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より道のススメ | 福岡編

きょとんと佇む郷土玩具

VOLUME.2

世界中のさまざまなカルチャーが交わる福岡のセレクトショップDice&Diceで店長を務める藤雄紀さん。
このエリアを一緒に盛り上げていこうと、地域との繋がりを大切にしてきました。
個性的なキャラクターの先輩に教えてもらった穴場のお店から、初めて福岡を訪れる方にお勧めしたい名店まで、藤さんが愛してやまないより道スポットを紹介していきます。

Select by Yuki To (ANGLOBAL)
Edit by Yoshikatsu Yamato(kontakt)

僕が勤める、ダイスアンドダイスの横の小道を1分ほど進んださきにあるアパートの一室に郷土玩具と民芸の店「山響屋(やまびこや)」がある。暖簾をくぐると、さほど広くない店内には、面白い顔の達磨や、ちょっと不思議な形をした可愛らしい郷土玩具が所狭しと並べられている。

お土産屋さんなどで見かける郷土玩具だが、これほどまとまって見られる場所は全国を探してもそうないだろう。海外や県外からいらっしゃった旅行客のお客様にオススメすると、必ず喜んでいただけるお店で、僕自身も、このお店に郷土玩具の魅力を教えてもらった。自分の部屋の本棚に飾ってある愛嬌たっぷりの郷土玩具に、なんだか日々癒されているような気がする。

さて、今回は、そんなユニークな郷土玩具をセレクトする「山響屋」の店主、瀬川信太郎さんにお話を伺った。瀬川さんは、達磨の絵付けというスキルを持ち合わせた興味深い方でもあって、達磨や郷土玩具との出会い、お店を出すまでのお話はとても刺激的なものだった。

藤 まず、なぜ郷土玩具や民芸品に興味を持たれたのでしょうか?

瀬川 大阪に住んでいた頃、京都や奈良の神社や寺によく行っていて、御朱印を集めたり、お土産物屋さんを巡っては達磨をちょこちょこ買っていたんです。その頃、達磨の絵付けを始めていたので、その参考にしたくて。なので、それを「郷土玩具」とか「民芸品」だとは意識していませんでした。あるとき、知り合いの人が僕の好きそうな店があるといって、郷土玩具の専門店に連れて行ってくれました。そこには変なものがいっぱいあって、初めて「郷土玩具」を意識しました。福助を購入したのですが、それはよく見る福助ではなくて、顔がめっちゃ面白くて、招き猫のようなポーズをしている。こういうのなんかいいなと思い、郷土玩具を集めてみようと思い立ったんです。お面とか、小さい招き猫を買ってみては、本棚の前に並べて楽しんでいたんです。

 なるほど。そこからお店を出すに至ったきっかけは何だったんですか?

瀬川 あれは28歳くらいでしたかね。「30歳になったら何かしらの店を出そう」と考えていたんです。でも、そのために仕事場と家の往復をして、ただ開業資金を貯めるだけの生活をするのはどうもつまらないなとも思っていて、残りの二年間で、何かしらのことを身につけられたらな、と。何かしらのスキルや文化を学びながら、その結果、店を始めるための準備できれば、と思っていたんです。

 それで達磨の絵付けを。

瀬川 そうです。もともと僕は絵を描いていたんですが、ある日、大阪の達磨に絵を描くグループの方々と知り合い、それから達磨に絵を描くようになりました。独学で、身の周りにあったスプレーやポスカを使って自分なりのスタイルで作っていました。それがポツポツ売れるようになって、最終的に大阪で個展を開かせてもらえるまでになった。そして、福岡に店を出すことに決めて、物件も押さえ、ここにきてやっと、何の店をしようか、立ち止まって考えたんです。「自分の店出す」というのが大きな夢だったので、内容はすっぽり抜けてしまっていた(笑)。達磨だけでもなあ、と思いつつ、それ以外の売り物を決めていなかったんです。

 リアルなご経験をお聞きできて面白いです。それにしても、行き当たりばったりですね(笑)。

瀬川 本当にそうですよね、振り返ってみると(笑)。僕はエスニック雑貨の買い付けを仕事にしていたこともあったので、自然と、エスニック雑貨を売ろうかとも一度考えました。でも、エスニックブームが終わりかけていた時期だったので不安もありました。そこで、達磨の絵付けに関連する仕事はないだろうかと考えていき、ふと、民芸玩具はどうかな? と思ったんです。自分が達磨を収集するときも、なかなか扱っている店が無いなあ、どこで買えばいいんだろう、と困ってしまう場面も多かったし。民芸玩具は、自分も真剣にハマってしまうぐらい面白くて、まして縁起の良いものですし、部屋に普通に飾っても意外と違和感がない。もしかすると、今の人達はそれを知らないだけで、知る機会さえあれば興味を持ってくれるかもしれないと感じて、まずは店を出す土地である福岡の民芸玩具について調べ始めたんです。

 福岡にも民芸玩具があるんですね!

瀬川 そう、あるんですよ。博多の「恵比須達磨」という民芸玩具は、七福神の恵比須さんが合体した一風変わった達磨で、めっちゃ縁起がいい。なにせ縁起のいい神様が合体しているんですからね(笑)。是非これを扱いたいと思いました。作っているところを調べて、直接訪ねて行きました。「是非取り扱わせて下さい」とお願いすると、まだ店もないし、若くてこんな見た目なのでかなり不審がられましたね。それでも懲りずにお願いをして、やっと信用してもらい、扱わせてもらえるようになりました。

 瀬川さんの熱意が職人さんに通じたんですね。

瀬川 ありがたいことですよね。初めは、せっかく福岡に店を出すのだから、九州で生産されるものだけを取り扱おうと思っていました。九州は焼き物が有名で、しかもちょうど山田芳裕さんの『へうげもの』っていう漫画にもはまっていたので、器をメインにして、郷土玩具はワンコーナーだけの予定でした。器8割、玩具2割。そんな感じで、達磨の絵付けをしながら一年ぐらい営業したんです。

 ずっと郷土玩具を中心に扱っていたわけではないんですね。

瀬川 そうなんですよ。しだいに知り合いも増えてきて、ある日、イベント出品に誘ってもらえたんです。鹿児島で1回、その後すぐに福岡パルコ新館に出品させてもらえて、とても盛況でした。それから「これいけるんじゃないか」と郷土玩具に感じていた可能性が確信に変わった。それで、がらっとお店を郷土玩具屋さんにリニューアルしたんです。

藤 めぐりめぐって、このお店があるんですね。

瀬川 はい。流れ流れて郷土玩具屋さんなりました(笑)。自分が扱うようになるまではあまり詳しく知りませんでしたが、作っている方に会いに行ってみると、玩具の歴史が分かってきてすごく面白いんです。ずっと昔から人の心を掴み、同じデザインで愛され続けているのって、すごいことだと思いましたね。はじめは色々な人に「儲からないからやめとけ」と忠告も受けました。でも今は、さまざまな場所でイベント出品もできるようになり、また、お祝いや贈り物などで買いに来られるお客様が増えています。縁起物やお土産の選択肢として、また郷土玩具が身近になってきた感じがするので、やってきてよかったなと思いますね。

 贈り物にもいいですし、自分でも色々欲しくなります。あ、これ可愛いですね。

瀬川 それは、「白虎隊」で有名な福島の会津若松で作られている「起き上がり小法師」という人形です。家族の人数よりひとつ多く買うと、ひとつ多く幸せが舞い込んでくるという意味合いがあります。面白いのが、何故か遠く離れた鹿児島にも「起き上がり小法師」という同じ見た目の人形があって、「家族の人数よりひとつ多く買うと……」という意味合いも全く同じ。

 そうなんですか!? どうしてそんなことが?

瀬川 実は、当時の大名って、わりと頻繁に領土が変わっていたので、そのたびに、元の土地で作っていたものを次の領土でも作らせていたからだ、と言われています。郷土玩具の面白いところは、愛らしさだけでなく歴史も一緒に付いてくるところ。調べれば調べるほど面白かったりします。

藤 いいですねー。ロマンがあります。

瀬川 でも、調べ続けると、途方もなく奥深いので大変な部分もありますけどね(笑)。最近は、郷土玩具を扱う昔ながらのお土産物屋さんが残った風情のある観光地がなくなってきているのが寂しいです。なので、若い世代がもっと郷土玩具に興味を持ってくれたらいいなと思い、郷土玩具作家の方々とコラボレーションをして現代風の作品を作ったりもしています。

 いやあ、若い方も絶対ハマってしまうと思います。ディープさと、愛くるしい見た目のギャップが最高です。僕も今度、達磨を描いてもらいたいです。

瀬川 是非是非。

  • 山響屋(やまびこや)

    福岡市中央区今泉2丁目1-55やまさコーポ101

    11:00~20:00 木休

    TEL 092-753-9402

  • 藤雄紀

    22歳でダイスアンドダイスに入社して以来、強烈キャラの先輩たちに揉まれて過ごす。趣味はサーフィンと読書で、友人と文芸同人誌を自費出版し、福岡の文学系イベントで販売も行う。最近キャンプを始め多方面に手を伸ばしながら才能花開くフィールドを模索している。