#FLOWER#ROOM

そこにお花があるだけで

INTERVIEW フローリスト チーコさん | 前編

VOLUME.1

そこにお花があるだけで、
この言葉のさきに続く言葉を探してみる本連載では、
フローリストの言葉にはじまり、
アングローバルのスタッフが身近な空間にお花を置いてみて、
生きものである花との付き合いかたをそれぞれの方法で実践。
暮らしに寄り添って咲く花は、人や空間にどんな変化をもたらすのだろう?
さまざまな角度から「花と人の関係」にアプローチしていきます。

Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

下北沢と、渋谷の西原で花屋Foragerを営み、ショップでの生け込みや、お花のスタイリングも手がけるチーコさん。そのお話には、「お花は気軽に楽しんでいいんだよ」というメッセージや、お花を楽しむためのヒント、ユニークな発想が盛り沢山。明るくかろやかな口どりのお話を聞いていると、あれ? 気づいたら、ものすごくディープなところまで来ていたな、と思わせられる瞬間が何度もありました。

インタビュー前編では、「花のある生活の豊かさとは?」、「お花って枯れてしまいますよね?」といった初歩的な質問から、お花を選ぶときの心がまえ、おすすめの花の置き場所など、たっぷりお聞きします。

花のある生活の「豊かさ」とは?

― 今回のインタビューは「そこにお花があるだけで」というタイトルの連載の第一回です。このフレーズに続いていく言葉やイメージが、インタビュー全体でなんとなくでも浮かんでくるものにできればと思っています。よろしくお願いします。

チーコ よろしくお願いします、

― チーコさんはお花屋さんでの店頭販売だけでなく、ショップをはじめさまざまな場所にお花を生けていると思うのですが、ご自宅にも飾っているんですか?

チーコ そうですね。飾っています。

― さっそくですが、身近な空間、たとえば自分の部屋に花を置いてみることは、生活の豊かさにつながるのでしょうか?

チーコ それはそうだと思いますね。でもさらに一歩踏み込んで、その「豊かさ」ってなんなんだろう、とも思いませんか?

― 確かに。「豊かさ」って、自分なりの定義をするのさえすごく難しいです。

チーコ 「花のある生活」には「豊かさ」という言葉が結びつけられることが多いですよね。仕事をしていて、そういうふうに感じたり、よく考えたりもするのですが、なんとも難しい。私も、年齢によって感じることが変わってきたりして。しかし、花と生活してみると、「豊かさ」ってなんだろう? と考えるきっかけはできるんじゃないかな、なってほしいな、と思っているんです。

― 「豊かさ」という言葉が先行してしまうのもあるのか、「お花ってなんかわかんないなあ」という戸惑いを抱いている人も多いかと思います。お花を見て、きれい! とは感じるけれど、自分用に部屋に買って帰るとなると、ためらってしまうというか。

チーコ うんうん。「わからない」という声は多いと思いますね。

ネガティブな気持ちにも寄り添うお花

― お花を買ってみるタイミングについてはいかがでしょうか?

チーコ 花屋としては、「いつでもどうぞ」と思っていますが、私の実感からすると、元気一杯で満たされているときって、お花は必要ないんじゃないかなと思うんです。で、必要のないときには買わなくていいよ、とさえ思っている。お花を買うようになる最初のきっかけって、ネガティブな気持ちのときのほうが実は多いのかなあ、と。

― 花というと、お祝いなど、明るい場面を思い浮かべていたので意外です。

チーコ ギフトはそうですよね。花屋として、そういった幸せな場面に関われるのはとても嬉しいですが、自分用に買うような場面を考えてみると、お花に気持ちが向くのは、ちょっと心に元気がないなあ、ってときかなと感じますね。

― なるほど。

チーコ たとえば、とぼとぼと歩いている帰り道なんかで、沿道の花を見て「今年も咲いたんだー」って思って小さな感動をする。無意識のうちにそういう経験をしている人は多いのかなあ、と思うんです。お花は、「安心して感動できるもの」という気がしていて。

― 安心して感動できるもの。

チーコ もちろん起こらないほうがいいんだけど、誰のせいにもできなくて傷ついてしまうことってありませんか? お花はそれを直接的に解決したりはしない。でも、だからこそ、ただそこにお花としてあるだけで、自分を肯定して寄り添ってくれるというか。

― お花って、理屈抜きで、存在自体が「すごい」というか、支えになる感じはあるかもしれません。うまく言えないんですけど。でも、切り花は、飾っているあいだにだんだん枯れてしまうものでもありますよね。そこについてチーコさんはどう思っているんですか?

チーコ なんかね、枯れるからいいな、っていうのがあります。

― そうなんですね。

チーコ そうそう、残らないのがいいんです。ずっとは存在しないけど、そのときの状況にフィットしたお花はとっても記憶に残る。もちろん、予想よりもはやく枯れてしまうと残念ではあるんだけど、最低限のお世話など、適切な扱いをして終わっていくならいいと思いますね。

なんとなく気になる、で選んでみて

― お花の扱い方についてはこの企画でも紹介していく予定です。

チーコ ポイントをおさえてお手入れしつつ、観察もしてみてください。花は生き物なので、細胞の変化が見られるんですね。買ったばかりで若々しいときは水分たっぷりで、みずみずしい印象ですが、日を追うごとにボディから水分が抜けていき、色が褪せていく。その姿に「色気」を感じたりするんですね。新鮮か枯れているか、ではなくて、花は日々いろんなグラデーションを見せてくれる。そういう見方をすると、「枯れる」という点だけがネガティブに響くことはないのかもしれません。

― お聞きしていて、「変わらないもの」よりも、むしろ、変化があるもののほうが人の生活とフィットするのかな、と思いました。自分の気持ちや好みも、日々変わっていくでしょうし。

チーコ そうですね。あまり変化がなくて長くもつ花もあるし、変化がビビットで儚いお花もあります。花屋さんに並んでいるお花のなかから、「なんとなく気になる」ぐらいで選んでみてください。花を愛でる生活を続けると、だんだん、種類ごとの花の老い方の違いも分かってくると思います。

花という音楽で空間がふるえる

― 花屋さんでお花を選ぶ。そこでピンときたお花から、自分ってこういう気分だったんだなあ、こういう色、形が好きだったんだなあ、とわかることもありそうです。

チーコ 自分の元気になるポイントがすこしずつ分かってくるというのは、最初に話した「豊かさ」の一つだと思いますね。

― チーコさんは生け込みのお仕事で、さまざまな場所に花をセレクトして飾っていると思います。そこで、花と空間の関係について聞いてみたいのですが、部屋にお花があると、その空間全体の雰囲気が変わるような印象があります。花そのものがきれい、ということに加えて、周りの空間がいきいきするというか。そのあたりはいかがでしょうか?

チーコ 部屋にお花があるかないかの違いは、よく、その空間に音楽が流れているか、流れていないか、と似ていると話すことがあります。簡単に言うと、空間がふるえているかどうか。お花は、茎の先から水を吸って、それを花びらや葉っぱから水蒸気として発散して生きているんですね。

花を「噴水」にたとえてみる

― 植物の蒸散っていうしくみですね。学校で「生物」の時間に習った気がします。

チーコ そうそう。「お花があるかないかで空間が全然違うね」という話を考えてみると、私は蒸散を思い出すんですよね。もちろん研究をしたわけではないのですが、それによって空間がふるえるんだろうな、という仮説を立てています。もちろん、視覚的な色のインパクトだったり、形の組み合わせで目線をひきつけたりもしていることもありつつ。

― なるほど。

チーコ あと、花器にはいったお花を「噴水」にたとえてみることもできます。

― 広場とか公園にある、あの噴水ですか? でも、確かに、噴水がある広場を思い浮かべてみると、水がきらきらと流れていて、賑やかだし、フレッシュな雰囲気があるかもしれません。蒸散における水の流れともイメージがぴったりです。

チーコ すごく分かりやすいですよね。私はお花を生けるとき、花が止まってしまう印象よりも、のびのびとしていて、風を感じるようにしたい。だから、花を飾るときは、ちいさな噴水をつくっている感覚なんです。高くダイナミックな噴水にすることもあれば、ちょぼちょぼっていう噴水にすることもある、みたいな(笑)。

花を置くならこんなスペースに

― 今回の連載では、自宅にお花を置く、という点にフォーカスしたいのですが、ちいさな噴水を自宅につくるとき、おすすめの場所はありますか?

チーコ おすすめなのは、洗面所ですね。

― なぜでしょうか?

チーコ 洗面所は、パーソナルな場所ですよね。身支度をするときに一人で立ったり、なんとなく鏡のまえに立ってみることもある。そのとき、花がちらっと目に入ると、いいものですよ。水替えもしやすいし。一輪か、そこに葉ものを一種類加えるとか、少ないお花でいい。

― ずっと過ごす場所ではなくて、ときどき行く洗面所、っていうのがいいですね。

チーコ パートナーや家族とお住まいの方はコミュニケーションの種にもなったりします。たとえば、ある期間はお母さんがお花を買って活ける。そうすると、最近こういうのが好きなんだね、とか、あの花すごい保ったね、とかちょっとした会話につながったりして。

― 洗面所の他には、どうですか?

チーコ そうですねあとは、壁に付いたドアフォンのまわりの空白も穴場なのかなと。壁面に掛けるタイプの花器があるので、それがおすすめです。本棚に置くのも好きですね。ブックエンドで本をとめて、隙小ぶりな花瓶を隙間に入れてみる。背表紙が集まっていて情報量も多いので、目立ってくれるお花と、そうじゃないお花があるんだけれど、その場所にはどんなお花が合うのか、グッドバランスを探してみるのも楽しいと思います。

― いざ、花瓶にお花を生けるときのコツもお聞きしたいです。

チーコ 置く場所を決めたら、花と「目が合う」ように生けるといいですよ。

― 「花と目が合う」? 

チーコ なんだよそれ、って感じですよね(笑)。

連載第二回では、チーコさんのインタビュー後編をお届け。花を生けるときのコツや、おすすめの花の本数、絵や写真集を見ながらお花を楽しむ応用編に加えて、チーコさんが「脇役」のお花を集める「Forager」をはじめるに至った経緯など、ざっくばらんに伺っていきます。

  • Forager

    西原店

    東京都渋谷区西原2-26-5
    パールマンション101

    TEL 0368757141

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    下北沢 小屋

    東京都世田谷区代田5-1-16

    TEL なし

    INSTAGRAM @forager_tokyo

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