ありのままのナチュラルワイン より道のススメ|福岡編
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より道のススメ | 福岡編

ありのままのナチュラルワイン

VOLUME.1

世界中のさまざまなカルチャーが交わる福岡のセレクトショップDice&Diceで店長を務める藤雄紀さん。
このエリアを一緒に盛り上げていこうと、地域との繋がりを大切にしてきました。
個性的なキャラクターの先輩に教えてもらった穴場のお店から、初めて福岡を訪れる方にお勧めしたい名店まで、
藤さんが愛してやまないより道スポットを紹介していきます。

Select and text by Yuki To (ANGLOBAL)
Edit by Yoshikatsu Yamato(kontakt)

日常のふとした瞬間、良いワインを飲みたいな、というときに思いつくのが今回紹介するお店「魔灯路場amber(マホロバアンバー)」だ。マスターの長谷川弥来さんによって選び抜かれた極上のナチュラルワインが飲めるバーでは、酸化防止剤等の添加物をほとんど使用しない「ナチュラルワイン」がいただける。とても繊細で、提供の方法によって大きく味が変化することでも知られるそのワインを、「日本一綺麗に出す」との呼び声高いマスターの弥来さんに、本来の味を提供するためにこだわりについて伺った。

長谷川弥来さん まず、ワイングラスの素材が重要で、うちはカリクリスタルという素材のグラスを使っています。

藤雄紀 どういった素材なんですか?

長谷川 混ぜもののほとんど入っていない純粋なガラスです。一般によく聞く「クリスタル」は鉄を混ぜることで光沢を出し、加工しやすくしています。しかし、その鉄が曲者で、しっかりと酸化防止剤入りのワインならその鉄に触れても影響はさほど出ないのですが、酸化防止剤がほとんど入っていないナチュラルワインは、鉄に触れると変化してしまいます。

 重要なのは素材なんですね。きれいな形や薄さに目が行きがちでしたが。

長谷川 もちろんフォルムも重要で、メインで使っている二種類のグラスどちらとも丸いフォルムのものを使っています。

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 形には何か意味があるんですか?

長谷川 そうですね。角ばったフォルムのワイングラスは感覚的に角ばった味になります。それが合うワインもありますが、うちは丸いフォルムのものを選んでいます。丸いフォルムだと液体の流動性が高いので、ワインの味を存分に引き立ててくれます。しかし、同時に雑味も際立つので注意が必要です。

 なるほど。洗うのはとても気を使いそうです。デリケートでしょうし。

長谷川 とても割れやすくて、なかなかに高価。というのも、カリクリスタルのグラスは機械で作れないので基本的に職人の手作りなんですよ。もちろん慎重に扱いますが、たまに割ってしまうこともあって、ものすごく落ち込みます。

 ですよね……。

長谷川 それと、洗い方にもうちなりのルールがありまして。まず、ワイングラスに触れるまえには必ず手を洗ってアルコール消毒をします。洗剤はケミカルなものが一切入っていない、そのまま放置すれば水に還元されてしまうものを選び、ワイングラスを拭く布は煮沸のみで消毒して、あえて使い捨てにしています。

 すごく徹底されていますね。

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長谷川 ワインは液体なので、どうしてもグラスが必要です。できるなら直飲みしたいぐらいですがそうはいきません。でも、なるべくワイン本来の魅力をダイレクトに感じてもらいたい。そういう思いから、カリクリスタルのグラスを選び、とことんナチュラルな状態に保てるよう心掛けています。

僕はワインを注文した。グラスに丁寧に注がれていくのは、スペインのメンダールでつくられる「コル・デル・ニーニョ 2015」。ガルナッチャという品種のぶどう100%で、「アンフォラ」と呼ばれる陶器の壺で発酵と熟成をさせて出来上がったワイン。酸化防止剤を一切使用していないナチュラルな一本だ。

少し口にふくむ。ワインの魅力をありのままにお客さんに提供するための真剣なこだわりを聞かせてもらってから飲んだ一口には、いつもとは少し違った、より深い風味があるように感じるのだった。

魔灯路場amberは、とにかく居心地が良い。初めて来たときには、奥まったところにある入り口と暗い店内にすこし緊張した。でもすぐに、ユウヤさんの人柄でリラックスすることができた。こだわりに満ちて、ムードもあるお店だけれど敷居は高く感じない。お客さんはみんなリラックスして会話を楽しんでいる。マスターである弥来さんと、スタッフのユウヤさんのコンビネーションが最高なのだ。

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左:マスターの弥来さん  右:スタッフのユウヤさん

比較的物静かな印象のマスターの弥来さんは、ワインの話になると途端に饒舌になり、ワインの生産者の話をまるで地元の友達の事を紹介するよう話してくれる。ワイングラスの扱いについても、ここに書ききれなかった細かい工程まで教えてくれた。一方、スタッフのユウヤさんはおしゃべりで、関西訛りの面白いお兄ちゃんという印象。この二人のやり取りが絶妙で、ついつい楽しくなって長居してしまう。

今日も深夜だというのに客足が途絶えない。聞くと、一旦落ち着いたお店も遅い時間になるとまたひと賑わいあるらしい。みんなが集まってくる。心地良い空間と極上のワインを求めて。

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  • 藤雄紀

    22歳でダイスアンドダイスに入社。個性的な先輩たちに揉まれて20代を過ごし、現在は頼れる店長としてスタッフから慕われる存在に。趣味はサーフィンと読書で、友人と文芸同人誌を自費出版し、福岡の文学系イベントで販売も行う。また最近キャンプを始め、多方面に手を伸ばしながら才能花開くフィールドを模索している。

  • 魔灯路場 amber(マホロバアンバー)

    福岡県福岡市中央区大手門1-8-15 ロマンビル 1F

    地下鉄「大濠駅」5番出口から徒歩5

    19:00〜翌3:00

    不定休

    TEL 092-286-8672