#STORY#QUITAN

はじめまして、QUITANです。

世界中の生活様式をつないで

VOLUME.2

この夏、アングローバルに新しい家族が生まれます。その名は「quitan(キタン)」。本連載ではその「quitan」がデビューするまでの道のりに密着した連載をお届けします。今回は、デザイナーである宮田紗枝さんが愛してやまない世界中の生活様式とそのものづくりの工夫についてお聞きしました。

Interview by Juli Yashima

遊牧民と定住民。できることを分かち合うものづくり

前回は『quitan』のはじまりのお話を伺いました。今回は、宮田さんが世界のいろいろな場所を訪れて出会った生地などの素材と、その土地の伝統についてお話できればと思います。

宮田 シーズンによって切り取る角度が変化するとは思うのですが、例えば日本の素材だったら愛知県の尾州の毛織物のように空気を含んでゆっくり織ったような素材に惹かれます。凹凸の出方や生地の風合いが独特で、同じ織り方をしている別の織物とは全然違う表情なんです。

ー そうなんですね。日本以外の国ではいかがですか。

宮田 海外の素材では、中央アジアのトルクメニスタンの織りの手法もデザインに取り入れたいと思っています。

ー トルクメニスタンですか?

宮田 はい。これにはちょっとしたエピソードがあるんです。以前、トルクメニスタンで作られたインディゴのストライプのコートを購入した時とても驚いたことがありました。トルクメニスタンは遊牧民が多く、大きな窯が必要なインディゴ染めは難しいはずなんです。ある展示会でトルクメニスタンの絨毯を売っている方にお会いしたので、この疑問を投げかけてみました。すると、おそらくその地域に定住している別の民族に染めてもらったんだろうと教えていただきました。

ー 違う民族の技術を借りていたのですね。

唐棧縞のラペル付きジャケットのサンプル

宮田 生活の様式が全く違う人たちが助け合ってものづくりをしている様を想像したら、とても心が打たれました。その作り方を聞いて、ものづくりは1人ではできないんだなと、再確認しましたし、ものづくりの中に違う文化が共存していることに素晴らしさを感じました。そこで「quitan」でもこの織りの手法を取り入れたいと思い、機屋さんにこのコートを見てもらうと、これは16世紀ごろ日本に伝わった「唐桟織(とうざんおり)」という織物だと判り、さっそくお願いしてこの織りを再現していただきました。試作の過程で密度が高すぎて織機が壊れてしまう失敗もあったのですが、なんとか目指す生地ができあがりました。

ー 量産化が難しいんですね。

宮田 その機屋さんは最後まで協力くださって、とてもありがたかったです。わたしは服へのインスピレーションを膨らまし、その過程で生地屋さんの技術を借りる。トルクメニスタンの遊牧民たちが助け合ってものづくりをしていたように、「quitan」のものづくりも、自分たちのできることを分かち合っていきたいと思っています。

脈々と受け継がれる愛すべき文化

ー ものづくりにはいろいろな交流があるのですね。

宮田 そうなんです。他には韓国の「Pojagi(ポジャギ)」という布も大好きな素材のひとつです。ポジャギは、「チマチョゴリ」などの朝鮮の民族衣装を作った際に出るハギレを、パッチワークのように繋ぎ合わせて作るので、ひとつひとつ違った表情をしています。例えば、シルクが多く使われているものは比較的裕福な家庭で作られたものなのかな、とか、小さなはぎれが多いものは細かい手仕事で一生懸命作ったのだろうな、など、作った人の生活の様子が想像できるんです。

ー シミのような跡も、何かの過程で付いたのかな? と想像してしまいます。

さまざまな素材を組み合わせてひとつの布になるポジャギ ( photography by Eri Kawamura )

宮田 こういった生活様式や文化は、時代を遡るほど色濃く見えます。だからこそインスピレーションの源として、心が動くんです。ものを作ると言っても、売るためではなく、生活のためなんですよね。

ー なるほど。余剰分を生産することが大きな目的ではなかったと。

宮田 身近な誰かのために服を作っていた時代ですね。生活をちょっと便利にするためだったり、家族や親族、村や社会が共存するためのひとつの手段だったんだと思います。さらに、素材そのものが持つ機能性も、しっかりとものづくりに活用されてきました。例えば、インディゴは殺菌効果や火に強い特徴があるので、フランスの古い消防士のユニフォームはインディゴで染められていました。泥除けのために卵の卵白をエプロンに塗る加工もあります。そうしたことが、100年以上も前から行われていて、さらに不思議なのは、同じようなことがヨーロッパだけでなく中国など、全く違う地域で起こっていることです。ものの機能性や素材の特徴を熟知し、それを生かして暮らす人間の知恵ってすごいですよね。私たちが現代で身にまとっているものの機能性も、そういう本質的な知恵の上に成り立っているんです。

ー 気づかないうちに、受け継がれていたのですね。

宮田 機能性という知恵の他にも受け継がれているものはたくさんあります。例えば、インドの遊牧民であるラバーリーという民族は、もともと文字を持たない民族のようで、歌や踊り、刺繍に意味を持たせ、代々受け継がれています。何かを伝える手段として、日常の営みにさまざまな意味を持たせていたのだと思います。その刺繍も、家族のために作られていたものなのに、驚くほど丁寧に作られていて、なんて愛に溢れているんだろう思いました。婚礼の衣装として使われることもあるようでしたので、より見栄えよく作ろうという思いがその丁寧さに現れたのかもしれませんが、それもまた人間らしくて面白いですよね。

ラバーリーの民族衣装

点と点が線になる瞬間

宮田 最初にお話したトルクメニスタンの例もそうですが、昔の人々は、自分たちが持つ技術や知恵を分かち合っていたんだと思います。それによって、違うことを尊重しあい、お互いを認めあっていたのでしょう。100年ほど前の資料を見ても、その様子が確かに残っているんです。そんな歴史やその地に根付く技術繋いでいくように、点と点を線にしていくものづくりこそが「quitan」としての私の仕事だと思っています。

ー 点と点を繋ぐといいますと。

宮田 例えば、インドで織ってもらった生地を使って、日本で縫ってもらうことで、異なる背景が共存する面白いものができると思っています。これは日本国内でも同じで、地域が変わるだけで織りが全く異なるんです。それは技術ではなく、その土地やそこに住んでいる人々の文化がそうさせているのだと思います。それらを無理やり繋ぐのではなく、受け継がれてきた技術や技法を大切にしながら、時代に合わせて共に生きてゆくことができるようなものづくりをしていきたいです。

ー ありがとうございます。次回はいよいよ「quitan」のデビューとなる2021年春夏シーズンの展示会にお伺いします。

宮田 伝統や生地と同じくらい大切にしている「色」についてお話させてください。

quitanを示す7つのルール】

1. As universal as possible - 可能な限りユニバーサルであること

2. As ecological as possible - 可能な限り環境に、地球に、配慮されていること

3. There is always "something" inspired by tradition - 伝統から学ぶ「何か」があること

4. Well-placed production - 適材適所であること

5. Only the fabrics that I loved are chosen/woven - 私の愛した素材だけが使われている/作られていること

6. There is always "a color" for the season - 迎える季節には、いつも大切にしている一つの「色」がある

7. Supporting developments sustainably - 持続可能な支援を

次回は、「quitan」のデビューコレクションとカラーについてご紹介します。

quitan2021年春夏シーズンの商品は来年1月頃より順次展開予定です。

  • 宮田・ヴィクトリア・紗枝

    アメリカ・シアトル生まれ。quitanデザイナー。幼少の頃より多国籍な環境で遊牧民のように転々と暮らしの場を変えつつのびのびと育つ。大学を卒業後はファッションの現場でものづくりの経験を積み、2020年にアングローバル入社。2021年春夏よりユニセックスブランドquitanを展開する。