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おいしい紅茶の裏街道

VOLUME.4 中級編〜道具を知る〜

VOLUME.4

”まず試してみる”を合言葉に、日々研究を重ねるアングローバル随一の紅茶通、三邉貴男さんによる連載企画「おいしい紅茶の裏街道」。
今回は、美味しい紅茶を飲むために材料や淹れ方と同じくらい大切な道具について。
三邉さんが普段から愛用している道具の数々をご紹介。
ティーブレンダーとして活躍される熊崎俊太郎さんにもご登場いただき、知ると紅茶がもっとおいしくなる道具の選び方についてお話しいただきました。

Photography by Aya Kishimoto
Illustration by Masaki Takahashi
Edit by Runa Anzai (kontakt)

1. 大切に保存する

三邉 「最初に紹介したいのが、茶箱です。買ったばかりのお茶は密封状態のまま、香りの強いもの以外はここに入れています。紅茶だけでなく、これから新茶の季節になったら鹿児島や静岡からの緑茶がどんどんストックされていく。緑茶は紅茶よりセンシティブ、野菜と近い印象を持っているので、このように冷暗所に保管するようにしています」

三邉 「こちらは、茶筒に見えますが、本来はコーヒー用のもの。普通の茶筒は中蓋が固定されていると思いますが、これは中蓋が落ちるので、茶葉が減っても空気の隙間を作らず密封できるので紅茶の酸化を防いでくれます。ここに脱酸素剤を入れて保存しています」

熊崎 「美味しい紅茶と暮らすための一番大切な知識、実は“保管”なんです。茶葉は、空気、湿気、直射光、他のにおい、急な温度差などが劣化の原因ですから、昔ながらの知恵で作られ保存に向いた茶箱を活用している三邉さんはさすがです。

存在感のある茶箱や茶筒は、近年インテリアとしても再評価されています。これらの保存容器をはじめ、紅茶に関する道具はさまざまですが、淹れるときには、お湯を沸かす⇒茶葉を量る⇒蒸らす⇒漉す⇒注ぐ、という動作の流れに沿って道具を並べておくと作業がスムーズです。しっかり準備しておくと手順の合間に余裕が生まれ、微妙な部分にも注意力がはたらくので、結果として自然と美味しく淹れることができるようになりますよ」

2. おいしく淹れる

三邉 「ポットを使ったりティーバッグを使ったり、紅茶の淹れ方はさまざまですが、最近特に使っているのが、一番左のフレンチプレスです。これ、とっても便利で、真ん中より少し上にあるシルバーの部分が一杯分の目安になっているんです。お湯を量る手間が省けるので自分のために一杯分だけ淹れたい時に重宝しています。

真ん中のステンレスケトルは、柳宗理さんデザインのもの。底が広いから早く沸いてくれるので、一気にたくさんお湯を沸かしたい時はこれを使っています。

最後に、一番右のポットは、以前蚤の市でみつけてきたもので、イギリスのおばあちゃんがずっと使っていたものだと聞きました。英国ピコーウェアのコーヒーポットです。見たところアルミ製に見えますが、マグネシウムも含まれているので質感が独特で気に入っています。これは3~4杯淹れる時に使っています」

熊崎 「三邉さんご愛用のカップには、フレンチプレスの一杯分がちょうど良いのですね。紅茶を飲む時にお気に入りのカップがある方は、そのカップの分量に合わせてガラスサーバーやポットを選んでみるのもおすすめです。目安になるパーツが無ければ、サーバーの取手の外に油性マジックで外側にさりげなく自分にぴったりの量の印をつけておくとより便利ですよ」

3. 細かいところも丁寧に

三邉 「こういう細々した道具も、美味しい紅茶を淹れる為にはとても大切です。電子はかり、茶葉や湯を正確に量る為に。茶こしは新潟の金物の街、燕三条のもの。マドラーは、茶さじに使ったり、ミルクを混ぜたりするのに便利です。刃の短いナイフは手元の細かい作業の際に使い勝手が良いため、前回ご紹介したようにレモンティーのレモンをカットするときなんかに使います。木のスプーンは、茶葉をすくうだけでなく、マドラーとしても使っています。木のヘラはマドラーとして、茶こしと同じく何本か常備しています。こうして気に入って使っている道具を並べてみると、どれも年季が入っていくほど愛着が湧いてくるので、自然と手入れをするようになります」

熊崎 「茶こしに関して少し補足すると、茶こしには一重織り、二重織り、そしてタタミ織りの3種類があり、茶葉の種類によって使い分けるのがおすすめです。

例えば、煮出しミルクティーを漉す場合は、目の粗い一重。普通のリーフティーや日本茶を漉すときは写真のような二重のもの。それから、ごく細かい茶葉の場合はタタミ織りがベスト。微粉まで綺麗に漉せるので、少し時間が経ってもクリアな味が楽しめます。是非試してみてください」

※これ以外に大きな穴のたくさん開いた古典的な茶こしがありますが、現代の一般的な茶葉にはあまり向きません。

4. 味を見極める

三邉 「このポットとカップは台湾の茶業試験場に見学に行った際に、台湾の茶商さんにお願いして何セットか用意してもらったものです。これは『鑑定杯(テイスティングカップ)』といって、お茶のプロの方がその年にできたお茶の品質を鑑定するために使う世界標準の道具です。

僕がこれを使う時は茶葉の量、湯量、蒸らし時間といった条件を全く同じにして、買ってきた紅茶を試してみる時に使っています。基準を設定することで、その紅茶が自分好みかどうか判断しやすいんです。漉し方はこうしてポットをひっくり返してカップに乗せます。これってプロユースの道具ですが、見た目もサイズも可愛いのでオススメです」

熊崎 「仕事柄『鑑定杯』は1ダースぐらい作業机に出しっぱなしです(笑)。もちろん茶葉を比較しながら試飲するためなのですが、それとは別に手元に1セット置いてあり、ポットのフタを外して蒸らし終わった茶殻の香りを楽しみながら飲んだり、ティーバッグならカップに半分注ぎ、残り半分をポットのまま長めに蒸らし(ミルクや砂糖も加えて)同時に2タイプを味わったりしています。これを入手して会社のデスクサイドで活用している紅茶好きの方もいらっしゃいますよ」

三邉 「紅茶を入れるカップは、色の違いがよく分かる白のものを使っています。このカップは、シンプルかつモダンな作りなので、通常のティーカップよりたっぷり注げるのが良いところ。さらに、電子レンジ、オーブン、食洗機、どこに入れても大丈夫。丁重に扱わなくても良い、というのが普段使いにフィットするんだと思います」

熊崎 「三邉さん、毎日自然体でお茶を楽しんでいる方らしいチョイスですね! ティーカップは、内側が白く、(浅めで)底まで光が届きやすく、口が広く、やや縁が反りぎみで、薄手でデリケートな感じのもの、が紅茶をより美味しく感じられるための基本形といわれていますが、まずはデザイン…絵柄や形状が自分にとって飽きのこないお気に入りのもの、であることが普段使いにとって一番ではないでしょうか? 

そしてできれば、液体を8分目に注いで持ちあげた際に自分の指や手に負担なくなじむこと、唇を当てた時にスッと良い触れ心地を感じられるものを。その時々の気分もありますから、2~3種類、すぐ取り出せるところにあるのが理想ですね」

次回はいよいよ最終回。三邉さんが独自のレシピを使ったティーミックスに挑戦します。

*味覚には個人差がありますので、あくまでも参考としてお楽しみください。

  • 三邉貴男

    飲食業界約20年超のベテランで、マーガレット・ハウエル ショップ&カフェでは6年生。音楽・文学・植物からUFO研究まで、興味関心は今なお広がり続け、ゆくゆくは都会を離れ、妻と温室で植物を育てながら、老後のために取っておいた本を片っ端から読み漁る日々を理想としている。

  • 熊崎俊太郎

    フィーユ・ブルー ティーブレンダー / ティー・コーディネーター / 日本紅茶協会認定ティーインストラクター

    日本の紅茶界を代表する紅茶専門家。幼少期より紅茶、カフェ文化に興味を持ち、学生時代より喫茶ビジネスの道に飛び込み、紅茶専門店〜紅茶輸入商社勤務を経て独立。カルチャーサロン、大学の講師や、紅茶文化に関する講演活動のかたわら、カフェ、レストラン、ホテルのティールームのコンサルティングやオリジナルティーのブレンド開発、商品企画を数多く手掛けている。