#STORY#QUITAN

はじめまして、QUITANです。

デザイナー宮田紗枝さんとサラダボウル

VOLUME.1

この夏、アングローバルに新しい家族が生まれます。
その名は「quitan(キタン)」。アングローバルコミュニティマートでは『quitan』がデビューするまでの道のりに密着した連載をお届けします。
今回は、デザイナーの宮田さんに『quitan』のはじまりと大切にしている7つのルールについてお聞きしました。

Interview by Juli Yashima

物語りのはじまり

―これから『quitan』がデビューするまでの間、ブランドのルーツや宮田さんご自身のこと、色々お聞きできればと思っています。

宮田 よろしくお願いします。

―今回は、アングローバルコミュニティマートとして初めてのインタビューですのでブランドの始まりのお話しを伺えればと思います。まずは名前から。『quitan』というブランド名にはどのような意味があるのでしょうか?

宮田 日本語の「綺譚」からきているんですよ。「美しい文章で書かれた物語。世にも不思議な話」という意味があります。『quitan』の洋服は世界中の民族服や文化から着想を得た洋服が多く、それぞれの個性の点と点を結んで線にしていくイメージで洋服を作っています。それらを集めて「綺譚な話」が紡いでいければと思っています。

紙や文字にまつわるお仕事をされる「紙事」の渡邊絢さんとデザイナーの阿部博文さんが「違いの共存」「文化の交歓」というような言葉をアラビア文字に学び表現したロゴ。

遊牧民のように過ごした幼少期

― 日本語だったのですね。洋服のブランドはそれぞれに色々なインスピレーション源があると思いますが、「世界中の民族服や文化」というと、とても幅広く感じます。

宮田 そうですね。これには理由があってすこし長い話になるのですが、聞いていただけますか?

―はい。

宮田 子供の頃の話ですが、私はアメリカのシアトルで生まれて4歳までを過ごしてから日本に帰ってきました。そのあとも親の仕事の関係で日本各地を遊牧民のように点々としながら暮らしていたんです。移動する度に転校をして、新しい友達を作るということを繰り返してきました。そうやって過ごしていく中で「馴染む」ということについて自分の中で考える機会が増えていきました。

―「馴染む」ですか。

宮田 はい。「人種の坩堝(るつぼ)」という言葉がありますよね。英語ではMelting Pot (=溶ける・壺)と言い、色々な鉄の塊を異なる文化に例えて、ひとつの大きい煮えたぎった鍋に入れ、溶かして新文化をつくるという意味です。アメリカはまさに「人種の坩堝」と言われていて、アメリカらしい多国籍文化を作っていました。でも、そうやって新しい文化をつくることで、それぞれの個性やアイデンティは保たれているのだろうか? とだんだんと疑問に思うようになりました。

― そうですね。馴染むことと自分の個性を隠すことは別ですね。

宮田 そうなんです。高校の時にカナダに一年間留学に行った時にも日本人としてその土地にどうやって「馴染む」のかをすごく考えました。そんな時に「サラダボウル」という新しい言葉が使われるようになったんです。

デザイナーの宮田紗枝さん

―サラダボウル?

宮田 レタスやトマト、きゅうりなど、いろいろなものをボウルの中にいれて、味や形を損なわずにひとつの料理として楽しむ。それぞれの文化の良いところはそのままして、共存するという意味です。そのサラダボウルという概念が私にはとても響いて、自分がなにかを表現をする仕事ができるのならば「サラダボウル」のようにそれぞれの個性を生かした「なにか」をつくりたいと思いはじめました。

―そのときはまだ洋服を作ろうとは思っていなかったのですね。

宮田 はい。大学では多様な人種や個々のアイデンティというようなことをより深く学んでいたので、興味はあったのですが、卒業後はファッションとはまったく関係のない仕事に付きました。

―そうでしたか。

宮田 何をつくるかは決めていなかったけれど、やっぱりどうしても、ものづくりに携わりたいという気持ちはあったんです。結局、その仕事はすぐにやめてしまって…。そのあと、とあるブランドの営業やPRのお仕事を始めて、それがきっかけでデザイナーの仕事するようになりました。

―服装に関する経験はそれまでなかったということですか?

宮田 はい。PRの仕事をしながら少しずつ服作りについて学んでいたこともありましたし、当時はデザイナーの下で一緒に服をデザインしていました。でも、やっているうちに、それまで漠然としていた自分の好きなものの輪郭がより鮮明に見えてきたんです。

―好きなものの輪郭…。

宮田 「自分がなにか表現をする仕事につくことができるのならば「サラダボール」のようにそれぞれの個性を生かしたなにかをつくりたい」。この思いはずっとどこかにありました。でもそれを声を大にして言おうと思ったことがなかった。PRやアシスタントデザイナーとしての活動も何年かしたなかで、今なら言いたいことを大声でいえるかもしれないと思える瞬間がありました。いろんな出会いの中で感じ、ものづくりをするなかで、どんどん解像度が上がって、洋服を通して伝えたいことが明確になりました。

世界中から集めた生地や写真とデザインのアイディアがムードボードにずらりと並ぶ。

着ることで知る。『quitan』のメッセージ。

―なるほど。

宮田 世の中には色々な文化があって、100年前はそれらがもっと色濃かったはずなんです。それが民族衣装や代々受け継がれている技術だったりする。その色濃かった文化のそれぞれの個性の点と点を線で結び、現代に着てもらえる服に落とし込むことで、それぞれの民族が持つ考え方や個性を感じでもらいたいと思っています。

―それが『quitan』の根源にあるメッセージなのですね。

宮田 はい。私の仮説ですが、世界平和をどうやって成し遂げるのか、と考えたときに「みんな違うんだ」ということをまず一回知ることが大切だと思っています。その考えを私の服を通して知ってもらいたい。服は毎日着るものだからそのメッセージを伝えるのに一番力があると感じています。

―洋服である必要があったんですね。

宮田 まさしく。多くの方に着ていただきたいということもあってユニセックスにしましたし、もちろん、民族衣装や各地の伝統的な手法で作られた衣服なのですが、それをデイリーに身に付けられるようにデザインしています。

―どんな洋服なのか、早くみてみたいです。

宮田 今月末のお披露目の際に、お見せしますね。

―そのときも取材にお伺いします。

宮田 是非! 今日お話しできなかったこともまだまだ沢山あります。

―ありがとうございます。最後に『quitan』の洋服を作る上で大切にしている7つのルールがあるそうですね。少しお話を伺えますか?

宮田 7つそれぞれに強い思い入れがあるので、簡潔に説明するのがむずかしいのですが、今日お話ししたのは主に1の「As universal as possible - 可能な限りユニバーサルであること」というブランドそのもののベースになっている部分ですね。

―素材や色、サステナビリティの話も是非お伺いしたいです。

宮田 では、次回はインドや韓国で集めてきた伝統的な生地のお話しをさせてください。それをお見せしながら3の「There is always "something" inspired by traditions - 伝統から学ぶ「何か」があること」と5の「Only the Fabrics that I loved are chosen/woven - 私の愛した素材だけが使われている/作られていること」についてお話ししますね。

―はい。楽しみにしています。

【 quitanを示す7つのルール】

1. As universal as possible - 可能な限りユニバーサルであること

2. As ecological as possible - 可能な限り環境に、地球に、配慮されていること

3. There is always "something" inspired by tradition - 伝統から学ぶ「何か」があること

4. Well-placed production - 適材適所であること

5. Only the fabrics that I loved are chosen/woven - 私の愛した素材だけが使われている/作られていること

6. There is always "a color" for the season - 迎える季節には、いつも大切にしている一つの「色」がある

7. Supporting developments sustainably - 持続可能な支援を

次回は、宮田さんが世界中から集めてきた伝統的な生地と実際の服に使う素材へのこだわりについてお伺いします。

quitan』のデビューとなる2021年春夏シーズンの商品は来年1月頃より順次展開予定です。

  • 宮田・ヴィクトリア・紗枝

    アメリカ・シアトル生まれ。quitanデザイナー。幼少の頃より多国籍な環境で遊牧民のように転々と暮らしの場を変えつつのびのびと育つ。大学を卒業後はファッションの現場でものづくりの経験を積み、2020年にアングローバル入社。2021年春夏よりユニセックスブランド「quitan」を展開する。