなみによくチェックされるチャンネルなどもあるのでしょうか。

オノ レコードでも残っていない貴重なライブや、海外の70年代や80年代の放送番組を見つけるのが好きです。YouTube はタイムマシンのようで、世界中で星の数ほどあるように見えるラジオ局を繋いでいるウェブサイト、インターネット放送局の Radio Garden はもはやバーチャル海外旅行ですね。西アフリカ、南米もいいけど、中東もわけわかんなくて面白い。

Radio Garden

http://radio.garden

―――YouTubeだと音質が良くないものもあると思うのですが、ご自宅でもスピーカーや機材を揃えられているのでしょうか。

オノ 仰る通りYouTubeそのままだと音質が良くないので、以前はパソコンの出力に音質などを調整するGMLというイコライザーを使用して聞いていました。ただ、こんなに面白いYouTubeを自分だけがいい音で楽しんでいるのはもったいない。「Nu I」を使えば、オーディオや音楽が好きな人が誰でもこのスタジオのクオリティで楽しめるように、僕のマスタリングのプリセットをパソコンのOSに組み込めるドライバーを開発しました。

―――――「Nu I」とは何でしょうか?

オノ 「Nu I」はシンセサイザーやキーボードで有名なKORG初のオーディオ製品なのですが、評論家やミュージシャン、エンジニアでさえも本当にまだ誰も知らないんです(笑)。ノウハウ自体はスポンサーさえついてくれればスマホ用にAI化したいと思っているのですが、一度聴いてもらうとこれYouTubeなの!?ってみんなびっくりします。KORGの社長プレゼンの場で海外勤務の社員さんがアレサ・フランクリンで感動して泣いちゃった。他の方はうちのスタジオでも。要するに、人は高性能の機材で録音したから感動するわけではないんです。音質は後から調整できるのですが、内容は後からどうこうできるものではない。スペックと内容のどちらが大事って、絶対に内容でしょ。

Nu I

https://www.korg.com/jp/products/audio/nu_1/

「Nu I」はシンセサイザーやキーボードで有名なKORG初のオーディオ製品。今までにない音質を体験できる。

―――スペックよりも内容、本質的なお話ですね。

オノ それはそうです。音楽の演奏や曲がよくないものをどんなに高いカメラや高性能のマイクで録音録画をしたところで誰も感動しない。なぜ録音するのか?ミュージシャンなら曲ができたから誰かに聞かせたい。あるいは自分の演奏を自分でも聴いてみたいから録音するんです。では何を録音するのか?極端な話、1曲だけでもいいんですよ。100人中90人に気に入られる流行りのスタイルを追求するような、すでにみんながやっている曲作りをしても意味がない。本当に届けたいと思う1曲を作って100人に1人でもついてきてくれれば、それは世界中から確かな需要と信頼があるということです。教えたくないお気に入りの店みたいな感じかな?この辺だとAzuurra、Kogane、ビーガンならTwiggy Cafe、話がそれちゃいましたが。食べ物も同じ理由でね、このお店のこれが好き、内容が良ければスペックもお客さんもついてくる。

―――ここで食べ物と音楽がつながるのですね。

オノ 「食べ物」も「音や音楽」も目には見えないですね。食べ物も音楽も本当に好きなものを確かめるには自分で体験してみるしかない。インスタやSNSで情報をシェアして満足する人も多いですが、それは本当に自分が好きなものを見つけたのとは別物だと思うんです。

―――なるほど。オノさんにとって本当に好きなものも曲の随所に?

オノ 僕の場合分かりやすいのですが「アンチョビパスタ」という曲を作っていて。アホですよね。好きなんですよ(笑)

思い返してみれば自分のアルバム『バー・デル・マタトイオ(屠殺場酒場)』とか、今年はフェデリコ・フェリーニ生誕100周年ですが、彼の映像作品同様、自分が好きなもののオマージュになってるとも言えますね。

―――最後に、多岐にわたる音楽のお仕事に関わるオノさんにとって「仕事をする」上で大切にされていることがあれば教えてください。

オノ デジタルアプリを扱えればデザイナーになれるわけではないし、テクニックがあるライターの文章でも心から伝えたい内容がなければ響かない。僕は作曲家/アーティストとしてはアマチュアですが、一流のシェフと食材の関係のように素材の味を最高に引き出すわざと言いますか、「音の録音技術」を知っています。つまり単なる音をリスナーに、無意識のうちにも「伝わる音」にする技術です。これを知らないよりは知ってる方が完成度はより高く、ゴールへの近道です。それ以前に美味しい音や音楽に気がつけるのか、感じられているのか、そういう感受性や経験を大切にしていきたいですね。 

オノ セイゲンさんの作品はお近くのレコードショップでお求めください。
入手が難しい場合は下記のオンラインストアでもお求めいただけます(サイン入りも可)。

(左上)COMME des GARÇONS SEIGEN ONO (CD/SACD) ¥ 4,400(二枚組)
COMME des GARÇONS SEIGEN ONO (RECORD) ¥ 6,380(二枚組)
(右上)CDG Fragmentation / Seigen Ono (CD/SACD) ¥ 3,520
(左下)CDG Fragmentation / Seigen Ono (RECORD) ¥ 4,400
(右下)MEMORIES OF PRIMITIVE MAN / Seigen Ono and Pearl Alexander (CD/SACD) ¥ 3,300

  • オノ セイゲン

    作曲家/アーティストとして1984年にJVCよりデビュー。87年に日本人として始めてヴァージンUKと契約。87年「サイデラ・レコード」、96年「サイデラ・マスタリング」設立。VRなどの音響技術の共同開発、音響空間デザインやコンサルティングなど、音を軸とした多様な仕事を手がける他、サイデラ・マスタリングではコンサートホールのような響きでライブストリーミングと同時にハイレゾ録音を残せるサービスを展開中。2019年度ADCグランプリ受賞。

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