自分にとっても気持ちのいい花のケア方法 そこにお花があるだけで
#FLOWER#ROOM

そこにお花があるだけで

自分にとっても気持ちのいい花のケア方法

VOLUME.3

そこにお花があるだけで、
この言葉のさきに続く言葉を探してみる本連載では、
フローリストの言葉にはじまり、
アングローバルのスタッフが身近な空間にお花を置いてみて、
生きものである花との付き合いかたをさまざまに実践。
暮らしに寄り添って咲く花は、人や空間にどんな変化をもたらすのだろう?
さまざまな角度から「花と人の関係」にアプローチしていきます。

Edit by Yoshikatsu Yamato (kontakt)

花は枯れてしまう。でも、それがいい。連載第1回のインタビューで、花屋「Forager」の店主であるチーコさんはそう言った。花は枯れる。これは、普通ならば、ややネガティブな響きを持ってしまうことかもしれない。しかし、チーコさんは、花の短い生命をさらりと肯定し、イメージ豊かなたとえを交じえながら、花と水との循環について語ってくださった。

もちろん、枯れるからといって、ぶっきらぼうに扱うのではない。そのお話からは、「適切な花の扱いかた」があることもまた、想像ができた。ということで今回は、チーコさんからのバトンを引き継いで、本サイトで紅茶の連載を持ったアングローバルスタッフ三邊さん協力のもと、吉祥寺の花屋「gente」さんで花束を注文して配達していただき、届いた花を自宅でより長く楽しむ方法をレクチャー。大切なのは、お花にとってだけでなく、自分にとっても気持ちがいいリズムでお手入れをすることだ。

花束の第一印象を受けとめる

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ラッピングや飾り紐をほどく時間は、もっとも期待がふくらみ、わくわくするときかもしれない。デリバリーが届いたら、できるだけスピーディに、花を、のびのびと空気に触れさせ、新鮮な水につけよう。しかし、デザインされた「花束」の状態を楽しむひとときも、忘れたくないところ。お花屋さんは、「花束」を一つの完成形として花を選び、提案してくれるからだ。もらった花束を持ち帰った日も、紐でゆわえられデザインされた「花束」の第一印象をしばし楽しむ。そんな一呼吸を置いてみたい。

水こそすべて

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紐をほどいて花瓶に移すまえには、茎をカット。切れ味のいいハサミで、スパッとナナメに切るのがポイントだ。花は、この断面から水分を吸い込んで栄養にするのだから、茎をつぶさないように勢いよく、潔く。ナナメに切るのは、吸い込み口の表面積を大きくするためだ。

花は旅する

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gente」さんからの花束に同封されたレターには、お手入れ方法の他に、こんな一言が添えられていた。

「長旅、お疲れ様でした!」

これは、オーナーの並木さんが花に向かって掛ける言葉だろう。デリバリーに限らず、花をもらったときや、お店で自宅用に買うときも、花は、一度、水から出されて運ばれる。

人もまた、長い移動を終えて目的地に到着したとき、つい、ぐうっと体を伸ばして深呼吸をすることがある。新しい空気を吸い、リフレッシュをする。花もまた同じ。旅を終えて環境が変わったら、吸い込み口をリセットし、新鮮な水を思いっきり吸い込めるようアシストしよう。

茎を切り戻したら、葉っぱを間引く

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長旅のあいだ、こすれて傷がついたり、花器の水に浸かってしまう位置にある葉っぱがあれば、落としてあげるのがベター。一般的には、葉っぱが多ければ多いほど、その一本は多くの水を必要とし、さらに、葉から水分を蒸散させていく。傷んでしまった葉とはお別れし、残った花や葉を長持ちさせることを優先しよう。

花束を「素材」にもどし、自分でアレンジする楽しさ

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「花束」は、一つの完成形。お花屋さんが提案するデザインや、第一印象を楽しんだあとは、紐をほどき、花を一本一本の素材にもどして、活け直すのを楽しもう。第一印象からは想像がつかなかった、予想外の一面に出会えるかもしれない。

道具でこだわりたいのは、ハサミのみ。「花切りはさみ」といったキーワードで検索すれば、取っ手のカラーが鮮やかなものから、渋い面持ちで、「剪定」という言葉が似合いそうな玄人向けのものなど、選択肢は多い。観葉植物などを扱うホームセンターなどでは、手ごろな価格で買うこともできる。

水の量は、花の大きさ、花束のボリュームによって柔軟に

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なにごとも、やりすぎには注意だ。生命線となる水も、多ければ多いほどいい、というわけではない。大部分が水に浸っていると、茎がふやけてしまい、雑菌が増える原因になる。目安となるのは、切り口から水面までが35cm程度の量。ただし、ふんだんな花束や、バラや芍薬など、大輪の花を咲かせるものや、枝ものはぐんぐんと水を吸う。たっぷりと水を注いでおこう。

お手入れは、気楽に、そして気持ちよく

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とはいえ、お手入れとして「すべきこと」には、いつも例外があるし、あっていい。忙しい日が続くかもしれないし、そんなとき、お手入れができないことにストレスを感じてしまうのはどうなのだろうか? 花の色や形に個性があるように、必要なお手入れも花によってまちまちだ。そして自分たちも、花と同じように、さまざまなライフスタイルがある。お花屋さんに、自分のライフスタイルに合ったお花を訪ねてみよう。

こまめなお手入れが、自分の生活リズムとフィットするな、気持ちいいな、と感じられそうなときは、水をぐんぐん吸い、水の新鮮さに敏感なお花を部屋に飾ってみる。手がかけられそうにない時期には、頻繁なケアの必要ない植物を部屋に置く。そこにお花があるだけで、空間がいきいきとして、ふとしたときに支えになる。ありがたいな、と思ったときには、さっと水換えをしてあげる、とか。花のケアは、自分にとっても気持ちよく。

ふわっと香る初夏の風味

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色、かたち。花から与えられる印象はとても幅広い。その声や音は、あまりにもささやかなもので、なかなか聞こえないけれど、花の香りは、昔から人との深い関係にある。散歩の道すがら、ふと気づく沈丁花(ジンチョウゲ)や梔子(クチナシ)、ジャスミンや金木犀(キンモクセイ)の香りで季節を実感したり、ときにエモーショナルな思いを抱くことがあるかもしれない。まるで劇中歌のように、ときにドラマチックに、ときにささやかに、花や、その香りは、さまざまな歌や物語のなかに登場してきた。

今回「gente」さんの花束に含まれていた「ハーブ」は、アロマオイルをはじめ、さまざまな効果とともに人と関係してきた植物だ。涼しげなブルーの花を咲かせたハーブを、見るだけにとどめるのはもったいない。その瑞々しさを、しっかりとお花屋さんに確認できたなら、料理や、飲み物に応用してみるのもいい。暑さの出てくる初夏には、すっとして心地のいい風味を添えてくれるだろう。

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並木容子さんがオーナーを務める「gente」さんの店内(トップ画像とこちらの写真は、並木さまよりご提供いただきました)

個性豊かな「散り際」を楽しむ

最後に、吉祥寺の花屋「gente」オーナー、並木容子さんからの便りをお届け。チーコさんとも共通しているのは、花の「変化」や「生命あること」に重きを置く言葉だ。さらに並木さんの話で印象的なのは、お花にとっての水だけではなく、お手入れの習慣のなかで、人が水に触れることにも言及していることだ。

「今回の花束は、優しさのあるお花に加えて、オーニソガラムやバンクシャーなど、ワイルドでお手入れのほぼいらないお花もお入れしました。硬いものや、変わったかたちの草花から、夏へと向かう強さが感じられるのではないでしょうか。また、バラは、この時期(6月)には欠かせないお花です。そして、毎日、変化を見せてくれる花でもあります。切り花をお部屋に飾ることは、花の変化をご覧になれるということ。変わらないものがあるよりも、お家に帰った時に変化していくものがあるほうが、空気を感じられます。

散り際は、花によってさまざまです。花びらが朽ちていくものもあり、一枚ずつ、はらはらと落ちていくものもあります。さらに、ばさっと音を立て、命の最後を迎えるものもあります。今回お入れしたニゲラ(クロタネソウ)のように、花びらが落ちてもなお、花芯(注:花の中心となる、おしべとめしべの総称)が残り、そこに種を宿す様子を見続けることができるものもあります。

すべては生きているからできることです。日々のお手入れのなかで、人が水に触れ、茎や葉の青くささを嗅いで、自分自身をリセットできるツールとしても、切り花は楽しんでいただけると思います。

私の考えでは、本来、花はいつでも脇役です。身近に飾るものから、結婚式のブーケまで、いつだって、花は脇役なんです。だから、大事なことは、花に振り回されないこと。こまめなお手入れが難しいかたにも、ぴったりとくるお花はあります。花を飾る人の生活サイクルに合ったお花選びの、お手伝いができればと思っています」。

並木容子

続く連載では、やや応用的なお手入れや、インテリアとしてのお花にフォーカスします。登場するお花は、二子玉川の「back to nature」さんへバトンタッチ。みなさまも、連載で紹介したお花屋さんをはじめ、近所のお花屋さんから持ち帰ったお花とともに、記事をお楽しみください。

  
  • gente

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