私に流れるバックグラウンドミュージックたち
#MUSIC#STYLE

音楽にはじまり。

私に流れるバックグラウンドミュージックたち

VOLUME.12

「あなたの好きな音楽を教えてください。」
詳しい人も、またそれが人並みな関心だったとしても、
ふと思い起こせば、音楽は人生のさまざまなことと結びついているものだと思います。
音楽と失恋、音楽と洋服、音楽と―。
第12回は、MARGARET HOWELL あべのハルカス店で店長を務める増田季莉子さん。
学生時代のある日を境に「聴く」音楽から「流す」音楽に意識が変わった出来事と、
映画におけるバックグランドミュージックの魔法についてのお話です。

Illustration by Yui Horiuchi
Interview by Soya Oikawa (ANGLOBAL)
Edit by Runa Anzai (kontakt)

そのころまで私にとって音楽は好きなバンドのアルバムや曲を見つけて、それを意識して聴くものだと思っていたのですが、その後、そんな音楽の聴き方が大きく変わるきっかけがやってきます。

趣味で自宅に防音室を作ってしまうほど音楽が大好きな父の影響もあって、いろんな楽器と音が身近にある環境で育ちました。高校では軽音楽部だったこともあり、父の部屋に雑多に積み上げられていたCDを漁りながら、一緒にMTVを見たり、UKロックの話をしたりしていたのを覚えています。

大学生になって写真部に入部したばかりの頃、音楽の聴き方が大きく変わる出来事がありました。部室ではいつも音楽が流れていて、その心地よさに授業をさぼってしまったこともしばしばありました(笑)。そんなある日、いつものように部室に行ったら先輩が「Little Joy」というアメリカのオルタナティブロックバンドのアルバムを流していて、「なんだこの部室以上の素敵な空間は・・・!」と衝撃が走りすぐにCDを買いに行ったことがありました。あの瞬間はじめて“気の抜けるような音楽”がいいと感じたんです。ギターとドラムよるトロピカルで少し懐かしさのあるメロディとブラジル人シンガー・ロドリゴ・アラマンテの少しかすれた深みのある歌声。その心地の良い音楽を聴いた日から、私の意識はガラリと変わり、それまで「聴く」ためだけだった音楽が、BGMとして「流す」楽しさに目覚めたのでした。

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https://youtu.be/dGHbOZBSv18

私にとってのBGMは、読書や食事、仕事をしているときなど、暮らしのいたるところにあるもの。一方で映画に流れるBGM、いわゆるサウンドトラックも大好きです。特に印象的だったのがグザヴィエ・ドラン監督の『Mommy』という作品。母と子の関係性を描いた物語の最も重要なシーンでイギリスのロックバンドOasisの『Wonderwall』が掛かり、その歌詞が字幕で流れたのです。ミュージカル映画でもないのに、歌詞が字幕として流れるのって珍しいなと思いました。もともと大好きで何度も繰り返し聴いてきた曲だったのですが、元の曲の世界観を壊さずに新しい印象を与えてくれたこの演出がとても好きになりました。

https://youtu.be/OLc9vRvchio

グザヴィエ・ドラン監督の映画は、音楽が流れるときに映像がスローモーションになることがよくあり、物語の展開と曲調が合わさって、まるで独立したひとつの音楽作品のようについ見入ってしまいます。きっと音楽には気持ちや記憶を閉じ込めておける魔法のような効果があって、それが物語の中にBGMとして流れてくると自分の中の遠い記憶をどこからか引っ張ってきてくれるような気がするんです。イヤホンで音楽を聴きながら散歩するのが好きなのも、なんだか映画の世界の中にいるような感覚に浸れるからなのかもしれません。

私にとってBGMは、自分がいる空間と気分をデザインしてくれるものです。ちょっと気が向かないことでも音楽次第でやる気が出てきたり、ひとりでいる退屈な時間も有意義に感じたり、また友達と一緒に過ごす時間も音楽があるだけ会話が弾んだり。ふと流れるだけでたちまち自分好みの空間にデザインしてくれるバックグラウンドミュージック。私を取り巻く空間に、これからも欠かすことのできない大切な存在です。

  
  • 増田季莉子

    2013年入社。MARGARET HOWELLあべのハルカス店店長。眼鏡コレクションは10本以上。顔に馴染みすぎていて、眼鏡をかけている印象を持たれないこともしばしば。最近はインテリアのことで頭がいっぱいで暇さえあればヴィンテージ家具や古道具をネットで探したり、休日は夫と植物屋さんを回る日々を過ごす。中華料理が大好きで週に一回はマイ中華鍋を振るう。