#STORY#QUITAN

はじめまして、quitanです。

デビューコレクションを創る「色」

VOLUME.3

この夏、アングローバルに新しい家族が生まれます。その名は「quitan(キタン)」。
本連載ではそのデビューまでの道のりの様子をお届けしています。
今回は「quitan」初の展示会を訪ね、2021年春シーズンのコレクションについて、「色」を中心にお話を伺いました。

Interview by Juli Yashima
Photography by Hiroyuki Matsubara

「海で見つかる青」を求めて

― これまでは宮田さんが大切にしていることや、世界中の生活様式など「quitan」の世界観を教えていただきました。今回は「quitan」のデビューコレクションについてお話を聞かせてください。

宮田 はい。2021年春夏のコレクションのテーマは「青」です。なかでも、「海で見つかる色」というルールを設けて一貫性を作れたらいいなと思いました。

例えばネイビーは、深海の深いところの青をイメージしたり、海辺の砂が混じったゆらぎのあるインディゴのような青にしてみたり。空が映り込んだ水面、地底の植物の色についてもイメージを膨らませました。

― 「quitan」を示す7つのルールの中にも、季節ごとに大切にしている色の項目があります()。「quitan」にとって「色」の役割とはどのようなものなのでしょうか?

宮田 「quitan」では、世界中の生活様式と衣服をイメージソースにすることが多いです。アジアの服もあれば、ヨーロッパのミリタリーもありますし、アメカジのようなヴィンテージも好きなんです。そこには「古くからあるもの」という共通項があるんですが、それぞれ異なった独自のルーツがあるので、ひとつ「色」という視点があると、すべてを繋いでいくことができるように思うんです。

※「6. There is always "a color" for the season - 迎える季節には、いつも大切にしている一つの「色」がある」【 quitanを示す7つのルール】より

実用的なデザインへの敬意

― 世界中の生活様式から得たヒントは、今回どのような形になったのでしょうか。

宮田 たとえばこのワンピースはアジアの衣服によく見られる伝統的な服のかたちをベースにして作りました。アジアではこういう四角い形に対して、肩に傾斜をほとんど付けず直角に袖がついていて、そこに足りないパーツを補っていく作り方をします。

 袖がほぼ直角につき、脇部分には足りないパーツを補うように布がたされている。

宮田 服は、裁断するときにカーブを作れば作るほど不要な部分が出てしまうのですが、四角い生地に対して四角く切り取っていくこの形は無駄がないんです。少しの生地も無駄にしないという意味で、生活のために作っていた服ならではですよね。袖の付け根部分を見るとその作り方がわかるようになっています。

宮田 これはアメリカの海兵隊のチノトラウザーズをベースに、タイパンツにアレンジしたものです。この縫製もそのルーツであるミリタリーウェアなどに用いられる丈夫な縫い方をしています。とても細かな部分ではあるのですが、最終的に匂いといいますか、空気感で表れてくるものだと思うんです。生地や色を代えてしまっても、本来の作り方や縫い方など、オリジナルが持つ雰囲気は敬意として大切にしたいと思っています。

人の手が入る温かみと、つくり手への優しさ

― 今回のコレクションで特徴的な生地はありますか?

宮田 インドで作られる「手紡ぎ手織り」のカディは使いたかった生地の1つです。

インドの手紡ぎ手織りで作られた「カディ」(生地)

この服は綿シルクで作りましたが、光沢とモチっとした風合いはとても美しく、シンプルでありながら人の手の温かみを感じられます。手織りなのでいっぺんにたくさん作ることはできないのですが、少しずつでも続けていきたい生地です。それから、ストールも手紡ぎ手織りで、インドの西ベンガル地域で織られた「ジャムダニ」という織物です。手で織っていくので必要なところだけに柄を手で糸を足していく作り方をします。

生地の端(ミミ)の部分にある模様

― とても柔らかく優しい手触りですね。

宮田 人の手が入ると、あたたかみが増しますよね。手で織っていくというとはコンピュータでルールを設けているわけではないので、柄が入る場所も画一的ではなく、1つ1つ調整ができるんです。

このストールの生地も、おそらく裁断が入ってしまうだろうという部分には柄を入れずに、反対側はそのまま使われることを想定し柄を入れてもらいました。生地全体に入れたくなるほどかわいい柄なのですが、手織りで作るということは柄が増えるほど大変なので、本当に必要なところにだけにしようと、思い切って減らしました。

― 「quitan」が大切にするものづくりの思いが表れていますね。

宮田 こういうことはつくり手に対しても優しいんです。ある程度の量を生産しなければいけない中でも、そんな考え方をきちんと実践していきたと思っています。

自由に、長く、楽しんでもらいたい

― 最後に「quitan」の服は、どんなふうに楽しんでもらいたいでしょうか。

宮田 手にとってくださった方に委ねたいと思っています。私の好きな世界観や、好きなものを目一杯詰め込んだブランドではありますが、ユニバーサルであることを大切にしています。なので、これと合わせてほしくないという思いはなく、1点1点を好きに選んで、好きに着てほしいです。手にとってくださったアイテムには、ある民族のルーツが入っていたり、できるだけ長く着ていただける工夫やエコサイクルを取り入れたものがあったり、世界の生活様式や文化への敬意を込めています。そんなブランドであることを知って、好きなように着ていただいた先で、皆さんの生活に馴染んでいってくれたら嬉しいですね。

そうしてみなさんが着てくださることで初めて、伝えたいことが浸透していくと思います。

2021春夏「quitan」展示会場。青をテーマにした写真や小物が飾られている。

quitanを示す7つのルール】

1. As universal as possible - 可能な限りユニバーサルであること

2. As ecological as possible - 可能な限り環境に、地球に、配慮されていること

3. There is always "something" inspired by tradition - 伝統から学ぶ「何か」があること

4. Well-placed production - 適材適所であること

5. Only the fabrics that I loved are chosen/woven - 私の愛した素材だけが使われている/作られていること

6. There is always "a color" for the season - 迎える季節には、いつも大切にしている一つの「色」がある

7. Supporting developments sustainably - 持続可能な支援を

次回は、「quitan」のものづくりを支えるつくり手やそれらが生まれる場所についてご紹介します。

※インタビュー中、宮田さんが着用しているマスクquitan来年の本格的なデビュー前にもかかわらず、この自粛生活中に「自分にできることはないか」と思案してサンプルと同じ素材を工夫して制作されたものです。

  • 宮田・ヴィクトリア・紗枝

    アメリカ・シアトル生まれ。quitanデザイナー。幼少の頃より多国籍な環境で遊牧民のように転々と暮らしの場を変えつつのびのびと育つ。大学を卒業後はファッションの現場でものづくりの経験を積み、2020年にアングローバル入社。2021年春夏よりユニセックスブランド「quitan」を展開する。