VOLUME.2 初級編〜丁寧に美味しく淹れてみる〜 美味しい紅茶の裏街道
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おいしい紅茶の裏街道

VOLUME.2 初級編〜丁寧に美味しく淹れてみる〜

VOLUME.2

ほっと一息つきたいとき、何気なく口にした一杯のお茶の味が忘れられないことがある。
お店で飲む高級な紅茶もいいけれど、家でも自分流で楽しんでみたい。
”まず試してみる”を合言葉に、日々研究を重ねるアングローバル随一の紅茶通、三邉貴男さんによる連載企画「おいしい紅茶の裏街道」。


紅茶の味は淹れ方によって変わるのか?
初級編では、さまざまな淹れ方で味の違いを検証。
ティーブレンダーとして活躍される熊崎俊太郎さんにアドバイザーとしてご登場いただき、一番おいしいと思う淹れ方を検証します。

Photography by Aya Kishimoto
Illustration by Masaki Takahashi
Edit by Moe Nishiyama

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本日使う紅茶はこちら

「色の変化がわかりやすい紅茶」ということで三邉さんがセレクトしたのは、キャッチーな円形のティーバッグで紅茶大国イギリスでも大人気の「タイフーティー」。今回はこちらを使い、淹れ方による味や色の変化を検証していきます。

検証1:水の種類を変えてみる〜軟水と硬水〜

紅茶を淹れるとき、欠かせないのが茶葉と相性の良い“水”。まずは、紅茶にとって適切な水は軟水なのか硬水なのかを検証していきます。

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左が軟水 / 右が硬水

三邉 「ふだん茶葉の種類で味を比べることはあっても、水の種類で紅茶の味を比べたことはなかったので新鮮です。水温や蒸らし時間など条件は揃えた上で比べてみましょう。左が軟水で右が硬水です。お!想像以上に水の色が変わりましたね。驚きです。硬水の方が少し濁っている気がします。味に違いは出るのでしょうか?」

熊崎 「紅茶を淹れるとき、軟水では色が薄く成分は早く溶け出すのでエグ味や渋味も出やすくなり、逆に硬水では色が濃く成分はゆっくりと出るので穏やかな風味になる、というのが一般論です。

実はタイフーティーの場合、ベストなのは“水道水”だったりします。三邉さんは今回、一般的に販売されている“軟水”(硬度30弱の製品)と、 “硬水”(硬度300強の製品)を使ったので、軟水の紅茶(左)はやや苦みが出て水っぽくなり、硬水の紅茶(右)は味に重みはあってもミネラルと紅茶の成分が結合してドロッと濁った雑味が出てしまいました…つまり、この中間の硬度が適していたわけですね。とても良い実験になったと思います。そして日本の水は基本的に軟水ですが、水道水の硬度は(地域や季節による差はありますが)50前後が多く、さらに首都圏は硬度が75前後あるので、十分美味しくいただけるのです」

※ 軟水・硬水の定義は、国や国際機関によって若干異なります。

検証2:ポットを変えてみる〜ガラス・セラミック・ステンレス〜

ガラスにセラミックにステンレス。形はもちろん、素材からデザインまでバリエーションもさまざまなティーポット。道具によって味は変わるのか?三邉さんが愛用する3種類のポットで検証してみます。

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左からガラス・セラミック・ステンレスのポット

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三邉 「普段からよく使うのはセラミックのティーポットで、イギリスでティーポットといえばこれ、という歴史ある定番です。他にもさまざまな素材、デザインがあるけれど、実際のところ道具で味に違いが出るのかは未知ですね。うん、淹れてみた感想としては、ほぼ差はなさそう。自分の好きなデザインのポットを使うのが良い!ということではないでしょうか」

熊崎 「さすがですね。おっしゃる通りなのですが、厳密にいうと“準備や手順をきちんとすれば”ポットの違いは関係なく、ほぼ同じ味になります。ガラスは保温力が低いので抽出中にお湯の温度が下がりやすい、ステンレスはお湯の温度が下がらない代わりに過剰な抽出になる可能性があるなど、素材の性質によって差はあるので、手順をラフにすると、差が出てしまうんです。そのとき、おそらくステンレスは喉にどろっと重く歯にキンキンする味に、ガラスは軽くて水っぽくエグ味や雑味が喉に残る味に、テラコッタはまろやかでありつつも捉え所のないぼんやりした味になると思います。ポットを選ぶ基準としては、真横から見て輪郭の中に正方形がおさまるようなイメージで、ある程度、底面積と高さ、まとまった空間があるものだと茶葉が開きやすいのでおすすめです」

検証3:蒸らし時間を変えてみる〜1分・3分・5分〜

料理本のキホンにもよく出てくる、“蒸らし時間“。紅茶を淹れるとき、どれくらいの間蒸らしておくのが正解なのでしょうか?

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上から1分、3分、5

三邉 「上から1分間、3分間、5分間で蒸らし時間を変えて淹れていきます。それぞれどれも紅茶らしい色ではありますが、1分は流石に薄すぎる、美味しいところが抽出されていないかな。5分は濃すぎるので、3分〜5分、ストレートで楽しむには2分〜4分の間がベストだと思います。熊崎さんどうでしょうか?」

熊崎 「はい。私もそう思います。三邉さん、蒸らしの過程で紅茶の味わいが変化しているのを感じとっていますね? 蒸らしはじめると、まず紅茶の色があらわれます。その後、香りの一部と味が溶け出してくる。そして最後に、茶葉のもつ香りの本体が現れます。一般に、日本で紅茶が淹れにくいといわれてしまうのは、色が出たところで大体の人がティーバッグや茶葉を取り出してしまうからなのです。そうすると紅茶ではなくて“色付きのお湯”を飲むことになってしまう。少し我慢してもらえれば、色と、香り少々と味が出る。さらにそのままじーっと我慢して待ってみると素晴らしくいい香りを楽しめるんですけれど、残念ながらそこにいくまでの間に日本の軟水では渋味やエグ味がかなり出てしまうので、あえてその手前ギリギリまで引っ張る見極めがポイントになります。そこにお砂糖を、甘さがわからないくらいちょっと入れてあげる、もしくはミルクをほんの少し入れてあげると、より豊かな香りと引き換えに少しだけ出てきてしまった渋味も抑えられて、とても美味しく飲むことができるので、ぜひ試してみてください」

次回のVOLUME.3では初級編で検証した淹れ方を元に、紅茶の定番、ミルクティーとレモンティーの作り方を検証。ご家庭でできる美味しいレシピもご紹介します。

*味覚には個人差がありますので、あくまでも参考としてお楽しみください。

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  • 三邉貴男

    飲食業界約20年超のベテランで、マーガレット・ハウエル ショップ&カフェでは6年生。音楽・文学・植物からUFO研究まで、興味関心は今なお広がり続け、ゆくゆくは都会を離れ、妻と温室で植物を育てながら、老後のために取っておいた本を片っ端から読み漁る日々を理想としている。

  • 熊崎俊太郎

    フィーユ・ブルー ティーブレンダー / ティー・コーディネーター / 日本紅茶協会認定ティーインストラクター

    日本の紅茶界を代表する紅茶専門家。幼少期より紅茶、カフェ文化に興味を持ち、学生時代より喫茶ビジネスの道に飛び込み、紅茶専門店〜紅茶輸入商社勤務を経て独立。カルチャーサロン、大学の講師や、紅茶文化に関する講演活動のかたわら、カフェ、レストラン、ホテルのティールームのコンサルティングやオリジナルティーのブレンド開発、商品企画を数多く手掛けている。