#MOBILE#VAN

ウラカタログ

山と街のあいだで。and wanderが開く新しいルート | 後編

VOLUME.8

普段目にすることのない側面にフォーカスして日々のなかで考えるきっかけを探していく「ウラカタログ」。今回は前回の前編に引き続きand wanderによる移動式ショップ「and wander MOBILE VAN」誕生の裏側に迫ります。富士山のふもとで行われたプロモーション動画制作。果たしてどのように撮影が行われたのでしょうか。

Text & Photography by Soya Oikawa (ANGLOBAL)

完成した「and wander MOBILE VAN」に再会したのはお披露目に向けてプロモーション動画を撮影する当日の朝だった。目的地は富士山のふもとにある広大なキャンプ場。移動式ショップであるこの車は商品を運び、陳列する荷台スペースがメインとなるため車内には3名分の座席しかなく、僕はその一席に同乗させてもらい道中を取材しようと試みたのだった。

早朝に都内を出発して中央自動車道を南下。富士の白い頭を遠景に望みながらベテラン営業の立石さんがハンドルを握る。ガタガタ、ガタガタ。居住性よりも輸送力を優先させた車内は想像以上の走行音と振動で、大声で話さないと会話もできないほど。このVANにはand wanderのデザイナーの1人の池内さんも同乗することになっていて、道中はのんびり話を聞こうと考えていた僕はさっそく出鼻を挫かれてしまった。

一方でドライバーの立石さんは「(この車は)路面状況がダイレクトにハンドルに伝わってくるね。全身で運転している感じだ!」と案外楽しそうだった(笑)。確かに天気も良く視界は良好。スピードはそんなに出ないけれど、勇ましいエンジンの音やタイヤが路面をつかむ豪快な走行音も普段聴くことのないおもしろい音だ。そんな思いをしながら約2時間半で目的地のキャンプ場へ到着。まだ身体に残る振動の余韻を持て余しながら、ひと足先に到着していたスタッフ達と合流して撮影に適したロケーションを探す。

動画でも写真の撮影でも演出はとても大事だ。カメラのファインダー越しの構図の中でVANをどこに配置してどう動かすかなど、完成をイメージしながらみんなで意見を出し合って最適な演出を見つける。富士のふもとのキャンプ場はぐるっと360度、見渡す限り同じような景色に囲まれる中で、映り込む木々の高さや色合い、背景の山の稜線やその角度などの細かい条件を埋めていき、やがてぴったりな場所が見つかった。

カメラを向けるロケーションが決まると、いよいよVANの走行シーンや商品のセッティングの様子などを撮影していく。この日予定されていたのはシーンごとの動画を午前中に、午後からはロケーションを変えてショップになるまでの一連の動作を“通し”で行い、それらの合間に写真撮影を挟むというもの。撮りこぼしがないようにPRの甲斐さんは工程が書かれたタイムスケジュールから目を離さない。スタッフみんなの昼食の時間も決められていて、順番が来ると「早く食べちゃってください」と促される。気持ちいい自然に囲まれてつい開放的な気分になってしまうが、山の天候は変わりやすく、限られた日照時間の中でしっかりと進行をコントロールしなければならないのだ。

荷台の側面が開いて、次々と商品が陳列され、この日はじめて“ショップ”としての「and wander MOBILE VAN」の姿を見た。並べられるアイテムはその時々によって編集され、車内では2〜3人が商品を手にとって楽しむことができるスペースもある。初めは40分ほどかかった準備も、何度か繰り返すうちにものの 20分ほどで整った。目的地に到着してわずか数十分でショップになってしまうという機動力はおもしろい。ここに来る途中、悠然と走り去るこのVANを数奇な目で見つめていた人たちはまさかそれが「移動式のアウトドアショップ」だったとは思わなかっただろう。

そしてやっぱりand wanderのプロダクトは自然がよく似合う。気ままに雲に隠れる太陽を浴び、あちこちに吹き遊ぶ風を受け、四季を彩る草木と馴染む。考えてみればそれらは自然の中だからこそ得られる演出だ。こうして完成した“ショップ”を眺めていると、彼らが自分たちで作った商品を屋外に持って行きたかったという想いがしっかり伝わってきた。

「やっと踏めたんです。まだ2人だけでやっていた頃は、せっかくいいアイデアがあっても手が回らずにここまで思い切ってアクセルを踏むことができなかった。ようやく踏めたなぁ。」

デザイナーの1人である森さんは撮影の合間にそう語ってくれた。池内さんと森さんがたった2人で始めて、10年続けてきた活動でやっと叶ったひとつのアイデア。これから四季折々の表情を見せる日本各地のトレイルヘッドやキャンプ場へ、and wander MOBILE VANが向かう先にはどんな出会いがあるのだろう。作り手と遊び場の間に、街と山の間に、新たなルートがいよいよ刻まれていくのだ。

  • and wander MOBILE VAN

    池内啓太さんと森美穂子さんによるアウトドアブランド「and wander」初の移動式ショップ。全国津々浦々、今後さまざまなイベントへの出店の出番を待っている。